「わたし」は脆い 『変身』(フランツ•カフカ)を読んで
ある朝、グレコール•ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
『変身』の冒頭部分だ。シュールで突飛な設定を読む者に突きつけるところから始まるこの物語は、カフカによって1915年に刊行された。毒虫になって引きこもって生きるしかなくなる状況は、どこか現在のわたしたちに重なる。我々を突如襲ったウイルスは、わたしたちを家に閉じ込めた。今読んでも十分読み応えがある。いや、今この状況だからこそ読んで共鳴できる作品かもしれ