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書評 13歳からのアート思考

これからの時代に求められていることは、
正解を見つけることではない、自分だけのものの見方で世界を見つめ、自分なりの探求をし続けること。

アート思考とは

この考え方を本書ではアート思考と名付けています。

具体的にどんなものかというと、
子供にモネの睡蓮を見せました。子供は、カエルがいると言った。だが、どこにもカエルは描かれてない。
子供が言いたのは池の中にカエルがいるだろうと頭の中で想像したためにカエルがいると伝えた。

モネ睡蓮

目に見えるモノやコトだけが正解ではないってことですね。
確かに、大人であればカエルがいると即座に言う人はなかなかいないでしょうね。

概要

本書では、20世紀以降の代表的な絵画作品が登場し、それらを鑑賞することによって、アート思考を学んでいこうという内容になってます。
紹介されている作品は、見る人によって様々な解釈が可能となる作品ばかり。

作品を公開した画家たちも、当時の美術界の状況を当たり前とせず、自ら考え出したことによって新たな境地となる作品を世に送り出しました。

彼らは、アート思考をまさに体現してきた人々でもあるということです。
後世では、評価されている彼らも当時は、前例がない作品のために批判にさらされていたそうです。


一番面白かった著者の解釈

個人的には、千利休の茶碗についての著者なりの解釈が一番面白かったです。

利休は、あえてでこぼこの茶碗(黒楽茶碗)を作っています。
(現在では重要文化財に認定されています。)

さて、この茶碗を作った意図は、なんだったのでしょうか。
著者の考える意図は、
見た目での美術の枠を超えて、触覚(茶碗を持った時の凸凹感や温度、口にした時の感覚)を大切にしてほしいという思いがあるのではないか。とのことです。

なるほどーと思いました。
作り出した作品を鑑賞する側がどのように捉えるかによって、その作品の価値が大きく変わる分かりやすい例だなと思います。

作品への見方はそれぞれだし、ここで紹介されている意図・解釈についても著者自身が1年後に考えるとまた違った意図を見出すかもしれません。
でもそれで良いんだと思います。


一番大切なこと

自分だけのものの見方で世界を見つめ、自分なりの探求をし続けること。

となると、子供のように何事にも捉われず世界を見つめることだけを本書は推奨しているのでしょうか。

決して、そうではないと思います。

気を付けなくてはいけないのは、自分だけのものの見方で世界を見つめることだけにフォーカスすると、過去の知識や考え方を学ぶ必要はない、斬新な発想だけが生み出せれば良い、と考えてしまう恐れがあります。

大切なのは、探求をし続けることです。

実際、本書で登場した芸術家の多くは、斬新な作品をリリースする前に、当時の時代に見合った作品を出展し、知名度を上げていました。
過去の美術作品を鑑賞し、模写をしていくことで、新たな自分なりの手法を見つけていったのではないかと推測されます。


探求すること(掘り下げること、学ぶこと)を放棄するとどうなるのでしょうか。

自分が考えていることを他者へ説明できません。

美術の世界ではリリースされた作品の解釈は、鑑賞する側の捉え方に委ねられますが、複数の人々が関わっているビジネスの世界では、違います。
斬新な考え方、発想を編み出しても、ある程度の説明責任を伴います。
感覚だけで許されるのは、よっぽどのカリスマであったスティーブ・ジョブズのような人物だけです。
感覚に訴えかけることは大切ですが、過去の方法とどのように違うのか、どのような新しい角度から訴えかけているのか、訴求ポイントを最低限説明しない限りは、承認を得ることは難しいはずです。

そのために、探求をしていくこと、過去の知識を蓄える、勉強をすることもとっても大切ではないか、そう思いました。

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