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【イギリスの教育制度(2)】公立vs私立、交わらない2つの教育ルート、最初の学校選択が鍵に🏫

【イギリスの教育制度(1)】概要編で少し頭出しした通り、イギリス教育制度の枠組みとしては試験に比重を置いたシンプルな設計であるものの、学校の運営母体の種類が多く、しかも各運営母体ごとに異なる教育方針・入学基準等を設けているため、学校間の比較が難しく「良い学校」選びが難しくなっています。これは外国人である私達だけに当てはまる事ではなく、実際のところ、イギリス社会において教育コンサルタント(各子供にあう学校を探し受験アドバイスを行う)が1つの職業として成り立っていることからも、現地の方々にとっても同様だということが伺いしれます。ではここで、もう少し、公立と私立の違いを掘り下げていきたいと思います。

1)上の学校への進学タイミング

まず、下図の通り、驚いたことに、イギリスにおいては公立と私立とで学校種別(小学校、中学校等の運営区分)の区切りの学年が異なっています。例えば、公立のPrimary school(小学校)はyear1(任意でreceptionという準備学年からスタートも可能)からyear6までとなっている一方で、私立の小学校に相当するPreparatory Junior schoolにおいてはyear3からyear8までが対象学年となっているのです。

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では、例えば、小学校で公立に入った子供が、途中で私立に入りたくなった場合、どうなるのでしょうか。

実はイギリスの私立学校は、受験入学のEntry pointを多く設けており、学校によって異なるのですが、多くのPreparatory Junior schoolにおいて、year3(7+, year3から、すなわち7歳になった9月入学を目指すお受験という意味で7歳以上セブンプラスと言います), year4(8+), year6(10+), year7(11+)からの入学を可能としていたりします。どのEntry pointで何人入学を許可するかについても学校毎に異なるため、どの学校にどのタイミングで受験するかについても保護者(もしくは子供本人)はしっかり吟味し、戦略を持つ必要があります。

つまり、一旦公立の小学校に入学したからと言って、制度としては、途中から私立ルートに変更することができない訳ではありません。しかしながら、最終学年でもないタイミングでは、通っている学校からのお受験サポートは殆どなく、そんな中で私立受験を独自に目指すのは相当なエネルギーが要ることとなります。実際に、私の周辺では、お受験でyear7(11+)から私立ルートに移る子供は少数いるものの、その他のタイミングで公立から私立ルートに移る子供は殆どいない状況です。

2)カリキュラムの進捗度と幅

また、イギリスにおいてはNational Curriculum (日本の学習指導要領に相当)に沿って各学年が学習を進めていくよう定められていますが、一般的に私立では前倒しで学習を進める傾向にあり、例えばyear6のお受験の段階で私立は公立よりも2年も学習が先に進んでいると言われています。

加えて、その違いは学習の速度だけにあるだけではなく、何を学習するにかにも違いがあるのが一般的です。英語や数学のような基礎科目以外の選択科目において、やはり私立の方が選択肢が多く、例えば、私立では第2•第3外国語として、ラテン語•フランス語•スペイン語•中国語•ロシア語•ドイツ語等が選べますが、公立ではフランス語もしくはスペイン語と選択肢が非常に少ないのが現状です。

こういった事情により、公立から私立の中学への受験を目指す場合、この2年の学習進捗の違いを何らかの形で埋める必要があり、目指す学校の受験に詳しいチューター(家庭教師)を雇って、放課後独自に、膨大な時間とお金をかけて学習の遅れを補っていくこととなるのです。

3)交わらない2つの教育ルート

このように、【イギリスの教育制度(1)】概要編で述べた通り、イギリスにおいて、教育の制度設計としては平等を目指してはいるものの、上の学校への進学タイミングや学習進捗が異なることで、公立⇄私立間のルート移動が難しくなっている状況にあると言えます。例えば、一旦小学校で公立に入学した場合、そのまま公立の中学校(Secondary schoolもしくはGrammar school)へ、そして私立に入るとそのまま系列のSenior schoolもしくはPublic schoolと呼ばれる超名門校へと進学する子供が大多数を占め、結果として公立•私立の双方のルートが交わることはあまりないのです。

つまり、イギリスでの子供の教育においては、最初の学校選択が鍵となります。

小学校(もしくは、それよりも前のPre-Preparatory school やNursary)に進学の際に、公立vs私立どちらのルートが良いのか、そしてどの学校が子供にとって良いのか、どうやったらその目指す学校に入れるのか、等を巡って、親子での壮絶な奮闘を繰り広げていくことになるのです。

次回は、このような交わらない公立•私立の2つの教育枠組みの二極化と、その結果として、イギリスの教育を平均値では語れなくなっている現状について、お伝えしていきたいと思います。




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