「恥」が怖いわたしたちには、見られる練習が必要なんじゃない?

映画の舞台挨拶の回に入ったことが数回ある。

現地にいくのは倍率が高くて難しくても、最近では中継していることも多いから、探してみると意外と機会はある。

何年も前に、KAT-TUN・亀梨和也くんが主演の舞台挨拶が近所の映画館でも中継された。亀梨くん好きなので運よく入ることができ喜んでいたのだが、中継中のスクリーンを見ていたときに驚いたのは、彼の視線とふるまいだった。

現地にたくさんいるであろう女性ファンたちと、カメラの先で、全国各地から彼の姿を見つめているたくさんの人。

その前で、落ち着いた様子で会場全体を見渡しながら、作品にこめた想いを丁寧に語っていた。

そんなの、タレントなんだから当然のことだろうと思うかもしれない。

それでも、テレビでインタビューされている姿をみる時は、その一部分を切り取られていたので、彼が終始そういう態度でいることを見て、知ったのは初めてだった。

この人は、見られることに慣れているんだ。

それが、舞台挨拶の内容よりずっと色濃く記憶に残っていることだ。


似たことを、今年の夏にも感じた。

相手は、長く応援してきた江田剛くん。

期間限定のポップアップショップでグッズの販売をすることになったとき、数日だけ本人が立ち会ってくれる機会があった。

そこに運よく行くことができ、本人からグッズを手渡してもらったり、短い時間だけれど直接会話をしたりすることができた。

わたしたちファンからしたら、好きすぎる人が目の前に現れて、しかも喋れるだなんて、大事件。やっぱり平常心ではいられなくて、浮ついたり、変にからだに力が入ってしまったり。言いたい事なんて山ほどあるのに、こういうときには何にも出てこなくなってしまったりして。

そんな中でも、何人ものファンたちを目の前にしながら、彼は至って平常心。常温のままそこにいて、相手の温度や距離感に合わせて話をしてくれて。

思い出したのが、舞台挨拶での亀梨くん。

こんなに多様なファンたちが次々流れてきて、穴があくくらい見つめられ続ける環境にずっといながら常温でいられるなんて。あ、この人も見られることが怖くないんだ、って思ったんだった。



人前に立つことを「怖い」と感じることがあるのは、わたしだけではないと思う。

仕事で毎日30人くらいの前で何年も話続けていたからだいぶ慣れたけれど、アウェイな環境や、いつもとは違うところで目立ってしまいそうな行動をすることが、得意じゃない。

中学校勤務の頃、部活指導が苦手だったわたしは、誰かの視界に入るのがとにかく怖くて、体育館では陰になっていたかった。ジャージを選びに行く際は、黒やネイビーのものを選ぶことは当たり前。ブランドのロゴが背中や胸にドーンと大きく入っているだけで目立ってしまいそうな気がして、お店を何件も巡っては「いかに目立たなそうか」で購入ジャージを決めていた。

それくらい、ひっそりと生きていたかった。



世界は、恥の文化の国と、罪の文化の国に分けられるという話を聴いたことがある。

日本は、恥の文化の国。

小学生の頃、恥ずかしくて授業中に手が挙げられない。

恥ずかしい思いをしたくなくて、人に見つからないところでこそこそ練習(通称コソ練)をする。

目に余ることをすると「親の顔が見てみたい」と言われてしまう。

そういうのはすべて、「恥ずかしい思いをしないように生きよう」とする、日本人のベースになっているマインドによるものなんだと思っている。

だから、日本人の多くは恥をかきたくなくて、目立つことを避けるようにできている。多数派のなかに自分をうまく溶け込ませて、なんとか「みんな」になろうとしてしまう。



そんな私たちに今、「個の時代」と呼ばれるときがやってきた。

みんなと同じから抜け出して、自分のすきなこと・自分のやりたいこと・自分の想いを軸にして生きていかなければならないらしい。

「わたしはこれが好き!」っていうことも、「わたしはこれがやりたいの!」っていうことも、とっても勇気がいることだ。どうやったら「恥」の気持ちを乗り越えていけるんだろう。


わたしが思うに、少しずつでいいから「見られる場所」に立つ練習をしていくしかないんじゃないかな。

それは具体的な場所に限らず、Twitterやnoteでも。

リアルでも音声でも文字でも絵でも何でもいいから、「自分」を形にして、人に見えるところに置いていく。

繰り返して、少しずつ慣れてきたら、もう少し人が多そうなところにも置いてみる。

そうして、「こんなことを考えている人間が、ここにいますよー」と伝えていくのがいいのかなぁ。



亀梨君とか江田くんだって、生まれたときから人前で堂々と振る舞えたわけではない。

小さい頃から何年も見られる仕事を続けてきた結果、「見られても大丈夫な自分」をもつことができたはず。


急に何千人、何万人の前に立つことは怖すぎるから。わたしたちも、ほんの数人でもいいから「こんなこと考えてるよ」「こんなもの作ってみたの」と見せることから始めましょ。



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