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農業土木の精華「円形分水工」

「円形分水工(円筒分水)」とは、農業用水を正確かつ効率よく分配するために造られた施設で、昭和初期に発明されて以降、各地に施工されたものが今も残され、使い続けられています。
産業遺産(稼働遺産)の一種と見なして差し支えないでしょう。

仕組みとしては、まず、コンクリート製の巨大な筒の中央に、サイフォンの原理を利用して、地下から用水を導きます。
溜まった水は、掛け流し温泉のお湯が湯船から溢れ出るように、円筒の外縁を越水します。
水槽が円筒形をしているのは、溢れる水量を全方向均等にするため。
分水工から先の流路へは、外縁部に設けた穴や仕切りによって、水量を按分します。
シンプルで美しい、よく考えられた構造ですね。


福島市郊外の大笹生(おおざそう)地区にも「栗本堰の円形分水工」と呼ばれる施設があり、先日、見に行ってきました。
すぐそばに立派な桜の木が生えていることも事前情報で仕入れていたので、「溢れる水に浮かぶピンクの花筏」の絵柄を想像しながら勇んで出掛けたのですが……。

が。が。が。

……ご覧のとおり、ほとんど水が溜まっていませんでした。

考えてみれば、田植えの季節はまだまだ先。
第一、満開の桜と円形分水工の組み合わせを撮影できるのなら、とっくの昔にそうした写真を目にしていてもおかしくないわけで。

それでも、果樹園が広がる辺りの風景は、とても和やかで気持ちのよいものでした。
(水が無かったせいで、円筒の内部も確認できたし!)

いずれまた、再訪したいと思います。

(訪問日:2023年4月1日)

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