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ブランディング詐欺に気をつけて。

ブランド価値を向上すれば事業のすべてがうまくいくような話を耳にすると、同じ業界にいる者として憤りを感じます。
そんな簡単な話は、いわゆる詐欺と同じです。
事業がつくりだす製品やサービスの品質が悪いのに、ブランド価値を高めて消費行動につなげるのは、詐欺の仕組みと変わりません。

ブランディングが効果的に機能するのは、製品やサービスの品質は高いのに、品質の良さが伝わらずに、安く粗悪なモノのように見えたり、購入する価値がないと思われる場合です。
購入する価値は、選ぶ価値と広く言った方が適切でしょう。

 
老舗割烹料理のお店であれば、他の老舗と何が違うのか。
価格が高い理由に生活者が納得しなければ、選ぶ価値を提供できたとは言えません。
ましてや、生活者の欲求に迎合しただけの身売りなんて事業の投資ではなく、予算をドブに捨てるようなものです。

 
老舗が続けてきて、これからも残す価値のあるもの(アイデンティティ)は何なのか。
まずはこのアイデンティティを見つけ、その後に、いまを生きる生活者が「価値」と感じることと適切につなげていくのです。
これを少なくとも2~3年は続けていくことで、はじめてブランド価値は上がっていくのに、提供するモノが大量生産、大量消費の代物だったり、たった数ヶ月から1年程度でブランド価値を高めようというのは甚だ間違っているのです。

 
また、これと同じことで、事業の数々の問題が、ブランディングひとつで解決できるとうそぶく同業者がいるというのも、いまの日本の問題なのです。
品質と伝え方と売り方、これらすべてが事業には大事で、これらの源はヒトなのです。
ヒトに投資できなければ、何もはじまらないのです。
ブランド価値というのは、何年もつづけて、ようやく滲み出てくる湧き水のようなものなのです。
どれだけ同業から睨まれようとも、どれだけ依頼人から口うるさい奴と思われようとも、私たちは真実を伝えるべきです。

これは江口克のブログ「キャッチボールをするような」の2018.8.6の記事からの転載です。オリジナルで読みたい方はこちら

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