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【読書感想文】S・スマイルズ著/竹内均訳『自助論』知的生きかた文庫、三笠書房

元東大物理学教授、『ニュートン』の編集長、竹内均先生の手で訳された、18世紀のイギリスの思想家サミュエル・スマイルズの代表作『セルプヘルプ』である。夫が是非読めと私に手渡した。一言、あまりに高潔で立派すぎて、脱帽である。最初は努力を惜しむな、と、何を当たり前のことを言っているのかとあまり興味が持てなかったが、最後のほうで、人格者であることが大切であると説かれていた部分について、私はそんなに人格者になれないよ、この方は本当に立派な方だったのだなと、若いころ放埓にふけって道を誤った私には、とても身につまされる思いがした。若い頃に読んでも、この良さは素直に認められなかったであろう。それには、東西の文化の違いもあるかもしれない。中学生のころ、下村湖人の『次郎物語』に傾倒していたことを思い出したが、後者は東洋哲学的で、『セルフヘルプ』は徹頭徹尾西洋的である。キリスト教の文化の伝統を受け継いでいると言える。夫はクリスチャンなので、ドストライクだったのだろう。私はそうした文化的素地を持っていないので、若干違和感を覚えるのかもしれない。だが、明るくてまっすぐで、わかりやすい。それには、竹内均先生の訳業も大いにかかわっているだろうが、私はこの本は、これから社会人になろうとしている学生さんたちに是非お勧めしたい本であると思う。若いころ、私のように道を誤らないためにも、この本で精神修養に努められるといいと思う。

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