談 隆太郎

親の転勤に伴い通った海外の高校で、暗記中心ではなく論文記述式の歴史教育に出会い衝撃を受…

談 隆太郎

親の転勤に伴い通った海外の高校で、暗記中心ではなく論文記述式の歴史教育に出会い衝撃を受ける。帰国後、大学で歴史学を専攻し、近代イギリスにおけるサラブレッド・ホースの誕生について卒業論文を執筆。現在は社会人として働く傍ら、主に歴史学の魅力を発信中。

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  • 歴史学の本をガチで精読してみた【モイン編】

    ・Samuel Moyn(2023)『Liberalism Against Itself: Cold War Intellectuals and the Making of Our Times』を精読してみたプロセスをお伝えします!

  • 歴史学雑記

    歴史や歴史学について、日々思いついたことを、つれづれなるままに、書いていきます!

  • 「すべてのこと」には歴史がある

    ・基本コンセプトは、「歴史的に考えることは、イマ・ココから一歩離れて、視野を広げるきっかけになる」です! ・毎月24日に更新します! ・日常的なモノ・コト・コトバ・ギモン(ミクロなものからマクロなものまで)を切り口に「歴史的思考」の魅力を伝えます。 ・現在の「あたりまえ」「自然なこと」「自明なこと」の歴史性を探ります。

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歴史学の本をガチで精読してみる

はじめに:不惑のチャレンジ!  今年は、私にとって、40歳という節目の年になります。40歳と言えば、「不惑」です。『論語』の中で、孔子が、人生を振り返り、もう「心に迷うことがなくなった」と語った年齢です。しかし、そもそも、その孔子はすでに15歳の時に「学を志した」と述べています。私にとって、40歳は、「不惑」というよりは、遅ればせながら「学を志す」年にしていきたいです。  そんな不惑の私の今年のチャレンジは、英語で書かれた歴史学の学術書を精読することです。  大学時代に

    • 『猫を愛でる近代』を読んでます!

      貝原伴寛さんの『猫を愛でる近代』を読んでいます。第2章から第4章まで読みました。猫という存在をきちんと歴史の中に位置づけ、医学史であったり科学史などと関連付けながら、当時の人々の言説を紐解いていくのが、とても面白いです!次は、いよいよモンクリフの『猫』のお話。引き続き、楽しみです!

      • 『猫を愛でる近代』を読み始めました!

        貝原伴寛さんの『猫を愛でる近代』を読み始めました。動物史と感情史という最先端の歴史学の方法論を用いながら、ただそれらを受容するだけでなく、批判的に対峙して、独自の議論を組み立てているところが、とても面白いです。まだ、最初の方ですが、個人的には、やはり「『猫の大虐殺』を読み直す」が印象的です。オススメですので、是非!

        • 精読その1(モイン編):分からなくてもとにかく読み進めるべし

          タイトルについて  英語の原題は、『Liberalism Against Itself: Cold War Intellectuals and the Making of Our Times』です。難しいのですが、自分なりに訳してみますと、『自らと対峙するリベラリズム:冷戦期の知識人と現代の形成』という感じです。  タイトルのキーワードは、「Liberalism(自由主義)」と「Cold War Intellectuals(冷戦期の知識人)のような気がします。  そして

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        • 歴史学の本をガチで精読してみた【モイン編】
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          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)④:ザ・パスト・イズ・ア・フォーリン・カントリー

          引用文は、本のタイトルにもなっている猫の大虐殺について記述している第2章「労働者の叛乱:サン・セヴラン街の猫の大虐殺」からの一節です。 猫を飼っている方には、だいぶショッキングなタイトルですが、これは、18世紀のパリで起こった事件で、二コラ・コンタという印刷工が徒弟時代を回顧した物語に記録されています。 物語をかいつまんで言うと、印刷工場で働いていた駆け出しの印刷工の2人が、劣悪な職場環境に腹を立てて、親方の奥さんが飼っていた猫を含めて多くの猫を捕まえて殺して、ショックを

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)④:ザ・パスト・イズ・ア・フォーリン・カントリー

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)③:歴史を語る前に気をつけること

          引用文は、ダーントンの『猫の大虐殺』の第1章に収められた「農民は民話をとおして告げ口する」からの一節です。 この章で、ダーントンは、18世紀に生きた農民たちの精神世界に迫るために、当時彼らが言い伝えていたであろう民話を分析しています。 その最初の民話が、皆さんもご存じであろう「赤ずきんちゃん」です。 ダーントンは、その「赤ずきんちゃん」の物語が、現在我々が知っている内容と違いがあることを示すために、18世紀に流布してていた原初版の物語を叙述しています。 そして、ダーン

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)③:歴史を語る前に気をつけること

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)②:『猫の大虐殺』って歴史学の本なの?

          歴史学の面白さを紹介する題材として、ダーントンの『猫の大虐殺』を選びました。 面白さの内容に移る前に、この本を簡単に紹介したいと思います。 著者は、アメリカの歴史学者であるロバート・ダーントンです。 現在は、ハーバード大学の名誉教授で、18世紀フランスにおける啓蒙主義を専門としています。 ダーントンは、文化史や書物の歴史について数多くの著作を出版しています。そんななか、『猫の大虐殺』は、彼の代表作です。 原著は1984年に出版され、今回は、2007年に出版された岩波

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)②:『猫の大虐殺』って歴史学の本なの?

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)①:歴史と歴史学の違い

          これから、いくつかの記事に渡って、歴史学の面白さを紹介したいと思います。 そして、その面白さを抽象的に紹介するよりも、具体的に歴史学の本を使って紹介したいと思います。 題材とする本は、アメリカの歴史学者であるロバート・ダーントンによる『猫の大虐殺』です。 「ね、猫の大虐殺?!」と思っている読者もいると思いますが、本の紹介の前に、まず「歴史学とは何か?」ということについて簡単に述べたいと思います。 高校までに、学校で習うのは、日本史や世界史などの歴史で、大体の人は、大学

          歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)①:歴史と歴史学の違い

          歴史学との出会い⑥:まず問いあれ

          アメリカン・スクールでの歴史の授業で、私の歴史に対する見方は大きく変わりました。 日本にいた時は、人名や事件などの事実の羅列であり、司馬遼太郎も好きだったので、物語という印象でした。 しかし、アメリカン・スクールでの歴史の授業を経て、歴史はなにより問いかけるものだと強く思いました。 そして、その問いには、正解はありません。 なぜなら、答えがある問いでは、そもそも議論にならないからです。 Aかもしれないし、Bかもしれない、というような問いに対して、立場を決めて、根拠を

          歴史学との出会い⑥:まず問いあれ

          いろいろな歴史のかたち①:時代区分×地域×テーマ

          多くの人にとって、歴史と言えば、日本史か世界史のふたつぐらいかもしれません。 しかし、歴史学者に、研究テーマを尋ねると、「近世イギリスの宗教史」というように、おおまかに、「時代区分×地域×テーマ」というかたちで答えが返ってくることが多いと思います。 そこで、いろいろな歴史のかたちを見ていきたいと思います。 まず、時代区分については、古代・中世・近世・近代・現代と分けられます。あるいは、17世紀というように、年代によって表すこともあります。 次に、地域については、国家単

          いろいろな歴史のかたち①:時代区分×地域×テーマ

          コンビニエンス・ヒストリー:歴史は何の役に立つのか?

          歴史は何の役に立つのか? 学生の時に、歴史の授業を受けながら、一度は思ったことがあるかもしれません。 そんなことを考えている暇があれば、勉強した方がいいと言う人もいるかもしれません。でも、何も考えずにただテストで良い点数を取るためだけに勉強するよりは、健全なような気もします。 とはいえ、そんなことを思う学生も、この問いについて、そんなに深く考えているわけではなさそうです。 つまり、根源的に歴史の社会的な役割を知りたい、考えたいというわけではなく、退屈で暗記するのが苦痛

          コンビニエンス・ヒストリー:歴史は何の役に立つのか?

          歴史学との出会い⑤:見慣れた景色が違って見えるとき

          アメリカン・スクールでの歴史学との出会いについて、辛く苦しかった経験ばかり書いてきましたが、歴史の授業ってこんなに面白いんだと思うこともありました。 日本の歴史の授業では、基本的に先生が歴史の流れはこういうものですよ、と一方的に話して、それを理解したり覚えたりすることばかりでした。 アメリカン・スクールでは、教科書を読んできて、先生から投げかけられる問いについて、みんなでディスカッションするような授業でした。ディスカッションには、うまく参加できませんでしたが、色々な意見や

          歴史学との出会い⑤:見慣れた景色が違って見えるとき

          歴史学との出会い④:BBQではなくDBQ

          アメリカン・スクールでの歴史のテストには、DBQと呼ばれるものもありました。 Document-Based Questionの略で、DBQです。 史料批判の入り口といった感じでしょうか。 あるトピックについて、関連する資料がいくつか用意されて、その信憑性や有用性について問われます。 例えば、ある国の外交政策について、当時の新聞の論評の抜粋から人々にどう見られていたかを論じたり、担当だった外務大臣の後年の回顧録を読んで、信用できるのかを記述したりというものでした。 難

          歴史学との出会い④:BBQではなくDBQ

          歴史学との出会い③:フットノートって何ですか?!

          リサーチ・ペーパーなるものを、初めて書いたのも、アメリカン・スクールでのことでした。 自由にトピックを選んで、10ページくらいの論文にまとめるというような課題だったと思います。 当時の自分は、何を思ったか、オスマン帝国の衰退に狙いを定めました。なぜオスマン帝国だったのか、今もって謎ですが、参考資料を探しました。 ちょうど「The Decline of the Ottoman Empire」みたいな本があったので、それに全乗っかりすることにしました。 とにかくリサーチ・

          歴史学との出会い③:フットノートって何ですか?!

          歴史学との出会い②:「この問題をアナライズしなさい」と言われても…

          アメリカン・スクールでの歴史の記述式テストを振り返ってみると、印象に残る設問がいくつかあります。 特に印象に残っているのが、「第二次世界大戦が起きた原因をアナライズ(analyze)しなさい」という問題文です。 この「アナライズしなさい」というのが、具体的にどういうことなのか高校生の自分には、よく分かりませんでした。「analyze」を英和辞典で引いてみると、「分析する」という意味のようでした。 しかし、そもそも「分析する」とは、どういうことか?「説明する(explai

          歴史学との出会い②:「この問題をアナライズしなさい」と言われても…

          歴史学との出会い①:グルーミー・デイズ・イン・パリス

          歴史学の魅力を伝えたいなと思っている訳ですが、歴史学との出会いは、今のそんな思いとは裏腹に、とても辛い思い出です。 高校1年生の冬に、父親の仕事の関係で、フランスに家族で引っ越すことになりました。そして、それ以前に3年間アメリカに住んでいたことがあり、多少英語もできるということで、パリのアメリカン・スクールに通うことになりました。 そこで、歴史学に初めて出会いました。 日本の高校では、日本史や世界史について、その流れや知識が問われていました。主に穴埋めの試験で、なかなか

          歴史学との出会い①:グルーミー・デイズ・イン・パリス