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2021年7月の記事一覧

嘘と現実

嘘と現実

📖ウルフ・スタルク(菱木晃子訳、はたこうしろう絵)『うそつきの天才』(小峰書店、1996年)

スウェーデンの児童文学作家ウルフ・スルタクの自伝的ショートストーリー。訳者あとがきに「うそつきは泥棒ならぬ作家のはじまり、といったところでしょうか」と記されているように、嘘を禁じることは虚構世界の否定に繋がり息苦しい。

その一方、この世が嘘だらけなら?

📖天野祐吉・ミハラチカ『嘘ばっかし』(福音

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マーティン・ファクラー著 『日本人の愛国』(角川新書、2021年)

マーティン・ファクラー著 『日本人の愛国』(角川新書、2021年)

安倍前首相が「五輪に強く反対する」人々のことを「反日」と呼んだのは、まだ記憶に新しい。私は招致の段階から東京五輪に反対だったのだが、自分に「反日」のレッテルを貼られる日が来ようとは驚いた。福島の放射能汚染は「アンダーコントロール」といえる状態には見えないし、東北が東京に電力を供給するために犠牲になった以上、「復興五輪」は東京ではなく東北で開催するべきと思っていた。ましてや世界的なパンデミックで医療

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佐藤まどか作・佐藤真紀子絵『月にトンジル』(あかね書房、2021年)

佐藤まどか作・佐藤真紀子絵『月にトンジル』(あかね書房、2021年)

SNSに流れる表紙の画像をぼんやり眺めながら、月夜にトンジルという名の妖精が出てくるファンタジーかなと予想したのだが、これがトンだ勘違い。でもストーリー自体は少年の心の内面を描いて期待を裏切らない展開。

不思議だったのは、これだけ延々と心理描写が続きながら、最後まで惹きつけられたこと。読み進みながら、友人たちと思いっきりぶつかり合って過ごした思春期の心情がよみがえった。

人の心に裏表があると気

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