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短編創作集

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2022年8月の記事一覧

詩/ひとくち

詩/ひとくち

小さい頃からそれを上手に食べきった試しなんかない。
口に含みすぎれば、きぃんと頭に響くし舌は痺れる。
とはいえ少なければあっさりと口の中で溶けきってしまい物足りない。

その加減が、どうにも不器用な自分には難しい。

けれども、その甘さに。
舌の痺れもおさまらぬうちに、また大きすぎるひと口を口へ運ぶのだ。

ベタつく口元を拭う僕を見て、まるでお前の下手なキスと同じだと君は笑った。

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詩/溺れる

詩/溺れる

電車を降りた途端噎せ返る潮の匂いとベタつく風が迫ってきて
嗚呼、この町も溺れているのだと知った

ぼんやりと佇んだホームでなんとなしに舌を突き出せば空気まで塩気を含むようで、一気に蘇るのはあの日口に含んだ君の汗、その熱

決して、消えてなんてくれやしない

きっと僕も、この町のようにずっとずっと溺れているんだろう

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