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【読書感想】自律心をもった子に育てる【子育て】

 元麹町中学校の工藤勇一校長の2冊めの著書であり、教員という立場を通しての学びを、子育てという目線で描いています。
 教員という立場でも、子を育てる保護者という立場でも、自律した子に育てるために大変勉強になる1冊でした。

最上位目標に立ち返る

 

 本書で訴えていることの1つは、最上位目標に立ち返ることです。
 どういうことか。例えば、家庭で想定されるこんな場面を想定してみます。

 夏休みの宿題が出ているのに、自分から何もやろうとしない。気づけば夏休みも終わりに近づいていて、最後にガミガミと怒って宿題をやらせて、なんとか終わらせた。

 私の十数年前も経験していた状況です。「宿題を終わらせる」という目的を達しなければならないのに、子供が全く動かないから、親が「叱る」という手段を用いてやらせる。ここで考えなければならないことは、そもそも「宿題を終える」という目標なのか?ということです。本来は、「学力を高める」という目的達成のための手段が「宿題」であるはずです。
 その宿題で得られる学力がもう十分に身についているのであれば、その子にはその宿題の意味がないといえるでしょう。目的と手段を混同して叱ることで、子供はより学ぶことが嫌になってしまうかもしれない、その弊害の方が長い目で見ると大きいかもしれないのです。
 ではどうするか?
 子供が宿題の意義を感じていないし行わいのではあれば、もういっそのことやらないでいいか、と腹をくくることも1つの手だと思います。学校に提出するという体裁を気にするのであれば、宿題代行サービスも手です。(教員という立場でこれを言うのもどうかと思いますが)
 もしくは、宿題の意義をしっかりと話し合うということです。子供が十分な学力が身についているとは言えばければ、「宿題をやることで、今までの復習をしていこう。」とか。その子が学習そのものへの意味が見いだせないのであれば、「学習をすることは、自分の可能性を広げることだよ。将来なりたいことができたときに、それになれる可能性を広げておきたいよね。」とか。いつ学習すればいいのか分からないのであれば、「一緒に学習計画を立ててみよう。」とか。親子でしっかり対話をしていき、最後は子供が自分で決める。そういった対話の中で、子供が宿題をやってみようと思える環境を整えることが大切だと思います。

 もう1つこんな場面を想像してみます。

 子供の部屋が散らかりっぱなし。片付けなさい!と激怒することで片付けさせたが、またしばらく立ったらまた散らかっている…

 「片付けること」は目標か手段か。これは人によって考え方が異なると思いますが、もし目的であると考えるならば、そもそもなぜ片付けをする必要があるのでしょう。
 友達がたくさん遊びに来るから、部屋が汚いまんまだと友達を呼べない。そういった状況があったら、きっとその子も片付けをするのではないでしょうか。普段はいろいろ出っぱなしの方が、その子にとって生活や遊びの上で効率が良いのかもしれない。そこを親の片付けが当たり前の感覚でいくと、子供の考える力を奪うことに繋がってしまうかもしれない、ということです。
 そこも、子供の感覚と親の感覚のすり合わせのために、対話をし、家庭の方針を定めていくといいでしょう。最後は子供が決めることです。

人のせいにしない、自分ごととして考える


 本書では教育の上位目標を「自律すること」と捉えています。自律するとは、自分で考え、判断し、実行すること。そのためには、人のせいにしない、自分ごととして考えることが大切であるということです。
 【最上位目標に立ち返る】でも触れたように、最後は子供が自分で決めることが大切です。
 例えば、中学校3年生でこれから進路を決めていくという場面を想像しましょう。

 子供は、部活動で熱中した陸上をより深く追求するために陸上部が強い高校への進学を希望している。親としては将来のことも考え、できるだけ偏差値の高い高校へ進学してもらいたいと考えている。

 偏差値の高い高校へ行き、良い大学や良い就職についてほしい、これも1つの親心だと思います。親としても子供のことを切に願っての思いです。
 親の希望を押し通して、偏差値の高い高校に行ったとしましょう。その後大学へも無事進学できたとしましょう。それでもその子の中に、陸上への思いがきっとくすぶり続けます。もっと頑張りたかった、もっと陸上に時間を費やしたかった、そんな思いがその後もぐるぐる回り続けるかもしれない。それは、その子にとって幸せといえるでしょうか。そして今幸せでない状況をどう捉えるか、と考えると、親に向かってしまうのです。
 親は本当に世界で誰よりも、子供の幸せを願っている。それなのに、なぜこんな双方ともに不幸な状況が生まれるのか…
 自分で決める人生だからこそ、主体的考える。たとえ失敗があったとしても、それも1つの学びであると、前向きに捉えることができるのでしょう。

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