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私を丸ごと受け止めたい。自分に、良いも悪いもないんだから〜スタッフインタビュー:Edo 新名美帆子〜

EdoNewSchoolは、岐阜県飛騨市にある中高生向けの探究塾です。「やってみたい」を見つけ「やれる!」と思える子に、をコンセプトに自身の興味を向き合える環境を提供すべく、2023年春の開校に向けて準備しています。
今回は、スタッフインタビューをお届け。運営元の株式会社Edoスタッフに、お話をお伺いしました。

自分の弱いところや、人に見せたくないところ。

誰にでも、きっと一つはあるものだと思います。私の場合、人の気持ちに敏感なこと。顔色をうかがいすぎたり、ひとつの言葉を過剰に受け取ったり。

​​だからこそ、人に寄り添うこともできるんだ。そう思えたら楽なのですが、そんなに簡単じゃない。

自分をそのまま、丸ごと受け止める。

それができたら、自分のことをもっと好きになれる気がします。

「全肯定って難しいですよね。私も、まだまだできていないと思います」

今回お話を聞いた株式会社Edoの新名美帆子(しんみょうみほこ)さんも、どんな自分も受け止めようとしているところ。

「自分のこういうところが嫌だって、思っちゃう時もあります。ただ、人にはスイカみたいに色んな可能性をもったタネがあるんだと思っていて。そのタネに、良い悪いはないって信じたいんです」

自分で自分を認める難しさと、美帆子さんはどう向き合ってきたのか。美帆子さんの人生に、耳を傾けてみました。

人に嫌われないようにしなきゃ

「保育園の頃の自分は、それはもう好き勝手にやっていて。今振り返ると、ジャイアンみたいなやつだったんですよ(笑)」

そう話す美帆子さんの笑顔はおだやかで、ガキ大将だったという面影は、どこにも感じられない。

「ただ、小学生にあがるタイミングで、そういう自分が周りからは受け入れられてなかったことを風の噂で知って。幼心ながらに、すごく傷ついたんです」

「それで『ああ、自分勝手に振る舞うのは、ダメなことなんだ』って。そこから、人に嫌われないような自分でいなきゃって思うようになりましたね」

人の顔色を伺い、誰かに褒められることを第一優先に行動する。叱られることや、周りから浮くようなことはしない。

まさに”優等生”だったという。

「自分を演じているような感覚がずっとあって、全然楽しくなかったんですけどね。それでも、人にどう思われるんだろうっていうのが、すごく不安で。その殻をやぶって、自分を表現する勇気がなかったんです」

他者が受け入れてくれる自分でないと、自分を認められない。

そんな状況にいた美帆子さんは、高校時代のとある教師との出会いをきっかけに、少しずつ変わっていく。

ひとつの問いから、心に正直に。

「哲学的というか…ちょっと変わっている先生で。当時の私は、自分の意思ではなく、良い成績をとって褒めてもらうために勉強していたんです。そしたら先生に『学ぶ目的もなく勉強できるってすごいね。新名自身は、なんのために勉強してるの?』って聞かれて」

「私、答えられなかったんですよね。そのことに、なんかめちゃくちゃ虚しさを感じて。初めて、勉強する目的を考えるようになったんです。でも、ずっと分からないし、自分自身についても見失っていくし。勉強の難易度が上がるタイミングだったこともあって、どんどん成績も落ちていきました」

先生の問いは、ずっと周りにあわせていた美帆子さんが、自分と向き合うきっかけになったんだと思う。

成績が落ちても、すぐに答えは見つからなくても。きっと、美帆子さんの人生にとって、とても大切な時間だったはず。

「3年生になって行きたい大学を決める時も、すごく悩んでいたので、その先生に相談したんです。そしたら、『自分で大学費用を出すとしたら、どんな選択をするか考えてみたら』って言われて。その言葉があったから、自分が納得する進路を選べた気がします」

「今までの私だったら、親に勧められたところとか、人にすごいねって言ってもらえるところが良いんじゃないか、みたいな視点で大学を決めていたと思うんです。そうじゃなくて、自分がどうしたいのかを大切にして、決めることができた。自分の心に正直になれたのは、保育園の時以来かもしれないですね」

“働く”が“幸せ”につながってほしい

恩師との出会いを機に、少しずつ自分自身と向き合えるようになった美帆子さん。

その頃から、自分のやりたいことにも気づき始めたという。

「友達と話している時に、『話してスッキリした』とか『色々気づけた』って言ってもらえると、私はすごく嬉しいんだなと。自分の存在価値を感じられる瞬間なんだと思うんです」

「その人が何気なく話していることでも、『私はあなたのおかげでこういう発見があった』みたいなフィードバックを積極的にしたいなと思っていて。そういう時間を通じて、なにか人のために自分を活かせたらいいなって考えるようになりました」

自分が関わることによって、誰かの役に立ち、自身の存在意義を感じられる瞬間が好き。

就職先を決める際も「自己肯定」が軸になっていたという。

「出身地を伝えた時に、良いところだよねって言ってもらえると、錯覚で自分自身も認めてもらえたような気持ちになってたんですね。同じように、住んでいる人が誇りに思えるような地域が増えたら、自分のまちを通じて自分を肯定できる人も増えるんじゃないかなって」

そう考えて、「地域に関わる仕事がしたい」と新卒で入った会社。さまざまな地域の経営者や社員とともに、そのまちのポータルサイトを手がけていく仕事を経験した。

web制作にとどまらず、営業計画や事業計画、人材育成や各種研修の企画など。地域や会社に入りながら、幅広い面でサポートをしていた。

「仕事を通じて色んな方と出会うなかで、ひとつ気づいたことがあって。自分の強みや、自分のやりたいこと。そういう、自分自身について理解している人は、すごく楽しそうに仕事しているなって思ったんです」

住むまちを盛り上げたいという想いがある人。趣味であるカメラの技術を、うまく仕事に取り入れている人。

そうやって、仕事をうまく自分ごと化している人は、会社から言われた業務だからと働いている人に比べて、エネルギーが違う。

「もちろん、仕事の目的は多種多様であることは当たり前だと思っていて。ただ、私の勝手な願いとしては、仕事の時間がその人にとって少しでも幸せなものになったらうれしい。自分が存在してよかったなって感じられる時間に、なってほしいなって思うんですよね」

仕事の時間を、その人自身の幸せと結びつけるためには、「自分がどうしてこの仕事をしているのか」と向き合い、考えることが大切なのではないか。

そう考えた美帆子さんは、クライアント向けに新たな研修を企画し、実施した。

仕事をしている理由や、今後やっていきたいこと、自分の人生そのものについて。3ヶ月にわたって、様々な問いをチームで考えて、実践や振り返りをおこなったという。

その結果、研修を通じて自分の進みたい道が明確になり、資格勉強に取り組むようになった人も。

何より「人と対話している時間が、自分自身について気づきを得るきっかけになった」との声を多く聞いたという。

「”チームで”というところは、個人的にすごくこだわりました。自分では弱みだと思っているところも、人と話すことで、実は強みだと捉えられることってあると思うんです。自分の気づいていない良いところに出会える場になったらなと思っていたので、うれしかったですね」

「この研修での経験を経て、もっと仕事でも、生き方を考える時間を提供したり、やりたいことを支援したりすることをやってみたい!という想いがより強くなりました」

今度は、私がきっかけに。

自分のやりたいことに、もっと取り組んでいくために。

美帆子さんが次なる職場に選んだのは、教育や学びを通じたまちづくりに取り組む、株式会社Edoだった。

「Edoに入りたいって思ったのは、手がけている事業と同じくらい、代表と副代表に惹かれた部分が大きくて。自分が変われるきっかけって、やっぱり人との出会いが大きかったから。お二人の生き方や価値観に共感して、この人たちと働く自分を想像するとワクワクしました」

「自分もこんなふうに生きれたら楽しいだろうな」と感じた代表。

その人自身を大切に、一緒になって親身に考えてくれるあたたかさを持つ、副代表。

2022年1月、そんな二人のいるEdoへ入社し、学校地域と協働したプロジェクトやSDGsの世界観を伝える場づくりなど様々な業務を担当してきた。

なかでも力を入れているのが、EdoNewSchoolという、中高生向けの探究型学習塾の立ち上げ。

「EdoNewSchoolは、先生が教科学習を教える一般的な塾とは違っていて。自分の興味関心を探す場なんです。その子が深めたい領域を見つけた後は、Edoスタッフの伴走のもと、それぞれの学びを探究していきます」

「入社する前から、EdoNewSchoolの話は聞いていました。私がやりたいことにもつながるし、中高生っていう、価値観が形成される年代に向けた場であるのも、すごく良いなと思っていて」

美帆子さんが高校生の時に、恩師との出会いで変わったように。学生時代の出会いは、価値観につながる。

「人との出会いってすごいなって思います。恩師と出会って、考えもしなかった方向から問いをもらって。その問いをきっかけに、自分も変わっていった。今は、そういう存在に自分もなりたいなって思っているんです」

EdoNewSchoolという場でEdoスタッフと出会うことは、きっと学生にとって大きな変化のきっかけになるはず。

同時に、美帆子さんたちEdoスタッフも、学生と向き合うことによる影響は大きいんだと思う。

「EdoNewSchoolを通じて、まだ知らない自分に出会える気がしていて、すごく楽しみなんです。学生たちと話すことで、私も本当はこういうこと思っていたよなとか、これ私もやってみたいなとか。私自身もそういう出会いを期待していますね」

自分を丸ごと肯定できる私へ

まだ若く未熟で、素直すぎるほどの、学生たちの感情。

それに触れることで刺激されるのは、もしかしたら、過去に封じ込めた自分かもしれない。

「出会いたくない感情や自分に気づいたとしても、それも全部見せられるような自分になりたいなと考えていて。自分の嫌だなって思っているところも、結局は全部自分だよなって受け止めたいんです」

「私自身、昔から自分を肯定することに課題意識があったからこそ、同じように悩んでいる人がいたら、何か力になれたらなと思いますね」

周りと比較をし、人より劣っている自分を認められない。そういう考えだと、天井がなく、立ち行かなくなってしまう、と美帆子さん。

劣っているからダメなんてことはないと、感じる出来事が最近あったという。

「森林浴ファシリテーターの資格をとったんです。幼い頃から、山に囲まれて育って、森に救われたことがたくさんあったので、何か森に関わることがしたいなと思って」

「森のなかには、日当たりが悪かったりして、うまく育たない木もあって。でも、その木は森にとってマイナスな存在かというと、全然そんなことはない。土に還ってその森を豊かにしてくれるっていう価値があるんです」

一見、良くないものだと思えることも、実は大切な要素となっている。

「人も同じだと思っていて。自分の嫌だなと思う部分も、見方を変えたら、きっとそんなことないんだろうなって。そう気づいたときに、自分の全てを肯定しようって思えるようになった気がします」

自分で自分を認められない時期があったからこそ。そして、今も試行錯誤している美帆子さんだからこそ。

EdoNewSchoolを訪れる学生たちの、どんな側面もそのまま受け止めてくれるんだと思う。

「EdoNewSchoolで、森で学ぶ。みたいなことができたらいいなって思っていて。北欧では、アウトドア教育が研究されていたりもするんです。今の自分が興味を持っている森林と教育という分野を、これから探究していきたいですね」

(執筆:安久都花菜

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