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熱狂しながら、面白く生きているおっちゃんになりたい〜スタッフインタビュー:Edo代表 関口祐太〜

EdoNewSchoolは、岐阜県飛騨市にある中高生向けの探究塾です。「やってみたい」を見つけ「やれる!」と思える子に、をコンセプトに自身の興味を向き合える環境を提供すべく、2023年春の開校に向けて準備しています。
今回は、スタッフインタビューをお届け。運営元の株式会社Edo代表に、お話をお伺いしました。

EdoNewSchoolは、岐阜県飛騨市にある中高生向けの探究塾です。「やってみたい」を見つけ「やれる!」と思える子に、をコンセプトに自身の興味と向き合える環境を提供すべく、2023年春の開校に向けて準備しています。

今回は、スタッフインタビューをお届け。運営元の株式会社Edo代表に、お話をお伺いしました。

熱くなれる何かがある人生は、きっと面白い。

だけど、自分の人生の中で、熱くなれたものってあっただろうか?そして、これからも出会えるのだろうか?

そう不安になって、「手に入らないなら最初から諦めてしまおう」と思う人は、きっと私だけじゃない気がする。

だけど、熱狂するものは、いつからだって見つけられる。株式会社Edo代表、関口さんのお話を聞いていると、そんなことを感じます。

「熱狂しながら、生きていきたいんだよね」

真っ直ぐな目で伝えてくれた、その言葉を聞いたとき。初めに湧きあがってきた感情は、
「羨ましい」でした。

関口さん自身は、どう熱狂するものと出会ってきたのか。「羨ましい」が「自分にもできる」に変わるような、そんなお話をお聞きしました。

絶対この仕事やりたい!がない。家業を継いで、立ちはだかった壁

「今でこそ、熱狂したいってよく言ってるんだけど、学生時代は、ものすごく熱中してるものって特になくて。どこにでもいるような、目立った悪さをするわけでもない男の子だったかな」

「就活も、別にやる気があるわけではなくて。ただ、昔からじいちゃんっこだったから、じいちゃんがやってきた仕事は継ぎたいかなあと思って、家業を手伝うことにして」

関口さんの家業は、学校教材・備品の販売事業を営む「関口教材店」。

家族みんなで仕事をしていたため、小さい頃から、お祖父さんとともに教材配達に行くことも多く、家業にはお祖父さんとの思い出が詰まっていた。

「自分が働いている姿をじいちゃんに見せたい」と、大学卒業後は、すでに引退していたお祖父さんに代わって、父・母・祖母とともに、関口教材店で働くことに。

しかし、実際に仕事に就いてからは、自分のやりたいことを上手く伝えられず、悶々とすることが増えていったんだとか。

「帳簿の付け方とか、お客さんへの対応の仕方とか。自分なりに、これはもっとこうした方がいいんじゃないかって思うことがあって。だけど、親父にしてみたら『何も知らないのに、わかったようなこというな』と思うわけで」

「数年間は、それでもなんとかやっていたんだけど。ある日、溜まりに溜まった感情が爆発して、家族とめちゃくちゃ喧嘩してしまって。そこから、どんどん苦しくなっていった」

ふと気がつくと、悲しくもないのに涙が出る。そんな時期もあったのだという。

「奥さんに泣いているところを見せたくないから、川沿いの土手に座って、心を落ち着かせてから家に帰ってたな。ぼーっと川を見ながら『俺はこのままでいいんだろうか』とか『これから人生どうするんだろう』ってよく考えてた」

コーチングと出会い、熱を求めて行動するように

仕事や自分の人生について、何か変えたいけれど、どうしたらいいのか分からない。

そう悩んでいたときに出会ったのが、コーチングだった。

「とある人に、『関口くんこれ見てみたら?』って、コーチングの本とDVDを渡されて。読んでみると、『本当は、どうなったらいい?』って問いかけられる文章があった。それを読んだときに、『こういう会社で、こういう人生だったら…』って、どんどん想いが溢れてきて」

「コーチングや、脳科学、心理学について知れば知るほど、すごくしっくりくる内容だったし、自分でも学んでみたいって思うようになったかな」

東京のスクールに1年半ほど通い、コーチングを学ぶことに。

そこで、思考の型、コミュニケーション手法などについて知っていくうちに、自分自身の悩みについても客観的に考えられるようになり、気持ちがかなり楽になったという。

さらに、自分がどう生きたいのか。何を大切にしたいのか。自分の人生について、考える時間も増えていった。

「今までの人生の中で一番気持ち的に下がっていたときに、コーチングと出会って、学んで。その頃からかな、”熱をもって生きたい”っていう気持ちが、高まってきたのは」

熱をもって生きるには、どうしたらいいのだろう。

関口教材店で働きつつ、経営者やアスリートに向けてコーチングの仕事をしたり、コーチングを活かしたワークショップを飛騨で開催してみたり。

“熱”を求めて、色んな行動をしているうちに、「こういうこともできる?」「これ手伝ってくれない?」と、声をかけられることが多くなったという。

「ある日、出身高校の先生から、職員研修の場づくりについて相談をもらって。そこから、研修をやらせてもらうことになって、翌年からは、高校生の探究学習コーディネーターも務めることになった」

「正直、自分が教育に携わるようになるなんて、思ってもいなかったな。一つひとつ、任されたことを頑張っていると、予想もしなかった未来につながることもあるんだなあって」

自分が本当にやりたいことがわからなくても。

まずは行動してみることで、見えてくるものがあったり、思わぬ出会いが生まれたりするのかもしれない。

子どもの成長に携わりたい。

2016年に始まった、探究学習のコーディネート業務。この経験が、関口さんにとって大きなターニングポイントとなる。

「高校生と一緒に、地域の課題解決につながるプロジェクトを、1年間を通じて取り組んでいくっていう内容で」

プロジェクトには、約10人の高校生が集まった。

そのなかには、ひときわ小さな声で下を向いて話す、消極的なタイプの男の子がいた。

関口さんは、有志のプロジェクトに彼がどうして参加したのか気になり、直接聞いてみたという。

「そしたら、『お父さんが観光課に勤めていて、小さい頃から地域のイベントで仕事をする姿をよく見ていて。まちのために頑張るっていいなと思ったし、将来は飛騨市役所に入りたくて。だけど、人前で話すのが苦手だから、それを克服したくて参加した』って言ってて」

「それを聞いて、なんて純粋なんだろうと思って。力になりたいなって、かなりグッときたのは今でもよく覚えているなあ」

その男の子は、地域の人とのコミュニケーションに苦戦しつつも、人と関わることから逃げず、アクションをとり続けた。

関口さんも、時にはどうしたらいいか一緒になって悩み、時にはアドバイスをしながら、彼がどんどん成長していく姿を見守ってきた。

そして迎えた、プロジェクト最終日。

地域の方、全校生徒合わせて約500人の前で、一年の成果を次々と発表していく高校生メンバーたち。

彼の順番が、やってきた。

堂々と話す彼の姿は、プロジェクト初日からは見違えるほどだったという。

「その子が『人前でこんな風に話すなんてできないと思っていたけど、できるようになった。地域の課題を解決することは、自分の課題を解決することにもつながったんだ』って言ってくれて」

「ステージ袖で見てて、これはやべえな…ってめちゃくちゃ感動して。そのときのことを思い出すと、今でも泣けちゃうんだけど。そのときに、今までは大人の伴走を仕事としてやってきたけど、若い子の成長に関わる仕事ってすごくいいなって。自分の熱もめちゃくちゃ上がるって気がついたんだ」

当時のことを、今まさに体感したかのように、熱を持って話してくれる関口さん。

このときこそ、関口さんが求めていた”熱”を見つけた瞬間だったんだろう。

「しかも、高校生だけの話じゃなくて。プロジェクトに関わっていたある地域の人は『初めて高校が自分の地域のものだったって思えたし、その成長に自分も関われたことがうれしかった』って言ってて。めちゃくちゃ地域の人も感動しとるやん、って」

「若い子の成長に地域みんなで関わることは、まちっていうコミュニティの活力にも関わるんだなって。高校生にとっても、このまちが帰ってくる場所だって思うきっかけになりうると思ったし、こんな一挙両得なことはないなって思った」

”進化版”面白いことができる場所をつくろう

人が育つ地域をつくるためには、少人数ではなく、組織でやった方がいいはず。民間事業者だからこそできることも、沢山あるのではないか。

そんな想いから、2019年に関口さんは株式会社Edoを立ち上げる。

学校・地域が一体となった教育を目指す「飛騨市学園構想」や、大人の学び場「飛騨市民カレッジ」「文部科学省 コミュニティ・スクールフォーラム」「企業のSDGs研修」など。

教育や学びを通じた持続可能な社会に向けて、さまざまなプロジェクトに関わってきた。

「この3年間、子どもたちの成長のためにやるべきことを進めてきたんだけど。気づいたら、仕組みづくりやら構想設計やら、大人の支援をする機会の方が圧倒的に増えていて」

「でも俺は、原点として、子どもたちの成長に感動してる。ここの部分が、だんだんと欲しくなってきて。お客さんの顔が見えないなかで、商品をつくっているみたいな。もっとダイレクトに、子どもたちと関われることがしたいって思うようになって」

Edoとして、直接子どもたちに何を提供できるのだろう。

考えるなかで浮かんだのが、中高生に向けた探究塾「EdoNewSchool」だった。

EdoNewSchoolは、講師が教科学習を教える一般的な塾とは異なり、自分の興味関心を深める場。

深めたい領域を見つけた後は、Edoスタッフの伴走のもと、それぞれの学びを探究していく。

現在は、2023年春のオープンに向けて、スタッフ総出で準備を進めているところなんだとか。

「EdoNewSchoolは、”進化版”面白いことができる場所にしたいなと思っていて。公園で泥団子つくるのも面白いけど、あそこに行ったら、3Dプリントで泥団子ガチャをつくれるとか(笑)」

「泥団子つくるのが好きってところから、土に興味が出てきて、地学の先生に話を聞きにいく。そこからさらに、地球や地震のことも調べてみる、みたいな。そういうスパイラルが生まれていったら面白いよな」

自分の好きなことや興味のあることは、勉強とは関係ない。

そう思い込んでいる子は多い気がする。

自分の興味と学問が結びついたとき、きっと子どもたちは、遊ぶように生き生きと、探究や勉強に取り組むのかもしれない。

面白く生きているおっちゃんになりたい

「子どもたちが、熱意をもって何かに取り組んでくれたらいいよね。そういう場面に出会えたら、多分すごい感動すると思う。」

人の熱を感じることが、関口さん自身の熱にもつながる。

「そういう姿を見るのが好きなんだろうね。だから俺は、EdoNewSchoolでも、たまにふらっとやってきて『おぅ、何やっとんの?』って声をかけていくおっちゃんみたいな感じになれたら満足だなと思っていて。そうなるまでには色々やらなきゃいけないんだけど。」

「自分自身、EdoNewSchool以外にも、まだまだやりたいことがたくさんある。それらに真面目に楽しく取り組む姿を、子どもたちに見てもらえたらいいな。」

スパイスやサウナの探究をしたい、飛騨に銭湯をつくりたい…。

次から次へと、やりたいことを楽しそうに話す関口さん。

こんなふうに、自分の夢や将来について素直に語ってくれる大人が身近にいたら、子どもたちも良い影響を受けるだろうな。

「やっぱり、話しているその人自身から感じられる何かが、子どもたちにとって一番の刺激なんだろうなと。『ウロウロしてるあのおっちゃん、面白そうに生きてるな。俺も、何か面白いことやってみたいな』って、思ってもらえたらうれしいな」

(執筆:安久都花菜


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