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教師はAIにとって代わられるのか。教員とICTの関係性について

ICTツールを導入したらそれでいいんじゃないか。動画ができたからあとは勝手に生徒に課題として配信しておいたほうがいいんじゃないか。

そのような考え方はとても危険です。

私は、約3年間英語科の先生を対象に英会話学習アプリケーションの導入および利用のサポートをしてきました。いわゆるAIという技術を使ったサービスで、先生も大きな関心を持っていました。AIがあれば全て解決なんじゃないか。そう思う先生もいました。はっきり言っておきます。現時点で、そんなことは絶対ありません。

これまで、数百の学校の先生とおつきあいがありましたが、ICTツールを持続的にうまく使えている学校に共通していることは、

「教員とICTのすみ分けがはっきりとできていること」

です。シンプルに言えば、ICTには一定の評価を与えつつも期待しないことです。

大事なのは、先生にしかできないことは何か。そしてICTにしかできないことは何か。を理解した、もしくは定義した上で、その役割をお互いが信じていることがICTをうまく活用する秘訣です。

どういうことか。それは、ICTはあくまでツールであって、先生の代替には絶対にならないからです。少なくとも現時点では。

このエントリー記事でも記載しましたが、ICTの最大の強みであり、特徴なのは、

いつでも、どこでも、どれだけやってもいい

ところにあります。動画を観ようと思えば何十時間でもみて学習することができます。しかし、現状はどうか。

1時間の動画でさえ観るのは苦痛です。それができるのは、よっぽどストイックな生徒かよっぽど何かが差し迫っているか、のどちらかです。それでも全体の5%くらいだと思います。

つまり、ここで言えるのは、ICTはいつでもアクセスできるが、いつでも使われるわけではない。ということです。なぜ使わないのか、ということに関しては、やはり「モチベーション」がキーになるでしょう。

このモチベーションを管理してあげるのが、先生の最大の役割であると考えます。

そもそも、学習は楽しいと感じることもありますが、基本的には苦しいです。筋トレと同じようにテストで良い点数をとることや何かを覚えるには、それなりの努力が必要です。その過程は楽なことではありません。

しかし、ゴールに向かって進めるには、強烈にそのゴールを達成したいと思う気持ちがあるか、もしくは誰かが押し上げてあげるかのどちらかしかありません。後者が先生であったり、友達であったりするわけです。

ICTは正確です。すぐに答えを出してくれます。傾向を分析してくれます。とても便利です。しかし、人の心は動きません。

これが現状なのです。なので、何が必要なのか、というと「しっかりあなたのことを見ている」という意思表示が必要です。例えば、ある教科に置いてICTツールを導入して学習管理システムを用いて生徒の学力傾向が出たとします。その傾向が出ているねと生徒に伝えてあげる。もちろん生徒もその傾向を直に見ているのですが、先生に言われることで改めて自覚します。その上で、どのような学習をすれば良いのかを話し合う。ICTサービスによっては、学習方法までリコメンドをするようなサービスもありますが、表情の変化や学習態度まで事細かく生徒のことを把握しているのは先生だけです。

先生が素早く生徒の変化を最前線で察知してフォローしてあげることができれば、ICTツールを継続的に利用することに繋がり、結果的に学習効果の最大化が期待できます。

まとめると、理想的な棲み分けは以下になります。

・先生にしかできないこと:モチベーションのフォローと道しるべ
・ICTにしかできないこと:圧倒的な学習量や演習量の提供

いかがでしたでしょうか。もちろん将来的にはモチベーションまで事細かに分析してフォローまでしてくれるサービスが現れるかもしれません。それでも、人の心は動くのか、という点については私は懐疑的です。

人は人でしか動かないのではないか。

そういう仮説を持っています。ですので、当分は教員という仕事はなくならないでしょうし、今までとは役割は変わっていくでしょうが、むしろ教員でなければならない意味が増していくのだろうと感じています。

一方で、逆を言えば、圧倒的な学習量や演習量の確保はICTで供給できてしまうわけですから、そこに時間を割くのはナンセンスだと言えるのではないでしょうか。もちろん板書が好きな先生がいたり、講義型で教えることが大好きな先生もいるでしょう。しかし、本当に目の前の生徒一人一人が学習を最大化するために、どのような立ち回りをしなければいけないか。を真剣に考えれば、自ずと自分の役割とICTのあり方は見えてくるはずです。




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