「医療崩壊の真実」

DPCデータを使った分析

2020年のDPCデータを使った分析を見ることができます。

厚労省から公開されているDPCデータの最新は令和元年度ですし、本書でやっているレベルの分析ができるものでもありませんので、これは貴重です。

おそらく、コンサル先(500~700)のデータだと思いますが、それでも十分な数だと思います。

国別データもあり

国別の一人当たり年間外来受診回数や外来手術実施比率、人口当たりの病院数、各種病床数や病床稼働率、平均在院日数、がん化学療法の入院・外来粗利比較が掲載されています。一冊にまとまっているので概観を掴みやすいです。

おもしろい分析

素泊まり入院、手術数と合併症の相関・標準偏差等、DPCデータでこういう分析ができるのか、と気づかされました。

新型コロナ感染症に関する分析

コロナ患者受け入れ有無別の一般病棟やICUの稼働率、コロナ患者受け入れパターンと、患者対看護師数(一般:4対1、ICU:1対1)から、医療従事者の数がネックになっていることを示しています。

また、病院毎のECMO、ICU、HCU等の設備や専門医の有無を調べた上で、各病院が受け入れた患者(重症、中等症、軽症)の数から、各病院のストラクチャーとのマッチングがどうだったかを評価しています。

EDRG(Extended Diagnosis Related Group)

DPC/PDPSやDRG/PPSと違った診療報酬体系として、EDRGの話が出てきます。発症から完治までをワンエピソードとして一定額を支払い、それを発症~完治に関与した医療機関(複数)で分ける、というものだそうです。

分ける基準をどうするのかが疑問ですが、これが導入されると、医療機関の系列化が進むのでしょうか。

EDRGの項で、(日本の)病院毎の合併症発生率と医療費の散布図が掲載されていました。合併症発生率が低く、医療費がかからない病院がわかります。

さすがに散布図に病院名は記載されてませんが、それが公開されたら、どこの病院に行けばいいのかの参考になりそうです。

相澤孝夫氏の話

本書の最後に、相澤孝夫氏との鼎談が掲載されています。

病院を統合すると、大きな病院に誤嚥性肺炎の患者が押し寄せるケースがある、とか、中途半端な急性期病院は診療圏が3~5km程度で、それがどんどん小さくなっていく、という、示唆に富む話が出ています。

どうアクションするか考える

データと現場の実情とを照らし合わせて、どうアクションするか考えよう、という本だと思います。

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