自分の頭で考えるとはどういうことなんだろう
自分の頭で考えるとはどういうことか。
ヤマト運輸の元社長小倉昌男著「経営学」にひとつの答えが書かれていた。
小倉昌男は、B toB事業がメインだったヤマト運輸をBtoCである宅配便事業へ一大転換し成功させた人物。
転換を図ったのは、決して前向きな理由ではなかった。
そうせざるを得ないほど、経営が圧迫されていたためである。
長距離幹線輸送に乗り遅れ、商業宅配では、荷主から散々な目にあわされ、
そんなときに、アメリカにってFedexの事業を見て、日本でもおなじようなことができるのではないかと実現させた。
当時は、誰も儲からないと思い、参入しなかった事業だが、著者なりに計算をし、損益分岐点を見出し、従業員を説得し、黒字化に結びつけた。
ヤマトが乗り出す前は、どこの運送会社も採算が取れるわけがないと敬遠していたにも関わらず、ヤマト運輸の成功を目撃して、30社以上が名乗りを上げる事業となった。
そんな同業他社の動きについて以下のように語っている。
宅急便を始めるとき、大方の人間は失敗するだろうと予測した。
ただ、その予測は、あんな効率の悪い仕事は採算割れになるだろう、という程度の非常に漠とした根拠によるものであった。
宅急便の採算を考える場合、費用は集配車の一日当たりのコストであり、固定的な要素が強い。
問題は収入である。
単価は郵便小包との関係で500円以上取れないから、一日何個集荷できるかにかかってくる。
つまり荷物の”密度の濃さ”が重要になる。需要は人口の関数だろう。
車両の作業効率は受持ち区域の広さによって変わってくる。
そうすると、初年度の赤字は必至であるが、何年かすると損益分岐点を超すかもしれないー。
そこまで考えて宅急便の成否を見通した人はいなかったと思う。
そして、五年後に宅急便が黒字を出すと、今度はその理由も考えずにいきなり35社も新規参入してくるありさまである。
だから今は一社のみ残し、すべて撤退してしまっている。
要するに、自分の頭で考えないで他人の真似をするのが、経営者として一番危険な人なのである。
論理の反対は情緒である。
情緒的にものを考える人は経営者には向かない。
経営者としての思考回路が本書では紹介されている。
自分の頭で考えて、更には自分でいろんな情報を集めて、気になったことは現場に出向いて詳しく調査をする。
そして、事業として成り立たせるためにはどうすればよいか、損益分岐点はどこにあるのかなどを常に検証していた。
また、現場主体の意識がよく表れていて、経営者でもない私でも分かりやすく、参考になる部分が多かった。
「サービスが先、利益は後」
このスローガンを浸透させることができたのも、著者が詳細な分析をして、儲かるかどうかの確信を抱いていたからだろうだと感じた。
彼が存命だったら、amazonとの関係やこれからのEC物流に対して、どのような戦略を打ち立てていたのだろうかと想像せずにはいられない。
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