ICT教育を語るに外せない費用対効果への意識
「教育」と「費用対効果」については触れてはいけない部分かもしれません。そもそも教育はお金がかからないもの、教育であまりお金の話をしてはいけない。そんな暗黙の了解が存在しています。その理由については、また別の機会に述べることにしますが、今回はICT教育の導入が進んできている現状の中で、導入したツールに対しての費用対効果について考えていこうと思います。
なぜICT教育と費用対効果について書こうと思ったか
まず、なぜICT教育に関して費用対効果を述べようか思ったのかというと、やはりICT端末やアプリ等のツールの導入にはお金がかかることが挙げられます。文科省が鋭意活動中のGIGAスクール構想では、一人1台のタブレットPCの予算として4.5万円が支給されます。また、その端末に載せる保守や学習ツール等を入れるとさらに+1万円、+2万円と上乗せされていきます。
従来の学習では、参考書やワークが一冊400~600円の教科数分しかかかってませんでしたから、ICTツールの導入が起こっている現状は、教育業界においてお金の流れや仕組み自体そのものが大幅に変わってきたと言わざるおえません。
そうなるとやはり普通の感覚として、「これだけお金を出したんだから、どう変わるかを見せて!」と言いたくなると思います。そんな声が予想される中でICTツールを導入したくても最後の踏ん切りがつかず躊躇する学校は少なくないと思います。このような現状をみた上で、どう見せたら・どんな活用をしたら採算が取れるか、を中心に書いていくことで、少しでも導入後どのように活用すべきか、もしくは上記の理由から導入を躊躇している学校の一助となればと思い整理していこうと思いました。
まずは、費用対効果が高いと言える状況がどんなものなのかを述べていきます。
1:一番の理想は学習効果のUPが見えること・生徒が実感できること
言うまでもなく、これまで以上の学習効果のUPを得られればそれなりの費用対効果は感じることでしょう。もちろん導入するコストに応じて、リターンとしての大きさは変わるでしょう。しかし、600円の教材をやめて、3000円のアプリを導入したからには5倍の値段がかかっているから、生徒の理解力も5倍を期待する、というのは現実的ではありません。まずは導入しなかった場合と導入した場合で理解力を測る小テストや定期考査で全体感としてプラスの方向に傾向として見えていればよしと言えるでしょう。
2:学習効果の向上と同じくらい使う頻度や学習量に変化があることも重要
しかし、学習効果が上がったと言える一方で、もしかしたら今回のテストの作りが少し優しかった可能性もありますし、そもそもそのテスト自体が生徒自身の未来に直結して繋がっているかといえば必ずしもそうではない場合もあると思います。そうした場合に仮にテストの点数が上がったとしても、、という部分もあると思います。何が言いたいかというと、厳密に何を持って学習効果が上がったか、というのは正直かなり正確にやる必要があり、ほとんどの学校や先生がそれを実行するのは時間的制約や専門的知見が必要になり、難しいです。
そこで、費用対効果の第二ポイントとして、ICTの導入によって、モチベーションの変化が「学習量」と「学習頻度」への良い影響を及ぼすことが挙げられます。誰しも目の前にiPadが初めて渡された時は興奮します。新しいアプリが導入されたら興味を持ちます。スマホネイティブ世代の生徒にとっては、リアルタイムのオフライン授業よりもスマホでゴリゴリ演習を解く方が好きな生徒もいるかもしれません。
実際に私がサポートしている学校では、普段の授業では寝てしまうけど、こういうアプリを使うときには起きてそれなりにやっている。といった声も多く聞きます。
つまりモチベーションの変化がICTの導入によって起こります。そして、費用対効果を測定する一つの指標としては「学習量」や「利用頻度」にあります。どのように費用対効果を見るかは以下のポイントが重要になります。
1. 学習量:導入しなかった場合の通常学習量と導入後の数値化された学習量の比較
2. 利用頻度:想定される学習頻度と実際の学習頻度の比較
簡単にいえば、本来であれば、これくらい(〇〇時間)の学習が最低限のノルマとして課していたが、実際はそれを超えてこれだけ勉強している。ということがわかればいいと思います。
それだけではなく、いつも最低限のノルマを達成しない生徒が、ICTツールであれば、達成に近づくだけでもかなりの大きな成果ではないかと思います。
以上を踏まえて実践すべきこと
上述した内容として基本的に「学習の質」と「学習の量」をもとに費用対効果を算出するのが望ましいと思います。では、どのように二つを結果として良い方向に見せられるようにしていくのかということを述べていきます。
まずはとことん使い込む
正直これにつきます。様々なICTツールが存在し、どのサービスもとてもよく作り込まれています。一方で、完璧なツールも存在しません。(以下のブログ参照)
また、どんなに作り込まれたサービスであっても、先生のポリシーややり方がありますから、ある面においては使い勝手が良くても、違う面では必ずしもいいとは限りません。どの参考書がいいか理論と一緒です。結局は与えられたツールや選択したツールをとことん使い込むことが大事です。多少不器用であれ、円滑な活用ができなかったとしても、とことん時間と頻度を重ねていけば、学習効果が出ないサービスはないと思います。
まずは使いこみ、先生も生徒も保護者もこのサービスを使っているんだ、これからも使っていくんだという習慣化を作ることが非常に大事です。
注意喚起を多めにする工夫を
これは別のブログで詳しく記載しようと思いますが、ICTツールは熱しやすく冷めやすいという特徴を持っています。どんなに面白いゲームでも1年である程度飽きが来てしまうのと一緒です。
最初はICTツールを使い始めてテンションが上がっている生徒が多く見受けられると思いますが、慣れてしまえばただの苦しいワークと同じような認識を持ち始めます。最初は慣れるまでは、単調な使い方、シンプルな使い方で十分だとは思いますが、いつまでも単調というわけにはいかないです。
教材を変えてみるなり、教材を変えてみるなり、少しアレンジをくわえながら飽きさせない工夫が重要になります。
なんかちょっとやってみようかな、と思わせたら勝ち
この感覚まで持っていけたら生徒にとっては費用対効果を感じられたと言えるでしょう。ちょっとした隙間時間ができたから、どうせ暇だからちょっとやってみようかな、という感覚を持つようになるところまでくれば、生徒にとってそのツールへの一定の信頼を持っていることになります。そして、数値では見えませんがその時点で費用対効果を感じているという証明にもなります。
しかしながら、中長期的に活用を続けていくには、客観的な成果が必要になります。それは、学年の先生方にであり、保護者であり、学校全体に見せるためであります。
まずは生徒個々人がしっかりとツールを使っていくんだという信頼感を得られれば、学習量の担保に繋がり、結果として学習成果が上がる。そして、他の先生への説得、保護者への納得感に繋がる。このような流れが理想的ではないでしょうか。
まとめ
とにかくICTツールをなんらかのものが導入されている状況であるなら、まずはとことん使い込むことから始めるということが一番費用対効果を得られることに繋がります。正直、1年間という長いスパンで考えるべきだと思います。2, 3ヶ月使ってそこでやめてしまうと、成果が出ずに終わってしまい横ばいになってしまうこともあります。これが一番最悪のケースで、先生や生徒としては"ICTを使った感が出るものの、成果は出なかった"という感覚になってしまう場合があります。
また、使い続けることで見えてくるポイントがたくさんあります。もっとこういう風にできたらいいのに、こう使ってみたい、これは使わない方がいい。などです。これらの発見が2年目、3年目のより深いICTの活用が実現でき、結果的に費用対効果も更に感じるような設計ができるようになります。
ぜひまずは使い込んで学習の量と成果の両方を意識していってみてください。
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