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音楽理論/楽曲分析 (池田福太朗)

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#音楽理論

オルガン即興科で私が目指していたもの (言語学習を音楽学習に応用すること)

 私は2017年9月に教会音楽家としてドイツNRW州のある小教区に就職したが,1か月後にはベルリン芸術大学 (UdK Berlin) のオルガン即興科Bachelor課程に入学し,以降しばらく,仕事の傍ら週1回だけベルリンに通ってレッスンを受けるという生活をしていた。
 結果的にこれは1年でやめてしまうことになるのだが,このとき考えていたことは大切なことだと今でも思うので,もはや自ら実行に移そうと

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バッハの和声の魅力と難解さの秘密:transitus irregularis



 バッハの和声をとりわけ味わい深くし,かつ把握しづらくしてもいるのが,拍節上相対的に強い位置にくる経過音・刺繍音の多用である。このような経過音・刺繍音はtransitus irregularisトランシトゥス(トランジトゥス)・イッレグラーリス,すなわち「イレギュラーなtransitus」と呼ばれる("transitus" は経過音・刺繍音双方を含む概念。ラテン語だが音楽理論の用語として今も用

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機能和声理論 (Funktionstheorie) の分析記号のまとめ

 19世紀末のドイツで生まれ,今もドイツ語圏を中心に通用している「機能理論 (独:Funktionstheorie)」という和声理論があります。これはまずフーゴー・リーマンHugo Riemannによって体系化され,その後ヴィルヘルム・マーラーWilhelm Malerらによって整備されたものですが,邦訳のある和声教本の中では,ディーター・デ・ラ・モッテの『大作曲家の和声』に,この理論に基づく記号

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