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《「外国語」授業動画配信 PROJECT 》学校現場での活用レポート  ~ 安城市立安城西中学校 第2学年 ~

その1: いよいよ学校再開!
授業実践プロジェクトの概要説明

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◆【はじめに】

この4月から「英語情報web」で進めている「『外国語』授業動画配信プロジェクト」では、小学校の学習内容は文部科学省作成教材の『We Can! 1, 2』および『Let’s Try! 1, 2』、また中学校は同様に新学習指導要領対応教材『 Bridge』を用いてまとめています。
当初はスタッフも遠隔勤務の中での企画・運営でしたので、1つ1つの教材に合わせた授業動画をアップすることで精一杯でした。しかし次第に学校現場の先生方から、特に小学校用動画について「どの動画を、どのように視聴していけばよいのか」というお問合せをいただくようになりました。

そこで改めてこの5月中旬に、これまで作成した動画をもとに、教科となった小学校「外国語」の学びを充実させるため、「どのような英語力を育成するのか」を明確にカリキュラムとしてまとめ、学年別(小学5年、小学6年、中学1年)に整理しました。どの動画をどの順番で視聴して学べば、目指す力が身に付くのかが明確になったことにより、自宅での「外国語」学習として取り組みやすくなっています。
また授業動画による学びのカリキュラム化にともない、

   ● 学びの成果を確認する「復習ワークシート」
   ● 学びの記録「ポートフォリオ」
   ● 学校再開に向けて学んだことをフル活用して取り組む課題「Back-to-
      School チャレンジ!」


などの関連ワークシートを作成して、次のように「評価パッケージ」としてまとめました。

以下は、この「授業実践プロジェクト」で参考にした
中学生用のカリキュラムです。

◆【これからの学校の「外国語」教育のあり方とは】

「ことば」を学ぶことは、生涯に渡り続くもののひとつです。
「英語力」という用語が、あらゆる能力要素を包括的に表すものであるように、「英語力がついた」、「英語の能力が高まった」ということを適切に測定し、評価するのは難しいものです。
ただ「英語の力」が高まれば、「英語を使ってできること」が広がります。「英語で挨拶ができる」、「英語で好きなものが言える」、「英語で苦手なものが言える」、「英語で何が欲しいかを尋ねることができる」など、小さな「できること」が少しずつ増えていくのです。
「英語でできること」を1つずつ増やし、積み重ね、それらを組み合わせて複雑な課題に対応できるようになることを目指す。これが新しい学習指導要領で示された「外国語」教育の方向性です。

この新たな外国語教育において、指導者は以下①~④の流れを意識することが大切です。

学習到達目標を児童生徒と指導者が共有する。児童生徒は目指す自分の
 姿をイメージし、指導者はその目標が到達できるように様々な点を考慮し
 ながら指導と評価の計画を立てる。

② 授業では、児童生徒が個に応じた支援を受けられるようにする。

③ 各授業後には、学習到達目標に照らし合わせた振り返りを行う。振り返
 りにおいて児童生徒が、「どこまで自分の力でできるのか」、「友だちや
 先生の力を借りればできるのか」、「それでもまだ難しいのか」など、自
 分の到達状況を客観的に判断できるように促す。さらに、その後の学習に
 おいてどのような取組を行うかという学習調整を行うことができるよう
 に、学び方の工夫を伝えるなどの支援を行う。

5領域それぞれの特性を踏まえた測定と評価が行われるように工夫し、
 パフォーマンス評価なども適切に取り入れる。「評価と指導の一体化」に
 繋がるよう、得られた情報からその後の授業の見直しなどを行う。

「英語情報Web」の小学校「外国語」授業動画のカリキュラムと関連ワークシートは、児童生徒が休校中に自宅学習として取り組むだけでなく、学校再開後に今後の外国語教育に向けた授業改善の取組のために、先生方にご活用いただきたいという願いを込めたものでもあります。

「パッケージ」の構成については、以下リンク先からファイルをダウンロードしてご覧いただけます。

小学生向けの授業動画は、休校期間中の「外国語」の学習内容を想定してまとめられました。それゆえ、今年度の中学1年生には、小学校での英語学習の復習として活用いただくことができます。また「Back to School チャレンジ!」のテーマを「自己紹介」にしていることから、年度はじめの授業開きとして、どの学年でも取り入れていただけるようになっています。

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◆【「授業実践プロジェクト」について】

これからシリーズ記事としてお届けする「授業実践プロジェクト」は、上でご紹介した「『外国語』授業動画配信プロジェクト」「評価パッケージ」を、実際に学校再開後の授業で取り入れていただいたものです。

具体的には、昨年度「中学校での英語の学び」を体験した2020年度 中学2年生を対象に、

(1) 授業動画、復習ワークシート、ポートフォリオを用いた小学校から中学校
  1年生までの英語の学びの復習と振り返り

(2) Back-to-School チャレンジ!を活用した「自己紹介」パフォーマンス課題
     への取組


という2つの目的で、授業を行っていただきました。

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【活用実践にご協力いただく中学校と先生のご紹介】

安城市立安城西中学校では、この臨時休業が始まってすぐに、英語科の先生方の中から「何か生徒たちと繋がる取組をしたい!」という声が上がったそうです。実際に英語科の先生方が学習用動画を作成して YouTube で生徒に公開したり、休校中に生徒とつながるLMS(Learning Management System)導入を校長先生はじめ管理職の先生方のご理解のもとで実現したり、「学びを止めない」ために動かれた学校のひとつです。

その中心となったのが、今回の実践プロジェクトを取りまとめてくださった久保田 香直(こしき)先生。文部科学省の中央リーダー研修1年目に参加され、小学校での英語指導経験もあり、小中接続や今後の中学校の英語教育を日々模索されている先生です。小学校での英語教育の特徴、すなわち「毎回の授業で、めあてを達成できるように授業を組み立て、見取りを行う」ことの大切さを理解されていることから、本パッケージを用いた中学校2年生の英語の授業開きを計画してくださいました。

このプロジェクト実施にあたり、学校長の 松永 博司 先生と、久保田 香直 先生より、「日々の学び」「英語教育」に対する思いについてお話をいただきました。

【安城西中学校  松永 博司 校長のお話】

4月以降も臨時休校が決定した際、本校教員の危機感は高まりました。生徒に会うこともできず、メッセージやHPの情報発信も一方通行です。まずは市導入のeライブラリ(LINES株式会社)を活用した学習を推奨しましたが、突然の休校で説明も十分でなく復習に特化してしまい、家庭学習の中核をなすには至りません。「こんな状況下でも生徒の学びを止めないために、私たちができることはないのか」という教員の思いを形にしようと、次に英語部有志が教材を作成し、YouTubeで限定公開しました。他教科もそれに追随し、多くの生徒が視聴しました。しかし、今度は生徒からのレスポンスがないことが課題となりました。感想はあるものの、習得状況は不明です。

そこで全校導入したのは Google Classroom です。教材動画が提示でき、課題を提出できます。教員は個々の課題を添削し、コメントします。生徒と1対1となり成長の状況を把握できることが LMS のよさでもあります。「Back-to-School チャレンジ!」の課題も教材として取り込むことで、教員も無理なく課題提供ができます。今後は第2波に備え、Google Meet やZoom を用いた遠隔授業の可能性を探ります。これら4種類のツールの特性を生かして活用することが、GIGA スクール構想展開を前にした本校のシステム構築の骨格になると考えます。ただし、課題も多くあります。LMS を活用してこそ学ぶ価値のある内容とは何なのか、今までの授業の役割はどうあるべきかなど、それぞれの役割を明確にしてどんな学習を展開すべきか考える必要があります。

私は、家庭学習と学校での学習をつなげるものが LMS だと考えます。双方の学びの連続性を大切にした学習構想があって、初めて生徒は多様なツールや教育場面を用いて諸力を養い、予測困難な時代に、一人一人が未来の創り手となるための資質・能力をより確実に手に入れることができます。外国語がそのような形で生徒に更なる力を与えるとともに、他者と渡り合えるコミュニケーション力を多様な学習形態の中で得られれば、どんなに素敵なことでしょうか。

学校だけでなく、「外国語」授業動画配信プロジェクトを始めとする多くの団体・関係機関が、LMS の活用を通じて共通の思いや願いをもち、2030年の教育を見据えていくことが、生徒の可能性を伸ばしていく推進力になると思います。

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 【写真上: 松永 博司 校長 と 久保田 香直 先生】    

【英語科  久保田 香直 先生のお話】

「Back-to-School チャレンジ!」の課題を見たときに、約3か月の休校後に扱う内容として生徒たちに無理がなく、かつ英語で表現する感覚を取り戻してもらうために、ちょうどよいテーマだと思いました。学校が再開したとはいうものの、4月は1日登校しただけだったので、長い休校後に新学期がスタートしたというのが実態です。本校の2年生は7クラスあり、学級には初めて出会う新しい仲間がたくさんいます。相手のことをまだよく知らないという状況、そして、長い間、英語を使うことから遠のいていた生徒が多くいることを考えると、このプロジェクトに取り組むことで、ゆるやかな、しかし確実なステップで、英語で表現する感覚を取り戻しつつ、新しい仲間のことを英語を通して理解することにつながると考えました。「自己紹介」というテーマが、無理がなくてタイムリーだったのです。

私が日々の授業で大切にしていることの一つ目は〈Mistakes are welcome.〉「間違いを恐れずに伝えようとする気持ち」を育てることです。最初から上手く話したい、間違えたくないという気持ちは誰にでもあります。しかし、それがブレーキとなって、表現する力が伸びる妨げになってしまうことは避けたいと考えています。私自身、何度も間違えながら英語を身に付けてきました。今でも、ネイティブスピーカーのように話せるわけではありません。それでも、自分の英語が伝わった時はうれしいですし、コミュニケーションは楽しいと感じられます。この積み重ねを生徒も体験し、自信につなげてくれたらと思っています。生徒が間違えたときには、それに気付かせて正しい英語に導くことで英語を使う力がつき、「よりよくなろう」という気持ちをもってほしいと考えています。二つ目は、〈With your words.〉「自分の言葉で表現しようとする力」をつけることです。これは英語のみならず日本語でも大切なことです。相手が分かってくれるためには、どんな言葉を使えばよいかを考えて表現できる力をつけてほしいと思っています。話す力は話すことによって伸びていくので、様々な種類の活動を通して、自分の言葉で表現する機会を作るようにしています。

実践を通して、生徒たちに身に付けてほしいことは、「学習したことを目的に応じて組み合わせ、表現する力」です。実際に1年生の時の授業では、小学校で学習したこと一つ一つをじっくりと思い出す時間はほとんどありませんでした。しかし、今回の実践で「この英語、そういえば小学校でも習ったな。」と思い出し、「小学校の学びは今につながっている。」と感じながら、学習したことはこうやって組み合わせていくんだと体験し、ある種の「自由自在」な感覚を味わってくれたらうれしいです。

3月からの休校で、突然家庭での学習を余儀なくされた生徒たち。私たち教師は「課題リスト」を細かく作り、プリントを用意し、配付しました。そして、さらなる休校の延長。私はハッとしました。「生徒は与えられたものに取り組むだけの勉強に終わっていないだろうか。自律的に勉強に取り組むことは、できているだろうか。」と考えました。

言い換えれば、生徒が自ら学びを続けられる力を教師がきちんと指導してきたか、学習への向き合い方をしっかりと伝えられていたか、ということを考えさせられました。自律性を伸ばす、そのためにどのようなしかけや支援をしていくとよいかを研究し、日々の学習指導を行っていきたいと思っています。そして、(再び状況の変化が起こったとしても、)自分の学びを止めずに進んでいける生徒を育てていきたいと思います。

◆【実践スケジュール】

6月1日の授業再開から、以下のように6回の授業を使ってプロジェクが進行しました。

《6回の授業を通して
「自己紹介」の発表につなぐ指導計画》

●1回目の授業:新しいクラスの仲間に自分のことをよくわかってもらう「自己紹介チャレンジ」を行うことを告げる。これまで学習したことが使えるように、映像やワークシートを使いながら練習していくことを伝える。
Small Talkで復習ワークシートの②③に取り組み、My English Portfolioで振り返る。次回のSmall Talkにつながる予告動画を見る。Google Classroom (LMS)でも同じ動画を配信する。

●2回目の授業:Small Talkで復習ワークシートの④⑤に取り組み、My English Portfolioで振り返る。次回のSmall Talkにつながる予告動画を見る。Google Classroom(LMS)でも同じ動画を配信する。

●3回目の授業:Small Talkで復習ワークシートの⑥に取り組み、My English Portfolioで振り返る。次回のSmall Talkにつながる予告動画を見る。Google Classroom(LMS)でも同じ動画を配信する。

●4回目の授業:Small Talkで復習ワークシートの⑧に取り組み、My English Portfolioで振り返る。次回のSmall Talkにつながる予告動画を見る。Google Classroom(LMS)でも同じ動画を配信する。

●5回目の授業:Small Talkで復習ワークシートの⑩に取り組み、My English Portfolioで振り返る。次回は自己紹介の発表を行うことを伝える。

●6回目の授業:自己紹介の発表。振り返りをする。

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シリーズ記事では「その2」以降、実践の取組と生徒による「自己紹介」のパフォーマンスについて、ご報告していきます。
取組を通して指導者が感じたこと、学びに対する考え方などを、実際の生徒の振り返りなどを詳細にお伝えしていきます。お楽しみに!

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公益財団法人日本英語検定協会発行の英語科教員向け情報誌『英語情報』がWebでも読めるようになりました。英語教育の“今”を知る。明日からの授業が変わる。先生方の授業づくりに役立つ情報を発信していきます。 https://eigojoho.eiken.or.jp

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