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部屋を「借りる」から「貸す」に立場が変わって気づいたこと


僕はライター、編集者の仕事のほかに賃貸物件のオーナーを約2年しています。正確に言うと、賃貸物件の経営をする企業のメンバーとして活動をしているので、僕自身がオーナーを務めているわけでありません。「オーナー側の仕事」と表現するのが適切ですが、説明がややこしいのでこのnoteではオーナーで通します!

そもそも文筆業として活動していた僕がなぜ不動産オーナーの仕事をするようになったのか。これにはいろんな事情があるのですが、端折ってお伝えすると、とある経営者との出会いがきっかけです。

僕はかつて不動産会社に約5年勤務していたことがあり、不動産について多少の知識はありました。それに建物に興味があって、街を歩くと「このビルいいなぁ」「間取りはどんな感じかな」なんて思ってしまうのが僕のクセだったんですね。

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(2010年に丸ビルから撮影した「KITTE」の工事現場)

ひょんなことから出会った経営者の方から「これから賃貸物件のオーナーをするけど、仕事を手伝ってほしい」との話をいただいたときには嬉しかったし、「やります!」と前のめりで返事をしました。

この先何があっても、住む場所は絶対に必要。不動産をライフワークにしよう


僕が思う不動産の良いところは、時代がどう変わろうと、ずっとニーズがあること。衣食住と言うように、人が生きる限り住む場所は絶対に必要です。なので不動産オーナーとしての仕事はなくなることがなく、ずっと続けていけると思ったのです。

僕が賃貸物件オーナーとして、次のような仕事をしています。

・物件調査、仕入れ(物件サイトを見たり、不動産業者さんから紹介を受けたりする)
・物件に入居者ニーズがあるかの調査
・融資のために金融機関への連絡(ここは主に僕のボスがすることが多いです)
・管理会社選定、客付けについての打ち合わせ、空室発生時の対応
・賃貸物件オーナーに必要な知識の勉強

どうでしょうか。意外とこまごました項目が多いです。それに、様々な人たちとのコミュニケーション力を求められます。人と話すのが好きな僕には向いているなと感じます!

まさか自分が「貸す側」の仕事をするなんて…


不動産会社勤務経験があるとはいえ、賃貸物件のオーナーをするのは初めてのことです。なので必要な知識は勉強しましたし、今も勉強を続けています。また不動産経営歴が十数年の大先輩にも話を聞いて、いろいろなアドバイスを受けています。特に現在はコロナ禍で働き方が変わっているので、住まいに求めるものも違ってきています。経験豊富な先輩方の知恵にはいつも助けられています。

2021年6月12日時点で都内に2棟を所有しているわけですが、以前は借りる側しか選択肢がなかった僕が、なんと賃貸物件を貸す側になる日がくるとは…。立場が変わると見え方も違ってきまして、なんだか社会をより知った気がするのです(大げさ)

僕はいまも家族で賃貸物件に住み、家賃を支払っています。仕事で部屋を貸す側になったことで生じた考えや気持ちの変化についてnoteに書いてみます。

オーナーさん、ありがとう!!


自分が貸す側をしてみて感じたことは、もうこの一言しかありません。

オーナーさん、住みやすい環境を整えてくれてありがとう!!

僕は25歳からひとり暮らしをしていますが、ずっと賃貸物件に住んできました。契約をしてカギを受け取り、ドアを開けると家具家電はなくガラッとしているものの、トイレやお風呂、室内は掃除されていて綺麗ですし、家電がないと言ってもエアコンは備え付けられています。水は出るからお風呂に入れますし、ガスや電気だって使えます。つまり、入居した日から最低限の生活を営めるわけです。

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ライフライン系の設備以外には、ガスコンロや室内照明が設置されていたり、網戸がついていることもあります。ガスコンロはありがたいです。ガス栓を開栓すればお湯を沸かせますし、自炊もできます。

もちろん、入居時についている設備は物件によって異なります。ガスコンロも室内灯も網戸も必ずしもどういうことかというと、部屋を借りた人が入居してすぐに、できるだけ快適に暮らせるような工夫がされていることに僕は貸す側になって気が付いたのです。

入居してすぐに住める環境が整っているのは、当たり前ではない


正直ですね、僕は何もかも用意されているのが当たり前だと思っていました。

高い家賃と初期費用(敷金、礼金)を支払っているんだから、そんなの当然だ。コンロがついてないとかありえない

オーナーをやってみて感じますが、コンロがある物件とそうでない物件では募集にかけたときに借り手に与える印象が違います。仮に敷金、礼金の条件が同じ場合、言うまでもなくコンロ有の物件の方が好かれます。はじめからついていれば、入居後に自分で買う必要はないので出費を抑えられます。よほどのこだわりがない限りは、備え付けのコンロで満足に生活できので、コンロの有無は物件のアピール力に影響します。

コンロにしても網戸にしても、それらの費用を負担するのはオーナーです。独身、会社員、20代の僕は「そんなのオーナーだから負担するのは当然だ」と感じていました。

入居者から毎月入る賃料で贅沢できるんだから、微々たる出費でしょう

いやいや、とんでもない。入居者が支払う賃料がそのままオーナーのポケットに入るわけではないんです。物件の立地、構造、部屋数、賃料、毎月の返済額などによって異なりますが、賃料から経費を差し引いた金額がオーナーの利益となります。

経費についてですが、建築費が高い都心にある物件であれば物件価格が高いので、それに伴って金融機関からの融資額、つまり借金の金額も上がります。さらに融資期間が短ければ月当たりの支払金額も上がりますから、あまり手元に残らないこともあります。また物件に空室があり、入居者がいない状況が長引いた場合、経費の支払いの方が大きくて利益にならないこともあるわけです。オーナーだから贅沢をしているわけじゃないんですね。

ただ空室リスクについては、経営ですのでオーナーが覚悟しておくべきリスクです。それに自分がオーナーをやってみて思いますが、満室経営はオーナーの手腕でもあります。ここが難しくもあり、工夫のしどころでもある。

住み手には転職、退職、異動など事情がありますからどこかしらのタイミングで退去はあります。もしこのnoteをお読みの方が賃貸物件に入居したとき、物件のオーナーの収益状況はあまりよくないかもしれません(まあ、それは借り手には関係ないことですが…)。それでもオーナーは新しい入居者の暮らしやすさを考えて初期費用を下げたり(敷金0にするなど)、フリーレントをつけたり、室内照明をつけたりするわけです。

実際、僕が担当している物件で数か月空室になっていた部屋があったのですが、どうすれば魅力的にうつるかを自分でも考えたし、管理会社とも打ち合わせをして様々な施策を打ちました。その結果、入居申し込みをいただくに至りました。

住む人に快適な暮らしを提供するサービス業


賃貸物件のオーナーになることは不動産投資と呼ばれますが、結局は不動産賃貸業というビジネスです。お客様がいて、住んでもらい満足した暮らしを送っていただき、その対価としてお金をいただく。何もせずにただ空間だけ貸して楽してお金を得ているわけではない。自分が「貸す側」をオーナーの気持ちがわかりました。

入居者から支払われた賃料を全額ポケットに入れるとの考えも、冷静に考えればそれがおかしいことはわかったはずです。ビジネスですから経費がある。そう考えられなかったのは、僕が家賃を嫌々支払っていたからです。「なんで朝と夜、お風呂しか使っていないのに、月に〇万円も払わないといけないんだ?」といらついていた時期がありましたからね。

かつての僕はとても傲慢で、視野が狭かったなと思います。サービスを提供する側の気持ちを考えておらず、自分が恥ずかしく思いました。良いサービスを受けるのが当たり前だと上から目線でした。

住む場所がある安心感


でも貸す側をやってみて、そんな考えがガラッと変わりました。朝と夜、お風呂しか使っていないじゃないよ。いつでも帰れる家がある、過ごす家がある。寝たりお風呂に入ったり休んだりできる空間がある。雨が降っても台風が来ても、暑くても寒くても快適に過ごせる部屋がある。住環境がしっかりとしていることが暮らしに与える影響がどんなに大きいか。そのことに僕は目が向いていませんでした。

住む場所があるから仕事に集中できるし、勉強もできるし、将来のことも考えられる。たしかに日中家を空ける生活をしていると家賃が無駄に感じられるかもしれないけど、それでも生活基盤となる住む場所があることの価値は大きいです。賃貸物件でひとり暮らしをしている間、笑ったり悩んだりできたのも、ちゃんとした住む場所を持ってる気持ちのゆとりがあったからこそ。

そんなふうに思ったら、現在家族で住んでいる賃貸物件にも、オーナーさんにも感謝しかありません。築30年くらいの建物なのですが、外観からはそう見えません。内装はさらにそうです。南向きで窓が広く採光性が良いことが手伝っているかもしれませんが、それだけの築年数が経っているように思えないんです。入居前、オーナーさんが部屋のフローリングを明るめの色に張り替えてくださっていたんです。他の部屋はダークブラウンだそうなのですが、僕ら家族が住んでいる部屋はライトブラウンで印象がとても明るいのです。内覧では同じ建物を3部屋見ましたが、フローリングが明るいこの部屋に決めました!こうした配慮は嬉しい!

コンロもエアコンもついています。まあ網戸はついていませんでしたが、フリーレントがついていましたので、満足です。おかげで住みやすいです!!コロナ禍で緊急事態宣言下でも快適なおうち時間を過ごせました

オーナーさんにだけじゃないよ。いま快適に暮らせているのは、住まいに関わるすべての人たちのおかげ。普段から物件周りの清掃をしてくれる人、水道や電気、換気扇などのトラブルを解消してくれる人、物件を管理してくれる管理会社の人、そしてオーナーさんに融資をしてくれた金融機関などなど。自分の暮らしはたくさんの人の力で成り立っていることを感じました。

立場が違うと視点が変わるとはよく言ったもので、賃貸物件を貸す側の仕事をしてから、僕はたくさんの人に支えられて生きていることを痛感し、社会は優しいなと感じた次第です。

お読みくださりありがとうございました。

そのべゆういち
charoma0701@gmail.com




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