見出し画像

(7)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~書店で購入編~

 さて、図書館通いにいったん区切りをつけたら、そろそろ「買う」本を選ぶ時期。
  子どもは好きな本を何度も読みますし、また、何度も読むことの利点はかなりあります。

 「好きな本・お気に入りの本」は安心感をくれますし、例えば半年に一度、一年に一度でも読み返した時、「これ、こういう意味だったんだ…」と突然内容の理解が深まることがあります

 我が家の次女(2年生)も、幼稚園時代からお気に入りだった絵本を最近本棚から引っ張り出して、「ねえママ、このキツネさんはこういう気持ちだったんだね…昔はわからなかったんだよ…」と子どもなりにしみじみとしていました。
 
 そういうことって大人でもあると思うのですが、毎日ものすごいスピードで成長している子どもならなおのこと。
 子ども自身が自分の成長を感じられるアイテムとして、「好きな本」は何冊でも家の本棚にあるといいなと思います。
 


〈すぐに〝的を絞った選書〟をする時間がなかったら…〉

 ちなみに我が家の場合、長女の好きなジャンル・傾向が見えてきた後、すぐに書店へ行って「これぞ!」という本を選びたかったのですが、いろいろあって時間的に難しかったため、とりあえず「つなぎの本」として、私が古書店で選んできた10冊程度の本をリビングに並べておきました。
 
 たぶん好きだろう…という勘で、おもしろい動物の研究本、人気キャラクターが教えてくれる体の図鑑、小学1~2年生が活躍する〇〇探偵団…というような雑多なラインアップではありましたが、とりあえずいろいろ選べることが大切。
 こうした「年齢相応の読みやすい本」は、〝興味の最大公約数〟であり、我が子にどんぴしゃではないかもしれませんが、既にそれなりの本好きであれば「あ!まだ読んでない本があった…」というワクワクの継続には十分に貢献してくれます。
 
 あ、もちろん例の「おじさん探偵の本」はあの後買ったり借りたりして、シリーズはほとんど読み切ってしまいました。
 
 そして、そろそろ読むものがなくなってきた…と(親が)焦りを感じていたのが、小学1年生の終わり頃だったでしょうか。
  

〈「ベストワン本」をヒントに「次の本」へ〉

 さて、いよいよ本格的な選書をしよう…と、長女を連れて大型書店へ行った時の話です。
 
 この先どんな選書をするか、もともと本好きなパパ、ママならある程度見当がつくかもしれないのですが、ここでは「自分はあまり本を読まないので…」という方に向けて、ちょっと丁寧に「我が家はこうでした」というお話をしたいと思います。
  
 ヒントはやっぱり図書館時代のベストワン本。子どもの好みが大幅に変わっていない限り、これを足掛かりにするのがいいでしょう。
 
 我が家の場合、長女の興味をそそるテーマは「謎解き」ですから、謎解きをメインストーリーにした本の中から、おじさん探偵シリーズ=ベストワン本より「もう少し文章が多くて、内容の濃いもの」を選ぼうと考えました。
 
 ポイントは、「急に字が多くなった!」と子どもが気づかない程度にステップアップしている本を選ぶこと。まだまだ絵が多くても大丈夫です。
 
 気づかれないように…ばれないように…となんだか子どもに対してコソコソしているようですが(笑)、「レベルアップしてもらおう」という親の意気込みが伝わると大抵子どもは嫌がりますから、この思惑は伝わらないほうがいいのです…。
 
 ちなみにレベルアップとは、あくまで「読書の筋力」を鍛えるために必要だからするものであり、賢くさせる…という意味ではありません。念のため。

〈我が家のテーマ「謎解き」は出版界でも一大ジャンル!〉

  さて、長女が興味を持った子ども向けの謎解きや探偵シリーズは、児童書の中でも一大ジャンル。
 
 大型書店の本棚には、「○○子ども探偵」「○○さんの謎解きファイル」のような本が数多くあります。
 本好きな私でも…めまいがするほどです。
 子どもの頃より増えている気がします。こんなにたくさんあるんだ…。
 
 有名どころでは「おしり探偵」がありますよね。これも絵本のほかにノベライズ(小説)が出ていて、文字を読んでいるだけでもすぐ映像が浮かぶと思うので、好きな子にはお勧めです。
 
 本格的なものなら、世界的に有名なシャーロックホームズや名探偵ポワロものも児童書として出版されていますが、外国人の名前や時代背景に馴染めないことも考えられるので、まずはハードルを上げないよう比較的最近出版された、小学生が主人公の国内作品から選ぶことにしました。
 
 ですが、この時にまた「主人公の特長や、謎解きのテーマ」で悩みます。
 歴史、科学、暗号、動物、心霊・・・と子ども向けのミステリーに絞っても、膨大も膨大。
 
 「これはどう?」「こんなの好きじゃない?」と長女と相談しながら、かなり粘ったのですが、実はこの時は「これ!」というものが見つからず(というより選べず)、結局クイズか、占いか、間違い探しか…何かそのような無難な本を一冊買って帰ってきました。
 
 

〈結局、最初はインターネットで検索することに…〉


 一度頭を冷やした私は結局その後、インターネットで検索して口コミを読んだりしながら、「子どもが夢中で読みました!」といった高評価が多かったひとつの探偵シリーズを選びました。
 
 それは、小学生の天才少年が、不可思議な事件・現象を科学力で推理して解決するというシリーズなのですが、一冊お試しで購入し、「これどうかな?」と提案すると長女には好評で、結局一気に読み終わりました。
  …喜んでくれて、良かった!
 
 一緒に選ぶのがベストではありましたが、この場合は子どもが気に入ってくれたのでよしとします。

 また、このシリーズはベストワンの「おじさん探偵」より二段階くらいステップアップした内容だったのですが、1年の間にいろんな本を読んでいたので、長女は違和感なく受け入れられたようでした。
  
 それでも、この後はできる限り子ども本人と「書店で本選び」を繰り返しましたし、また、とにかく何冊も刊行されている「シリーズ本」にこだわりました。

〇書店や図書館で本を選ぶこと
〇自分に合ったシリーズ本を見つけること

 この2点は「読書の筋力」を鍛えるうえで重要なので、また後程、詳しくお話しますね。
  

〈子どもと一緒に「宝探し」を楽しんで!〉

 新しい本を買う時は、子どもの興味や「これが好き!」に応じながら、パパやママが一緒に選んであげることがとても大切です。
 
 何ページかお試しで読んでみて、本の中に「心がぐいっと入っていく」条件は、子どもによって違います。
 
 主人公が「まるで自分みたい」とか、「お友達の○○君みたい」と身近に感じるのが気に入る子もいれば、反対に「自分の日常とはかけ離れた世界」だから魅力を感じる・・・という子もいます。
 
 ジャンルも多彩で、冒険ファンタジー、動物との触れ合いもの、ちょっと怖いオバケ・心霊もの、仲間の絆で困難を乗り越えるもの、憧れのお仕事もの、小学生のラブコメ・・・に至るまで多種多彩。
 
 書店の棚を眺めると…本当にすごい量です
 
 これほど大人も子どもも「活字離れ」「本を読まなくなった」と言われている現在でも、書店に行けば新刊本が選びきれないほど並んでいますし、子ども向けの本を見ても、出版業界の熱い思いを私は感じずにはいられません。
 
 大手出版社が力を入れている児童文庫も、現代の子ども達の生活や感性を研究しながら、心がワクワクする作品を出し続けているのだな…と、私は心が躍ります。
 
 それでも、それは私自身が出版業界にいたからこそ受け取れるものかもしれず、「自分自身があまり本を読まない」というパパ、ママの場合は、「本当にどんな本がうちの子どもに向いているのか…」と悩むこともあるかもしませんね。
 
 親子だけで探すのがなかなか難しければ、インターネットで口コミを調べてみたり、図書館・図書室の司書さんにもぜひ相談を。
 その際は、しつこいようですが「子どもにとっておもしろい本」がキーワードです!
 決して「ためになる本」「賢くなる本」を探さないでください。ためになった・・・はあくまで結果です。
 
 さて、一冊読んでみて「おもしろかった」と子どもが言えばぜひ続けて「次の本」を買ってあげてほしいと思います。
 
 シリーズものなら第2巻、そうでなくても同じ作者や似た系統の本・・・という感じですね。
 
 この時に気をつけていただきたいのは、「内容の濃いもの」「文字が小さく文章量の多いもの」に親の判断でどんどん進まない・・・ということ。
 
 いずれはそうなってほしいのですが、子どもが「今はこれが好き」と好みがはっきり出ていて、そういう本を楽しんでいるのなら、満足いくまで「どっぷり漬からせてあげる」ことも大切だと思います。
 
 もちろん、買うのが難しければ図書館通いを続けてもよいですし、古書店で選んでもいいと思います。
 
 さて、選書のコツと、読書の筋力の詳しいはまだまだ終わらないのですが、ここでいったん、本好き大作戦の「一定の目途」についてお話しておきます。
 
 

〈本好き大作戦の先に見据える子どもの状態〉

 
 図書館通いで「ベストワン」が見つかり、「次の本」を探している―この時、最初の図書館通いからどのくらい期間が経っているでしょうか。
 
 まだ数カ月・・・いや1年、2年・・・と家庭によって違うと思います。
 我が家では長女が年長さんの秋頃から図書館通いを始め、いろいろ試しながら1年半か2年くらい経ったころ、「読書が習慣化されている」と感じるようになりました。
 
 時間をかけて「好きな傾向・ジャンル」を探った結果、本人にとっては「常におもしろい本」が家にあるわけですから、小学2年生の終わりには、外出できない日も「本があるから大丈夫」と本人が言うようになりました。
 
 その頃コロナ禍でステイホームとなりましたが、本は切らさないようにしたので、おうち時間の大いなる助けとなりました。
(もちろん、テレビ番組やアニメもたくさん見ましたが、ゲームとインターネットにはまだ触れさせていませんでした)。
 
 子どもの読書の筋力を鍛える期間、ご家庭によっては「けっこうな手間(あるいはお金)がかかるな・・・」と感じるかもしれません。
 
 よくわかります。本は買うとなれば安いものではありませんし、図書館や書店通いを負担に感じることもあるでしょう。
 
 それでも…。
 いずれ子ども自身で図書館や書店に通うようになれば、意外とあっけなく親の手を離れていくように思います。
 
 現在、我が家の長女は小学6年生ですが、「本屋に行く?」と言うと喜びますし、気が付けば店内の本棚の前にじっと立ち尽くし、「ああ…あれも読みたい…これも読みたい…夜までここにいられる…」と目を見開いています。
 そうして一冊を選び、家に帰って集中して小説を読んでいる姿を見ると、やっぱり、やって良かったと思います。
 私ではなく、子どもにとって楽しいことが増えるって、やっぱりいいものです。
 
 もう少ししたら、一人で書店や図書館に行ってしまうと思います。「一緒に行くよ!」と言っても「いや、いい…」と言われそうです。
 
 一緒に行動できる時間って案外短いものですよね。
 
 
 

〈本好き大作戦の「終わり」はどこ?〉

 
 ところで、本好き大作戦に終わりはあるのでしょうか
 はっきり言うと「はいこれで終了」というものはなく、やろうと思えば「本の探究」は永遠に親子で続けることができます。
 
 ーが、「読書の習慣化」を感じる目安の時期はあると思います。 
 
○ベストワンを元に「次の本」「その次の本」を親子で相談しながら比較的困らずに選べるようになった
○家にいて暇な時、子どもが自分から本棚の本を取り出して読んでいる
「図書館(書店)に行こう!」というと喜ぶ
○自分から「この本が読みたい」「買ってほしい」などといってくる
○「これはどんな本?」と尋ねると自分なりに説明してくれる
○(小学生なら)図書館の本を喜んで借りてきて、返却日までに読み終わっている
 
 ・・・いかがでしょう?
 こういった様子が見られるようなら、本が好きになった(なってきた)といえるのではないかと思います。
 
 ただ、実は我が家の長女の場合、「本を勧める親としての仕事は終わった…」とはっきり思える出来事がありました。
 
 それは、とある世界的名作との出会いによってもたらされたものだったのですが…これに関してはまた後でお話します。
 
つづきます。
 
・つづきはこちら
(8)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~物語にハマる編~|涼原永美 (note.com)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?