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マーブルの海へ

夜行バスの揺れが心地いい。映画を見よう、消灯したらラジオを聴こうなんて意気込んでいたのに、叶わなかった。目的地を想像して目を閉じたかったのに、落ちるように眠ってしまった。目を開けて慌てて下車したら、淡い桃色のマニキュアが剥がれた。

赤色のマニキュアを塗った手は滑稽で、理想とはかけ離れている。短い指と黄色人種であることを叩きつけられる肌の色に赤色は浮いて見えた。淡い桃色のマニキュアを塗った手は、それを待ち望んでいたかのように馴染んだ。目立たないがそれでいいんだと思い込むようにした。

帰り際のハイタッチとか、人混みで腕を引いてくれたこととか、そんな中のこっち来てとか、ひとつひとつ鮮明に思い出してにやけちゃう。

童顔には跳ね上げラインが似合うみたい。跳ね上げラインを描いた日はやけにバイト終わりの缶ハイボールが身体中に染み渡る。駅までの道中に誰かに電話したくなるし、立ち飲み屋に入りたくなるし、ホテル街のピカピカしたネオンの中弾き語りしている青年の前で立ち止まりたくなる。青年が「恋はマーブルの海へ」を歌うから冷たい冬の風さえも心地よく感じてしまう。いつの間にか24時になってたよ。

お酒飲んだら頭が回るね。普段どう言語化しようか悩んでいる日常も、どんどん打ち込んでいける。この指が勝手に動く感覚幸せだね。

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