オンライン日本語教師の可能性|世界の日本語教師たち Vol.5(後編)|沼澤あつこさん
このedukadoページでは「世界の日本語教師たち」というテーマで、毎週世界を股にかけて日本語を教える先生たちの現場のリアルな声を取材した記事を配信したいと思います。
第5回では、”オンライン日本語教師の可能性”と題してお届けします。
今回の日本語教師:沼澤 あつこさん
山形県出身。大学卒業後は、貿易会社に勤める。外国人の彼氏と付き合っていた時、海外で仕事を見つけるためにオンラインで日本語教師をはじめる。その後タイの日本語学校に3年勤め、再びオンラインを専門とした日本語教師として活躍。
インタビュアー:Jun
埼玉県在住のフラガール。国際観光専攻。趣味は海外ドラマとJ-popアイドル観賞。観光学を通じて世界を学ぶうちに、日本文化について深く知りたいと思いedukadoへインターンシップとして参画。現在はPRを担当。多くの日本語教師へ取材する傍ら、日本語教育を取り巻く環境を改善すべく活動中。
学校を辞めたら収入が2倍になった
日本語学校は本当にお給料が安いと思います。学校で働いている時は、将来に不安しかありませんでした。そもそも日本語の先生はフリーランスが少ないです。ボランティアか学校で教えるイメージがあります。
—値段と実力と経験がものをいう
もちろん、ただオンラインに登録するだけでは生徒は来ません。経験が少なかったり、自己紹介動画がいまいちだったり、値段と実力があってないと、必然的に生徒もつきません。加えて、今回のコロナの影響でオンラインの先生は急増しました。ですので、以前より競争が厳しくなっているなと感じています。
プラットフォームはitalki(アイトーキ)を使っています。ここではいろいろな言語を教える先生がいて、時間・値段・コースの全てを自分で設定することができます。15%のコミッションがとられるので、自分でサイトを作って授業をすることも考えましたが、何よりお金の管理が楽です。また、集客力も強いのでこのサイトを利用しています。
—ブランディングが重要になる
レッスンの経験数が多いと有利ですね。わたしは既に1,600回ほどあり、レビューもたくさんあります。また、プロモーションビデオもカメラマンの友だちに作ってもらいました。生徒の中には"あのビデオが良かったから選んだ"と言ってくれる人もいます。手を抜かないことが重要です。
—直接法ではなく英語を使いながら教える
初級の授業では英語も使います。自分の英語力も伸びるので、すごくおすすめです。逆に、学校で教えていた時は、直接法で教えていました。
実際、英語力は必要だと思います。なぜならitalkiのサイトはほとんどが英語だからです。また、生徒の需要は初級の方が多いので、英語ができた方が幅は広がります。ただ、自分のブランディングを上級者向けのみにして、"日本語しか使わない授業"をコアにするなら授業に英語は必要無くなりますね。
—24時間授業の需要がある
コロナで仕事を失っている人が多い中、私はもともとオンラインで教えていたこともあり、仕事が増え、最高月収を更新しました!(これまでお給料が安いところでしか働いたことがなかった、ということもありますが。)今は、日本に行きたくても日本に行けない外国人が沢山いると思います。ですので、行けるようになった時のために日本語を勉強しようという生徒も増えるのではないかと考えています。
時差があるので24時間いつでも生徒がいます。そこがオンラインの良さです。仮に違う国に行っても、常に新しい生徒を見つけることができます。
—学校に通って、日本語を勉強しない!?
日本語の先生も世界をもっと広い視野で見た方がいいと思います。今の学習者はむしろ学校で勉強しないですね。日本語学校は大きな街にしかなく、行かなければいけない時間が決まっています。趣味でやるような人は、自分できちんと予約できるのでitalkiは欧米に需要が多いと感じています。
—生徒数に対して日本語教師はまだ不足している
日本語は学習者に対して先生がまだ少ない方です。英語、フランス語、スペイン語、中国語などは、先生が多すぎて募集していないくらいなので、他の外国語に比べて日本語はまだ需要が多いです。
現地学校の教育方針をオンラインに活かす
ー授業のメインはコミュニケーション
授業では、文字を見せずに絵だけを見て話させる、チャットに書く文字も最小限にしています。タイで勤めていた学校が会話の練習中は文字を見せない方針でした。本を読むことは自分でもできますよね。話す練習がたくさんできるように、ワークシートを使って、コミュニケーションをメインに授業をしています。
結局、"このテキストをここまでやりました!"というのと、"ここまで習った文法を全て使いこなせます"というのは全く違う話です。既習者の方はどこまで勉強したかをアピールするばかりで、実際には話せないことが多いです。
ー復習するだけ語学力は伸びる
タイで働いた学校が復習をすごく大事にするやり方でした。せっかく学んだのに忘れてしまったら勿体ないので、ウォーミングアップで遡った文法を使った会話をしたり、既習語彙を新しい文型と組み合わせたりして、蓄積していくことを大切にしています。
生徒は大人が多く、プライドがある方も多いです。中には自分はもう2年も勉強しているから、なんでレッスン5から始めなくちゃいけないのかと言う人もいます。教える立場として主張しなければいけない点と、生徒に寄り添う部分のバランスが大事になってきます。ですので、1番教えやすいのは復習を積極的にやる人ですね!
ーどの方法が役に立つかは教師次第
日本語を”何年教えているか”よりも”どんな学校で教えていたのか”によって先生も大きく変わると思います。それがオンラインで使えるのか、生徒が読み書きだけではなく喋れるように教えられるのかは、先生の教え方次第です。
—休む時間を作るのも自分次第
授業の予約枠をオープンにしておけば沢山レッスンが入るし、お金稼ぐことができます!一方で、友だちと過ごす時間、映画を見る時間、自分の勉強の時間が何もない…という状況になることもありました。ですので、自分で生活をコントロールする力が必要になります。
—オンライン教師はどこでもOK
生活するのに、私は海外の方が合っているなと感じています。ビザのことを考えると、日本に帰った方が楽なのかもしれませんが、私は海外生活が好きなので、帰るつもりはありません。昨年、久しぶりに日本に帰ったとき、ラッシュの時間にスーツケースを持って電車に乗るのが怖かったです。タイでは電車内で誰もイライラしていません。
オンライン教師はインターネットとATMがあればどこでも生きていけるので、いろんな国で生活したいですね。
—今後の展望
今はオンラインで教えているだけなので、例えばYoutubeに動画をアップしたり、居酒屋やバーで教えたりとか新しいことに挑戦してみたいです。
あとは、オンラインで教えたい日本語の先生に対してコンサルティングもして行けたらいいなと感じています。どうやったらいいのかわからないから踏み出せない人が沢山いますよね。お金の回収方法や生徒の集め方などについてセミナーをやってみたいです。
※Youtubeチャンネルをスタートされました!
とても役に立つ情報満載です。是非ご覧ください!
〜記者から一言〜
日本語教師の給与体系や地位の向上については、これまでのインタビュー取り上げてきたとおりです。しかし今回インタビューを行い、日本語教師でも既存の働き方以外の可能性があることがわかりました。一方で、やはり世界で見たときに日本語学習者はアジア圏が最も多く、今までの学校教育が根付いていることも確かです。”オンラインの方が稼げるから”といって教師がシフトチェンジしても生徒がついてこなければ意味がありません。今後はオンライン教育を新たな地域でも普及させることが課題であると考えます。
インタビュー・文:Jun Sakashima
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