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「ちょっといい」をクリエイトするピアニスト 秋月舞

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

今回は、ピアニストとして活躍されている秋月舞あきづきまいさんに、ピアニストを目指したきっかけや、ご自身の演奏活動についてお伺いしました。

[プロフィール]
■氏名
 秋月 舞(あきづき まい) 
■ジャンル
 音楽(ピアニスト)
■経歴
 愛媛県松山市出身。
 2017年 大学院在籍中、ドイツ国立フライブルク音楽大学大学院に交換留学生として選抜、派遣される。バーデン・ヴュルテンベルク州より奨学金を取得。
 2018年 京都・バロックザールにて、ピアノリサイタル(公財)青山音楽財団新人助成公演を行う。
 2019年  ラジオ番組「えぇンジョイ♪MUSIC!」ゲスト。調布国際音楽祭2019オープンステージ、オンライン音楽祭2020に出演。
 2021年 JMS presents「音楽家の素敵なストーリー」、100万人のクラシックライブ新web番組ゲスト。
 2022年 スミレ楽譜出版社ゲストライターとして音楽記事執筆中。
 100万人のクラシックライブ演奏家、音楽のまち・かわさきアーティスト。現在、四国・関西・関東等各地で活動中。
 新田青雲中等教育学校卒業。京都市立芸術大学音楽学部卒業。2018年、同大学院修了。
■SNS
 ・Twitter(@AkizukiMai


現代で感じる「ちょっといい」ってなんだろう

生演奏コンサートの様子 写真提供:秋月舞

ー 秋月さんは、ご自身のことを“創作・日常との音楽共存、せわしない現代にも通ずる「ちょっといい」が叶う楽曲に尽力する演奏家”と説明されていますね。

 そうですね。演奏会以外の日常生活こそ、音楽がよりどころとなるように、クラシック音楽に馴染みの無い方や忙しい方向けに、短時間で聴き終えることができる小作品をYouTubeやSNSに投稿しています。
 私が有名な作品よりも未開拓な小作品が好きなので、その良さを広めたいという気持ちもありますし、時間に余裕がなくスマホ1つで何でもできる現代社会と小作品の組み合わせは、ピッタリだと思うんですよね。

 また演奏家は、楽譜から作曲家の想いを読み解き、楽器を通して表現する立場にありますので「日々の暮らしの中で音楽活動に活かせるものはないか」と、常に気付きやアイデアをメモするようにしています。

ー 最近は、どんなことをメモされましたか。

 毎日いろいろと書いているのでパッと出てこないんですけど、教訓めいたことをよく書いています。家の中にもメモを貼っているんですよ(笑)
 メモを貼っていると、視界に入るたびに自分の行いを意識するからか、身の回りのことが上手く回っているような気がします。

ー 秋月さんにとって、メモは大事なツールなんですね。

 大事ですね。メモをしなくても”思っている”ということは事実なんですけど、書いて自分の目に入れることによって、心にずしんとくるというか…。
 思うだけより頭にも、心にも残りますね。

有名な曲は、他の方にお任せしてもいいのでは…?

 2023年6月コンサート@練馬 写真提供:秋月舞

ー 知られざる作曲家や作品、また小作品に興味をもたれたきっかけを教えてください。

 ピアノを習い始めた頃は、”ピアノと言えば!これ”という有名な曲を弾くことに憧れていましたが、大学に入学し自分の方向性を考える中で徐々に未開拓な作品へ興味を持ち始めました。
 芸術大学の音楽学部だったので、周りは芸術家や演奏家を志す人たちばかりだったんですよね。そんな表現者たちが集う場所で、自分がすべきこと、目指すべきもの、取り組むものを見つけなければいけない。
 もちろん、自分がしたいことというのは前提としてありますが、自分の立ち位置や他人との差別化、どれが自分にとって一番良い道なのか、じっくり時間をかけて考えました。

 まず、多くの作品に取り組んだ中で「作曲家と演奏家には相性があるのでは?」と、考えました。
 当たり前ですが、ショパンやモーツァルトなどの有名な作曲家も人間なので、座高の高さ、腕や指の長さ、肩幅は作曲家によって異なりますし、その違いは少なからず作品に影響を与えています。
 なので「この作曲家の曲は、自分の身体に合わないな」ということも結構あるんです。
 そういう作曲家との相性とか、自分の生まれ持った身体のことを考えているうちに「有名な曲はその曲が得意なピアニストさんにお任せして、私はもっと違う曲を弾いてもいいのでは?」という想いが、すごい勢いで湧いてきて(笑)

 あとは、大きな作品に取り組んでいる時の充実感も好きなんですけど、小さな作品に向き合う時の一種の気軽さも好きなんですよね。
 小作品を初見で弾いた時、大きな作品と比べて曲全体の流れや雰囲気が見えやすく、より小さなエネルギーで作品と向かい合えるところとか。
 そういうところが自分に合っているというか、小作品なら自分の求めている即興のような空気や雰囲気を表現できるんじゃないかと感じて、演奏家としての方向性をそこに見出しました。

 また、大学在学中のリサイタルでプログラムを計画する時に、お客さまに楽しんでもらえる曲、飽きずに聴いてもらえる曲はなんだろうと考えると「小さな作品ってすごくいいな」と思ったんです。

ー お客さまにとっての“小作品の良さ”とは。

 小さなお子さまから大人の方まで世代を問わず、いろいろな方に気軽に聴いてほしいと思って演奏会を企画をしているので、子どもさんの集中力が切れないように、いかに短時間で聴かせて、楽しませて、終わらせるかというところに重点を置いてプログラムを組んでいます。
 その点小作品は、短時間で曲想の違う曲を何曲も演奏できたり、曲と曲の間にトークを入れられるので、比較的自由にプログラムを組むことができるんですよね。そういう自由度の高さを活かして、最後まで飽きずに楽しめる演奏会をご提供できるところに、新しい可能性を感じますし魅力だと思っています。

ー さきほどの“即興”というキーワードなど、秋月さん演奏スタイルにはジャズの要素が含まれているのかなと感じるのですが、学ばれたのはクラシックですよね。

 クラシックを学んだんですけど、ジャズとクラシックが融合した作品が好きで、プログラムによく取り入れています。
 特に『ラプソディ・イン・ブルー』や『アイ・ガット・リズム』などを作曲したガーシュウィンのピアノ曲は「全制覇しよう!」と意気込んでいるので、高頻度で登場しますね(笑)

「人の心に響く演奏ってすごい!」

6歳 終演後 写真提供:秋月舞

ー 小さな頃からピアノに興味をもたれていたのですか。

 母が幼稚園の先生をしていたので、家にアップライトピアノがあったんですけど、ほとんど弾かれないまま置かれていました。でも、私はそのピアノのことが気になってしまって(笑) 鳴らしてみたら楽しくて、反対を押し切って5歳から習わせてもらいました。
 その頃は「ピアノが弾きたい!」という気持ちだけで楽しく習っていたので、演奏家になろうとは思っていなかったんですけどね。

ー ピアニストを意識され始めたのは、いつごろからですか。

 幼いころに行った演奏会で、ピアニストの素晴らしい演奏に胸を打たれ、「私も人の心に響く演奏がしたい!」と思ったことが、ピアニストを意識したきっかけではあるんですが、将来の夢として意識しはじめたのは、もっと後になってからです。
 はっきりとした時期は思い出せないんですが、小学校の卒業式の時に「大きくなったらピアニストになります!」と将来の夢を叫んだ記憶があるので、高学年ぐらいの時には思っていたはず。
 でも、自分の演奏で人の気持ちを揺さぶらせることができれば、ピアノ以外の楽器でも私は満足だったんだろうなと。もっと言えば、他の分野や芸術、ものづくりなど音楽以外のことでも良かったんだろうなと、大人になってよく思います(笑)

本番前はグミを食べつつひと眠り…⁉

生演奏コンサートの様子 写真提供:秋月舞

ー お話しをしていて、秋月さんはピアノを楽しんで弾いていらっしゃるように感じます。

 楽しんではいるんですけど、ものすごく心が弱くて、毎回本番前は「どうしようぅぅ…」って不安になるんですよ。
 人前に立つことも苦手ですし、チラシに顔やプロフィールが大きく載るのも苦手なので、本当演奏家に向いてないなと思っているんですけど。
 でも表現することは好きですし、音楽に乗せた想いを共有するところに価値を感じているので、苦手なことも頑張ってやっています(笑)

ー 不安になった時は、どう対処しているのですか。

 大学で人前にでるようになってからずっと、不安になった時の解決方法をいろいろ試しているんですけど、なかなか「これだ!」という方法に出会えないんです。
 まず、不安にならないように思いっ切り準備・練習してみたんですが、これは空回りしてしまって失敗。
 なので逆に、一生懸命向き合うことをやめてみたんです。一生懸命向き合うことをやめるというのは、自分を追い込み過ぎずに「なるようになる」と心に余裕をもつ、自分で自分を励ますってことなんですけど、これは結構上手くいっています。
 あとは、不安になった時に口にするものとか、自信がつく食べものってないのかなとチョコレートやグミ、金賞コロッケみたいな縁起が良さそうなものまでいろいろ試していたり。結果的にチョコは口に残る甘みが強くて合わなかったんですが、グミは糖分を取りつつ意外と口がスッキリするので良かったです。

 本番の時は特別頑張ろうとしてしまうので、本番前は行動にも気を付けていて。あえて本番直前は楽譜を見ないようにしたり、舞台裏で寝てみたり、目を瞑って瞑想してみたり、普段ののびのびとした気持ちを思い出すために、自分に合ったリラックス法を実験中です。

お客さまのあたたかさは緊張をほぐす”特効薬”

終演後のお客さまとの戯れと、曲に合わせたデザインのオリジナルシール配りの模様
写真提供:秋月舞

ー 演奏中にお客さまのお顔を見ていらっしゃいますか。

 演奏中は客席に対して横を向いているのであまり見れないのですが、トークの時はお客さまと向き合っているので、よく表情を見ています。
 お子さんが目を輝かせてくれていたり、頷きながら話を聞いてくださっていて、そういう反応が次の演奏会や作品に取り組む姿勢に繋がっていますね。
 あと、開演前にお客さまと話すこともあります。みなさんとお話しするのが楽しくて、開演間際までお話ししてから「じゃあ、弾いてきます!」とピアノの前に出ることもあるんですよ(笑)

ー お客さまの反応を次の演奏会に活かすとのことですが、反応を見てその場で雰囲気や演奏曲を変えることはありますか。

 反応を見て変えるというのとは、違うかもしれないんですけど。
 どんなに緊張して不安でいっぱいな時も、お客さまの眼差しやトーク中の頷きから、私をあたたかく見守ってくれている空気を感じるんです。
 その空気を感じた時「お客さまは、こんなにもあたたかく聴いてくださってるのに、私は何に怯えてこんなに強ばっているんだろう」と、はっと気が付くんですよね。
 そこで楽しい心や、のびのびしたあたたかい気持ち、リラックスしたいつもの私に戻ることができるので、気付けた前後では演奏の雰囲気が大きく変わっていると思います。

日常生活の楽しみを見つけもらう演奏会

松山城から見る景色 2022年末 写真提供:秋月舞

ー 今後、愛媛でやっていきたいことを教えてください。

 今は関東に住んでいるんですけど、関東に比べると愛媛はクラシックや音楽が、みなさんの生活にあまり浸透していないなと感じます。都心部に比べると、音楽堂や劇場、サロンの数も少ないですし、演奏会へ行くきっかけもあまりないなと感じています。
 そういうクラシックに馴染みもないし、演奏会に対してすごく敷居が高いと思ってる方が多い土地で、どんな活動をしていけばいいのか未だ模索中ですが、気取らず普段のリラックスしたスタイルで気軽に聴きに行けて、ちょっとした何かを得て帰ってもらう。そんな演奏会ができたらいいなと思っています。
 また、愛媛の魅力や土地柄と演奏会の内容をリンクさせることで、クラシック音楽を身近に感じてもらえるような、演奏会もしてみたいですね。

絵しりとり つばき ⇒ き○○○


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