見出し画像

「夢は叶うよ」って、成人式で生徒が教えてくれたから

わたしに未来をみせてくれたのは、ハタチになった生徒たち

「夢って叶うんだ!!」ってはじめて実感をもって感じられたのも、やっぱり成人式で会った生徒たちのおかげでした。




わたしが中学校で担任させてもらった生徒の話をするね。


Hは、クラスのマスコットキャラクターみたいな子だった。

周りにはいつも友達がいて、男女関係なく誰からもかわいがられる子。

ディズニーが好きだと公言していて、持ち物のあちこちにかわいいキャラクター。

小説を読んでる子が多い「朝の読書」の時間、Hはむずかしい顔をしながらホスピタリティーについて学んでいた。



成人式の日。

中学生のとき、いつも一緒にいた部活メンバーと一緒に、Hはわーっと来てくれた。速いテンポでみんなでひとしきりしゃべった後、ふと、言った。


「そうだ先生、10月頃かな?ディズニー来ませんでした?女性のお客さま3人で」

「え? …あー行った!10月の24日!」

「やっぱりー!ぜったい先生だと思ってたんですー」



忘れもしない。その日はわたしがずっと応援しているスーパーアイドルの誕生日。同僚の子ふたりとハロウィンディズニ―することになったとき、せっかくならお誕生日当日にいこうよと提案してくれた。おかげで、自分の生まれた日でもないのにこんなにハッピーでいいのかと思うバースデーを過ごすことができたんだ。

教員って、ある意味では芸能人と同じ。ほんと、どこにいっても目撃されるなぁ。


…でも、違和感。単に「先生みつけましたよ」っていうのとは違うらしい。どういうこと??

Hの言いたい事が分からなくて、反応を待つ。


にこっとしたHの口から出たのは、ひとこと、予想してない言葉だった。





「先生、僕、


    ディズニーキャストになったんです」







彼の伝えたかったことを理解した瞬間、ぐわんと体温があがる感じ。

そうだ。

はじめて会ったときからずっと、Hの夢は、「ディズニーキャストになること」だった。

わたしは気づかないうちに、夢を叶えた彼に会っていたんだ。




中3の冬。

Hとは、わたしまで暗記してしまうほど入試の面接練習をした。

将来の夢はディズニーランドで働くことです。

高校進学後は、外国のゲストもおもてなしできるように、得意の英語をもっと伸ばします。

放課後の教室。背筋の伸びた学ラン姿で、一生懸命に伝えてくれたHの言葉を思い出す。


面接のためだけじゃない。

Hは普段から、わたしにも友達にもディズニーで働きたいって言っていた。担任した2年間、合計何回聞いただろう。



そっか。あれが、叶ったんだね。

誇らしいHの表情をみながら、いろんな気持ちがいっぺんにうわっと押し寄せた。

「お客様」なんてさらりと使ってしまうくらい、Hはもう立派なキャストさんだった。

夢って、本当に叶うんだ。

はじめて、実感できた瞬間だった。



*****



あまり考えたこともなかったけれど、わたしは夢が叶うなんて信じていなかったんだと思う。

ケーキ屋さん

お医者さん

水泳の選手

バスガイド

プラネタリアン

秘書

高校の先生 …

大小いろんなものを夢見たけど、わたしにはどれも叶わなかった。

あんまり真剣に叶えようと思えていなかったのも多かったのかな。そんな気がする。


今のわたしが叶えたいのは。


たくさんあるけれど、そのうちのひとつは、もっと自由な形で教育をつくること。

みんなと一緒に新しいことをいっぱい試して授業をつくった。50分後にどこにつくかわくわくした。いろーんなことやったよね。付き合ってくれてありがとう。

調べて、これは‼と思ったものをアレンジして、一緒に試すとき、思った以上の反応が返ってくると楽しくてしょうがなかった。

好きな人たちと「これはいい」って心底思える形をつくって、必要としてくれる子供たちと、お父さんお母さんと、先生たちに届けられたら。そこを、もっとやってみたい。


だから、学校の外に出た。

もっと自由に、まだ教科書にないことを、カリキュラムの外で試してみたいと思ってる。

どうやればいいかはよく分かんない。けど、なにか方法はあるはずだし。

次会ったらわたしからもいい報告ができるようにやってみるつもり。


「夢は叶うよ」って、成人式で生徒が教えてくれたから。












初めて受けもった生徒の成人式。担当したほかの子たちとの話はこちら。


この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

サポートしていただけたら、あなたの読みたいnoteを書きたいです。 どんなものがお好みですか?^^