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音楽理論/楽曲分析 (池田福太朗)

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#バッハ

【楽曲分析】J. S. Bach, 平均律クラヴィーア曲集第2巻第12番フーガ (ヘ短調) BWV 881,2

【楽曲分析】J. S. Bach, 平均律クラヴィーア曲集第2巻第12番フーガ (ヘ短調) BWV 881,2

 公開するためにいろいろ説明を加えたりはしているものの,客観性を大切にした分析・解説を提供することを初めから目指したものではなく,基本的には自分のために分析したこと考えたことの記録です。つまり,思いついたこと感じたことを自由に述べている部分が多めに含まれています。というわけで,一般論としてもそうですが本稿については特に,私の言葉にとらわれず,「そう言いたければ言えるかもしれないが,自分はそう思わな

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バッハ4声コラールの優れた新版について (真作偽作問題を意識した初めての版)

バッハ4声コラールの優れた新版について (真作偽作問題を意識した初めての版)

 もう1年近く前になってしまいましたが,2021年9月に,バッハ4声コラールの注目すべき新版 (↓) が出ています。編者はトーマス・ダニエルThomas Danielで,バッハ・コラールについてのたいへんしっかりした教本 (ほとんど研究書) を出している人でもあります。

 最大の特徴は,確実/ほぼ確実に真作であるものと,多かれ少なかれ疑わしいものとが明瞭に分けられ,別々の部に収められていることで

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バッハの和声の魅力と難解さの秘密:transitus irregularis



 バッハの和声をとりわけ味わい深くし,かつ把握しづらくしてもいるのが,拍節上相対的に強い位置にくる経過音・刺繍音の多用である。このような経過音・刺繍音はtransitus irregularisトランシトゥス(トランジトゥス)・イッレグラーリス,すなわち「イレギュラーなtransitus」と呼ばれる("transitus" は経過音・刺繍音双方を含む概念。ラテン語だが音楽理論の用語として今も用

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