「ENJOY!給食プロジェクト」
「ENJOY!給食プロジェクト」とは?
2024年2月から3月にかけて、福岡市東区にある小学校で「ENJOY!給食プロジェクト」を実施しました。
このプロジェクトは、福岡市で「食」や「食育」に携わる事業を手掛けているフードディレクター・本田淑子さん(PLANTE COOK)との共同事業。小学校に足を運び、5年生のクラスの給食時間を2人でサポートします。
【実施日程、対象】
・1月18日、19日、24日/2月1日、7日、14日、21日、28日/3月6日(合計9回)
・給食時間 12:10~12:55
・5年生3クラスに実施(1クラス×3回)
【活動内容】
1回目 「食を楽しもう!」
2回目 「みんなで考えよう!」
3回目 「楽しい時間を実現させよう!」
各回 ①クイズ ②お話 ③子どもたちの活動の3つのセットで実施
「ENJOY!給食プロジェクト」ってどんなことするの?
では、実際にどんなことをするのか? ある1日の様子をタイムスケジュールとともに紹介します。
11:30 八田小学校到着
教頭先生にごあいさつをして、給食をとる教室に移動します。八田小学校では普段は各教室で食事をとりますが、このプロジェクトでは特別に「家庭科準備室」をお借りしました。「普段過ごす教室から移動して食事することで、子どもたちに特別感を持ってもらう」というねらいもあります。
11:45 着替え、会場準備
机を拭いたりイスを出したり、必要な準備を進めます。2人で手早く動いて作業完了! その他、食事の時に使うトレイもきれいな状態にしておきます。
ちなみに、このトレイはプロジェクト実施のために特別に用意したもの。子どもたちに好きな柄を選んでもらい、楽しく食事してもらえる環境をつくりたいと思って持ち込みました。
11:50 給食準備室へ
同じ階にある給食準備室へ食事と食器を取りに行きます。献立にもよりますが、1人あたり1~2往復すれば運べる数。その代わり、1個あたりはけっこう重たい! 献立は事前に知らせてもらっています。
12:00 事前に配膳
食事がそろったら、本田さんと手分けをして配膳スタート。準備にかける時間を減らし、食事の時間をしっかり取りたいので私たちが配膳を担当することにしました。
12:10 4時間目終了
子どもたちが教室にやってくる時間です。手洗いを済ませた状態で、箸だけ持って移動。教室に着いたら座る席を確認して、トレイを持って給食を取りに来ます。
この間も配膳を続けながら、子どもたちの質問に答えたり早く取りに来るよう呼び掛けたり。ワイワイ、ガヤガヤ。教室がたちまちにぎやかになるなか、時間どおりに配膳できるよう誘導します。
12:20 趣旨説明「いただきます」
「ENJOY!給食プロジェクト」についてあらためて紹介し、「いただきます」の合図で昼食をスタートします。
ここでポイントなのが、食べたい量を自分で調整してもらうこと。
注がれた量が「多すぎる」と思ったら、自分が食べられる量まで減らしに来てもらいます。反対に、「もっと食べたい」と思う子にはおかわりを呼び掛けます。
結果、食べ残しが減らせるのでフードロスの削減に。何より、子どもたちが「自分に合った量」をしっかりと見極められるようになります。
白ご飯は早い段階で空っぽに!
うどんが大人気で、おかわり希望者が殺到!
野菜もきれいになくなりました。
おかわりの列が落ち着いたら、私たちも生徒に混ざって食事タイム。
また、食事中には以下のレクリエーションも実施しました。
●しりとり
「食べ物」や「動物」など、テーマに沿ってしりとりをしながら、班ごとに会話を楽しみます。
●クイズ
食事の時間後半で、担当の子が考えてきたクイズを出題。クラスのみんながひとつになって楽しめる企画です。
このほか、この日は子どもたちのリクエストで、当番の子が選んだ音楽をかけました。
●本田さんのお話
子どもたちに「よっちゃん」と親しまれている本田さん。「食が豊かな人生をつくる」というメッセージを伝えてくださいました。
12:48 ごちそうさま、片付け
みんなで「ごちそうさま」をした後、前の教壇まで食器を持って来てもらいます。
班ごとに重ねて持って来てくれるので、片付けは簡単。この日は食べ残しもありませんでした。
12:50 退室
手伝いしてくれる生徒を募り、給食室へ食器を戻します。
その後は洗い物や掃除を済ませて、無事に給食時間が終了!
「ENJOY!給食プロジェクト」の感想
給食後、子どもたち感想を聞いてみると「おいしかった!」「楽しかった」と満足そうな表情。「もっと食べたかった」と話す子もいました。
片付け後は、お楽しみの昼休み。「ありがとうございました」「またね~!」と手を振りながら教室を後にしました。
給食の時間、生徒の班に混ざって食事をしていた5年2組の担任の先生。
「このプロジェクトが始まってから、給食を残す子がほとんどいなくなったのに驚きました。うちのクラスは偏食の子が多く、どうしたら残飯を減らせるか悩んでいましたが、今ではみんなが自分に合った量をしっかりと食べています。何より、子どもたちがこんなに楽しそうにしている様子を見て私もうれしくなりました」
と話してくださいました。
また、一緒にプロジェクトを進めてくださった本田さんは、みんなの前でもたくさんの「大切なこと」について教えてくださいました。
「食事は私たちの人生をゆたかにしてくれます。また、それに加えて私が伝えたいと思っていたのは【考える力】や【楽しむ力】の大切さでした。
大人になると、周囲の環境に適応しながら「自分」という存在を保っていかなければなりません。そのためには、自分の力でしっかりと考え、目の前の出来事を楽しくする力が欠かせない。そんな想いから『しりとり』や『クイズ』など子どもたちが主体的に取り組める“遊び”を取り入れ、自分たちで楽しむことの重要性を子どもたちに体感してほしかったんです。
また、こうして小学校で子どもたちとふれあえるのは、企業にとってはかなり貴重なチャンスです。小学校教諭の経験と人脈をもつ宮崎さんだからこそ実現できるプロジェクトだと思いました」(本田さん)
こうしてたくさんの良い感想をいただけると、このプロジェクトを企画して本当に良かったと心から実感できます。
「ENJOY!給食プロジェクト」背景と課題
小学校と社会(企業)のつながりを築き、働く先生たちの「時間」を生み出すためにできることは何か——。そんな想いからスタートした企画のひとつがこのプロジェクトでした。
1日がスタートすると、朝から夕方まで大忙しの小学校の先生たち。給食の時間も例外ではありません。
公立の小学校では、給食の準備から片付けまでをサポートするのも担任の先生の仕事です。配膳を子どもたちが担当する場合は、エプロンに着替えさせて給食準備室へ移動。その間、教室を片付けさせて全員分の配膳を済ませ、食事をして昼休みが始まるまでに片づけを済ませる必要があります。
準備から片付けまでに使える時間は、たったの50分。
想像してみてください。昼休みが1時間あったとしても、外食をすると移動だけでもかなり時間がかかります。
一方、小学校の担任の先生の多くは、1人で約20~30名の生徒に目を配りながら時間内に給食を終えなければなりません。(※時間や人数など給食時の状況は学校により多少異なります)
しかも、自分の食事時間を短縮して、宿題のチェックや連絡事項のまとめに時間を費やしている先生たちもけっこういて……。まさに、息をつく間もない状態なんです。
本来ならば、給食の時間は生徒たちとコミュニケーションをとったり、食事の大切さを伝えたりするための時間であるべきです。
ところが、さまざまな業務が山積してとてもじゃないけどそんな時間の余裕はない。そんな状況を少しでも改善したいと思い、授業のサポート役としてお世話になっていた八田小学校の校長先生に相談。縁あってつながったフードディレクターの本田さんにも協力をあおぎ、企画がスタートしました。
「ENJOY!給食プロジェクト」実施後の変化は?
最後に、このプロジェクトで起こった変化と結果を「ビフォー&アフター」形式で端的にまとめてみました。
<先生たち>「ゆっくり食べてもいいんですか?」
・いつもは配膳や管理に大忙し!
→主導を外部に委託することで、自分の手が空く =時間ができる!
→子どもたちと会話しながら食事できる =コミュニケーションがとれる!
<子どもたち>「おいしかった!」「ごちそうさま」の笑顔
・先生以外の大人が来る!
→程よい緊張感、新鮮さ
・食べる場所がいつもと変わる
→意識と行動の変化、楽しみ
・配膳の方法や座り方がいつもと違う
→団らんの楽しさ&喜びを実感。
→笑顔とコミュニケーションが生まれる
→食欲が増進し、偏食が減少。健康な体づくりに◎
・好きな量を選べる
→1人ひとりに合ったボリュームを自己管理できるように
→フードロス削減
<パートナー企業(今回は本田さん)>「子どもたちとふれあえる貴重な機会」
・たくさんの子どもたちの実情を知ることができる
→事業に関する発見、気づき、アイデアにつながる
・メッセージを直接伝えられる
→PRや広報、啓蒙の機会に
・担任先生のサポートができる
→社会課題の解決に寄与できる!
こうして、先生(学校)と社会(企業)、そして子どもたちが「みんな幸せ」な状態をつくることこそ、小学校の現場を知る私にしか達成できない使命だと考えています。
今回はフードディレクターの本田さんと給食の時間をサポートしましたが、担任の先生へのサポートが必要なシーンは、本当にまだまだたくさんあります。
私たちの活動に興味を持ってくださる企業や団体があれば、ぜひいっしょに小学校に足を運びましょう。一人でも多くの方に小学校の「今」を伝え、これからの未来をつくる教育の現場をサポートしていきたいと思います。