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精読その1(モイン編):分からなくてもとにかく読み進めるべし

タイトルについて

 英語の原題は、『Liberalism Against Itself: Cold War Intellectuals and the Making of Our Times』です。難しいのですが、自分なりに訳してみますと、『自らと対峙するリベラリズム:冷戦期の知識人と現代の形成』という感じです。

 タイトルのキーワードは、「Liberalism(自由主義)」と「Cold War Intellectuals(冷戦期の知識人)のような気がします。

 そして、「Liberalism Against Itself」なので、自由主義が外なる敵と対峙するというよりは、味方であるはずの冷戦期の知識人たちによって、内からの攻撃に晒されてしまう、というような内容なのかなという印象を受けます。

著者について

 著者は、Samuel Moyn(サミュエル・モイン)です。モインは、現在、イェール大学の歴史学学部と法科大学院の教授です。

 イェール大学のモインのホームページによれば、彼の専門分野は、国際法、人権、20世紀ヨーロッパにおける政治思想や倫理などです。

 これまでの著作としては、『Origins of the Other: Emmanuel Levinas between Revelation and Ethics』(2005)、『The Last Utopia: Human Rights in History』(2010)や『Humane: How the United Sates Abandoned Peace and Reinvented War』(2021)などがあります。

 近現代の西洋におけるインテレクチュアル・ヒストリーについて、活発な議論を繰り広げている気鋭の歴史学者です。

謝辞(Acknowledgements)から分かること

 学術書には、必ず謝辞(Acknowledgments)が述べられていて、そこを読むと出版の背景や関係する歴史学者とのつながりなどを窺い知ることがです。

 この本の謝辞から分かる第一のことは、この本が2022年にイギリスのオックスフォード大学で行われたカーライル講演の内容をベースにしているということです。ですので、口頭で行われたレクチャーの雰囲気が文体にも残っているようです。

 また、この本は、モインの指導教官であったGerald N. IzenbergとMartin Jayに捧げられています。共に、アメリカを代表するインテレクチュアル・ヒストリアンです。そういったアメリカで発展を遂げた近代のインテレクチュアル・ヒストリーのあり方を知ると、よりよくこの本を理解できるかもしれません。

目次から分かること

 「さぁ、本文を読み始めるぞ!」という前に目次をじっくり眺めたいと思います。

 この本は、序章と終章のほかに6つの章に分かれています。そして、それぞれに20世紀を代表する知識人の名前が当てられています。彼/彼女らは、章の順番に、ジュディス・シュクラー(Judith Shklar)、アイザイア・バーリン(Isaiah Berlin)、カール・ポパー(Karl Popper)、ガートルード・ヒンメルファーブ(Gertrude Himmelfarb)、ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)とライオネル・トリリング(Lionel Trilling)です。

 正直のところ、シュクラー、バーリン、ポパーとアーレントは名前を聞いたことがあるレベルで、ヒンメルファーブとトリリングに至っては、初めまして、なので少し先が心配です。

第1回目の読書の感想

 第1回の読書では、それぞれの章のパラグラフに番号を振っていき、とにかく分からなくていいので、読み進めることにしています。

 初見で内容が分かる文章は、自分で書いた文章だけと割り切って、とにかく視線を単語から単語へと移していきます。

 とはいえ、なかなか辛く苦しい作業でした。

 第1回目の読書で分かったのは、リベラリズム(これ自体まだよく分からない概念ですが)をダメにしてしまったのは、冷戦期の知識人たちだという主張だけでした。各々の章で、具体的にどうダメにしてしまったのかを説明している模様ですが、よく分かりませんでした(特に本の後半部分)。

 当然ですが、モインは彼が取り上げている知識人たちについて、読者はある程度、基礎知識があることを前提に議論を繰り広げているので、難しかったです。また、章ごとに1人の知識人が割り当てられているのですが、知らぬ間に、バーリンの章にシュクラーが出てきたりと混乱しました。

 「まぁ、最初はこんなもの」だと自分に言い聞かせ、次に向けて頑張りたいと思います。

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