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2021年11月の記事一覧

楽園とは何か

楽園とは何か

越尾圭 著『楽園の殺人』(二見書房、2021年)

ミステリー苦手なくせに挑んでしまった殺人タイトル(爆)でも表紙イメージと無人島に上陸するシーンの目に浮かぶような描写により、あたかも調査団の一行に自分も同行しているかのような錯覚を覚え、すんなり入っていくことができた。

「クローズドサークル」という設定も初めて知った。犯人がいるとしたらこの限られたメンバーの誰か、しかも次のターゲットは自分かもし

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海をあげる

海をあげる

上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2021年)

怒りや哀しみがあまりにも大きいとき、人は言葉を失う。それでも、ひとつひとつ言葉を絞り出し、ていねいに紡いでみたら、こういう表現になるのだろう。

軽々しく共感などといってはいけない気がする。でも、同じ女性として、命が弄ばれているこの時代に子育てに関わる者として、心を強く揺さぶられた。

沖縄の海の碧さと、米軍ヘリやジープの多さと。巨大リゾートホテル

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オオカミ神話を覆す物語

オオカミ神話を覆す物語

那須田淳 『ペーターという名のオオカミ』(小峰書店、2003年)

すごい本に出会ってしまった。随分前に出版されていたのに、今まで読まなかったのが悔やまれる。もう社会人になってしまった息子たちの若き日に、ぜひとも読んでもらいたかった。

『赤ずきんちゃん』はじめ「ピーターと狼」でも悪者のイメージが強い狼だが、これはペーター(ピーター=人間)とオオカミ(動物、自然)を本来あるべき位置に取り戻す物語だ

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読後にカレーが食べたくなる謎のミステリー

読後にカレーが食べたくなる謎のミステリー

越尾圭 著 『AIアテナの犯罪捜査』(宝島社、2021年)

冒頭から衝撃的。息つく暇もない展開に、うわぁとなって一気読みした。

人間がAIを道具として使いこなすか、それともAIに使われるかが本筋だけど、育った環境や言葉がけの大切さとか、ちょっと位いいだろうの危うさとか…いろいろと考えさせられた。

思えばミステリーは悲劇。カタルシスがなんとも心地よく、読後は不思議とカレーが食べたくなった。🍛

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