コーチングの基本とは?

中学校や高校の部活動で指導する上で、一生懸命練習しているのになかなかチームの実力が上がらない、どうしたものか?と悩んでいる指導者の方が少なくないのでは?と思います。



そんな悩みを持っておられる指導者の方々に向けて、今日は「コーチング」をうまく扱えば、部員のさらなる実力アップにつながりますよ。という話を書きたいと思います。


コーチングは、部活指導にだけでなく、会社における人材育成においても、活用できます。様々な方々に少しでも参考になってもらえれば、幸いです。


コーチングについて詳しくは、現在千葉ロッテマリーンズの投手コーチを務めておられる(2021年2月現在)吉井理人さんの『最高のコーチは、教えない。』という本にとてもわかりやすく書いてあります。コーチングに興味がある方は、この本、かなりオススメです。特に野球部の指導にあたっている方々は必見の本です。


今日はこの本の内容に触れながら、コーチングの基本について書いていきます。


最高のコーチは、教えない。 https://www.amazon.co.jp/dp/4799323857/ref=cm_sw_r_cp_api_i_D1ZK6MM6D1GNRGHKM24B


コーチングの基本とは…



コーチングとは、対象の相手の目標を自ら達成することをサポートし、目標達成に導くことです。


その際に大切になってくるのは、自分で考え、自分で工夫する能力を育てることです。その能力が育てば、成長速度が格段に上がります。指導者がいるいないに関わらず、部員自ら成長のチャンスをつかみ、成長していけるようになります。


コーチングの大前提として、「教えすぎない」があります。教えすぎると、外発的なアプローチがないと、部員が動けなくなります。つまり、指示がないと動けない指示待ち人間になってしまいます。


では「教えすぎない」を大切にした上で、コーチングの基本についてです。


コーチングの基本は、3つあります。


①観察 ②質問 ③代行


です。


はじめにすることが「観察」です。
これはほとんどの指導者がやっていると思います。


次に「質問」です。
指導者から選手に「何をやりたいか」「どう思っているか」などを聞きます。


最後に、その選手の立場に立って「代行」します。
指導する選手にはどのような方法が合うか、どう伝えればいいか、その選手になりきって考えるということです。


この3つの段階を経たうえで、具体的なアプローチを選手とともに考えていき、実行していきます。


その3つの段階について、詳しく説明します。

① 観察


部員がどういう課題を持っているのか、どういう長所を持っているか、どういう性格なのか、その部員についての情報を知るために観察します。


とても頑張っているのに、結果が出ない。そんな部員がいたりしますよね。これこそが「練習の質」という意味での観察のポイントになります。


例えば、もしかしたら、練習の強度が高すぎるケースがあるかもしれません。強度を落としたからといって、サボっていることにはなりません。選手のレベルに合った強度は、まず観察によって見つける。 


そういう問題も観察で見極め、指導者が対策を打つことで、部員の成長を促すことができます。


観察によってさまざまなタイプを把握します。傾向と対策を立て、観察をすると、人にはさまざまなタイプがあることに気づきます。


一生懸命やっていないのに、言い訳するタイプ。

自分がやるべきことをやっていないのに、うまくいかなかったことを他人のせいにするタイプ。

うまくいかないことに腹を立てて、物に当たるタイプ。

他人の目を気にしすぎるタイプ。

やんちゃでわがままだが、懸命に努力するタイプ。


などなど…観察すると色々なタイプが見えてきます。


観察し、メモとして残しておく。その情報を総合し、次の質問につなげていきます。

② 質問


部員が自分の状況を自己分析したり、自分の課題の解決方法を発見させるための質問をします。


質問の大きな狙いは、「自己客観視」です。


「自己客観視」は大切です。自分を客観視できれば、自分の良いところと悪いところがしっかり見えます。自分の状態を把握できれば、自分の成長のためにするべき行動が見えやすくなります。そして、実践に移せばパフォーマンスが向上していきます。


質問をすることで、部員自身のスキルや動きを言葉にできるようにしていきます。自分の言葉で説明できるということは、自分の動きをよく理解してしているということです。


逆に言えば、自分のプレーを言葉で表現できるようにならないと、そのパフォーマンスが身についたことにはなりません。


言葉で説明する=言語化と言いますが、自分のパフォーマンスを正確に言語化できているということは、自分の状態を正確に把握できるということです。


自分のパフォーマンスを言葉で説明させるには、指導者は余計なことを言わないように気をつけなければなりません。基本的には、質問以外は黙って、選手の話す言葉に耳を傾けます。余計な口を挟みません。ただ部員の知識不足で言葉にできない場合は、少しだけヒントを与え、回答を促します。


通常、質問は疑問形で相手に言葉を投げかけるイメージがあると思います。もちろん、そのスタイルが質問の大半を占めます。ただ、そればかりではなく「うなずき」「相づち」も含めて質問と捉えます。


質問の例です。吉井理人さんの『最高のコーチは、教えない。』には以下のように載っていました。参考にしてみてください。


「今日のピッチングは、自己採点で何点だった?」
「今日のピッチングで、良かった点はどこ?」
「逆に今日のピッチングで悪かったところはどこ?」
「今日のピッチングで、失敗したところはどこ?」
「失敗したシーンで、もしその場面に戻れるとしたら、どういうことをしたい?」
「それをするために、何か準備をしておいたほうが良かったと思うことはある?」
「それらを踏まえて、次の登板に向けて何をしようと思う?」

③ 代行


代行は「代わりに行う」ことで、コーチが選手になったつもりで考えるという意味です。指導する部員に、どのように言えば伝わるのか。それを考えるのが、「代行」です。


よく指導者がやりがちな「自分だったらこうする」と考えるのではなく、視点を変えて「その選手だったらどうするか」と考えていくことが大切です。相手の視点に立った感覚を持ち、自分の言葉がどう受け止められているかを考える必要があります。


部員1人1人、身長は違います。体重も違います。手足の長さも違います。もちろん、体の使い方の感覚も違います。


部員をコーチングする上で、「代行」を丁寧に行えば、アドバイスをする際にその部員には合ったアドバイスができる可能性が高くなります。また、自分で自分の課題の修正方法を気付かせるアプローチができる可能性が上がります。代行を正確にするためにも、「観察」「質問」を積み重ね、部員の情報を整理おくことです。また、それが部員との信頼関係構築につながります。信頼関係を作ることができると部員の情報収集がしやすくなります。


代行をする際には教えすぎに気をつけましょう。本当に必要最低限のアドバイスを部員に送ることが大切です。それが自分で考え、自分で工夫する能力を育てることにつながるのです。

まとめると…


コーチングとは、部員の考える力、工夫する能力を育て、目標達成をサポートすることです。

コーチングは「教えすぎない」が大前提になります。その大前提がないと、部員の自ら考える力を奪うことにつながります。

その大前提の上で、

相手の状態を見る「①観察」 

相手のパフォーマンスを自分自身で言語化させる「②質問」

相手の視点に立った感覚を持ち、自分の言葉がどう受け止められているかを考え、アドバイスする「③代行」

の3つの基本を大切にしましょうね。というお話でした。


今日も読んでいただきありがとうございました。



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