楽園とは何か
越尾圭 著『楽園の殺人』(二見書房、2021年)
ミステリー苦手なくせに挑んでしまった殺人タイトル(爆)でも表紙イメージと無人島に上陸するシーンの目に浮かぶような描写により、あたかも調査団の一行に自分も同行しているかのような錯覚を覚え、すんなり入っていくことができた。
「クローズドサークル」という設定も初めて知った。犯人がいるとしたらこの限られたメンバーの誰か、しかも次のターゲットは自分かもしれないという極限的状況下で、互いに疑心暗鬼になっていく心理描写が見事だった。
「楽園」といえば『失楽園』(渡辺淳一ではなくジョン・ミルトンの『楽園の喪失』のほう)が有名だが、神の創りたもうた楽園を人間の手で思いのままにしてよいのかというテーマにおいて、軌を一にしているのではないかと思う。
残念ながら今回も私は犯人を外してしまったけれど、ヒントには気づくことができた。だから未読の方は犯人さがしを是非! 私なら犯人を許せなくてボコボコにしてしまいそうな事件。でも秀逸なエピローグがちゃんと日常に引き戻してくれた。