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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜北品川・天王洲アイル編〜 第1話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

対象読者は?

・写真撮影が上手くなりたい!と思っているカメラ初心者。
・プロは何を考えて写真を撮っているのか興味がある人。

毎月1回更新するぞ!と意気込んでスタートしましたが、四ツ谷編の前回から少々間が空いてしまいました(楽しみしてくださってる読者の方もいるようで、ごめんなさい)。


2回目となる今回ですが、旧東海道の古き良き町並みの並ぶ北品川から、東京を代表するウォーターフロントエリアの天王洲アイルをブラブラして写真を撮りました。

撮影の概要
・【場所】東京・北品川〜天王洲アイル周辺
・【日時】2月のとある日の午後1時
・【天気】快晴の冬空

撮影場所の詳細

今回の撮影地は、以下のエリアを中心にお届けします。

1)下町っぽい船宿と高層マンションのある北品川東側(赤いエリア)
2)赤いエリアから青いエリアへ行く途中の天王洲運河の橋
3)タワーマンションと公園が印象的な天王洲アイル周辺(青のエリア)
4)情緒と新しさが混在する旧東海道の周辺(黄のエリア)

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この辺りは、開発が進む海岸沿いと、古い町並みが残る旧東海道沿い、そして第一京浜を渡れば御殿山という高級住宅地と、色々な顔を見せる興味深い街なのですが、どんな風景と出会えるのでしょうかー?

早速スタートです。

下町っぽい船宿と高層マンションのある北品川東側エリア

設楽:
ということで始まりました。今回もよろしくお願いします。このエリアは完全にアウェーなので、どういう風景を撮れるかわからず不安を抱えたままブラブラしていました。

まず最初に訪れたのが、船宿が点在する北品川の東側のエリアです。

ここには運河(?)があり、屋形船などが停泊していまして、古い建物と新しいマンションが混在する地帯で、東京の古さと新しさを表現したいなと思って撮影したのがこれなんです。

でも、全然個人的にはダメで、上にケーブルはいっちゃってるし、前回和田さんに、グリッドを使えと言われたのでファインダーにグリッドを出してみたんですが、全然水平取れてないし、この写真で伝えたかった「東京の古さと新しさの対比」も出せてないし……。この写真の残念なポイントを教えてほしいんです。

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和田:
なるほどですね。古いものと、新しいものを構図に入れて、それを上手に撮影するにはどうしたらいいか?ってことですね。

それで言うと、昔北京とかブラジルでオリンピックがあった時、運動施設などの新しい建物と、古い住宅街やバラックとか、ちょっとゲットー感のある路地とかが混在している構図なんかは、よくニュースとかで流れていましたよね。

そういう都市開発と残された古い街みたいなのをモチーフに写真を撮っている作家は結構多いのですが、過去の作品を今の視点で見ると、貴重なアーカーブという側面で見れる一方で、当時の視点で見ると、庶民の人権を無視した一方的な開発、みたいな社会問題性を孕んだ作品と捉えることができますよね。

そういう背景も含めてお話すると、設楽さんの作品は、着眼点という部分だけを捉えれば、非常に素晴らしいと思います。

でも技術の部分に関して触れると、まずこの右側の老舗のようなお寿司屋さんですが、看板見ればお寿司屋さんと書かれていてわかるのですが、ビジュアルとして老舗のお寿司屋さんであることが分からないと、古さが全然伝わらないんですよね。

設楽:
確かにそうですね。僕は古さと新しさを対比したかったのに、そもそも古さという部分が写真の中に全然現れてないってことなのか。

和田:
老舗の鮨処っぽさがないと、これだけだと、最近建てられた住宅感もでちゃってますよね。そこが改善ポイントですね。

【ポイント】
構図の中で対比をしたいなら、それぞれのキャラクターの特徴をきちんと出す。

もっと、古いものに対する、「視覚的な愛着、執着」というのかな。そういうものが欲しいですね。あのエリアは比較的、「古さ」というキーワードをビジュアルで表現できる素材が沢山あったので、それを使ったらもっといい写真になったんじゃないかなと思います。たとえば凄く気に入った古い建物があったら、それを偏愛的な視点で見て、その古い建物に執着して、その建物と後ろに新しい建物を組み合わせる、みたいな。そういうことを意識して撮影すると良いんじゃないですかね。

あんまり、「新しいのと古いのをかけあわせる」という部分に意識を置くのではなくて、古いものを偏愛的な視点でみて、背景として新しいものを構図に入れる、ということを意識すると、設楽さんが狙っているような写真が撮れるのではないでしょうか?

設楽:
今回も本当に勉強になります(笑)。次なんですが、和田さんも撮影していた、船宿と屋形船の周辺の風景、僕も撮ったんですが比較して色々教えてください。まず僕が撮ったのがこれです。

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このエリアとても情緒があって良かったんですが、主題を撮り切れてなくて、何を言いたい写真か全然わからなくなっているんですよね。せっかくいい風景だったのに、その特徴を全然捉えきれてないのが納得いってないポイントなんですよ。

和田:
確かにこういう風景でしたね。運河に屋形船が停泊していました。設楽さんの疑問でいうと、一つ聞きたいのは、この場所で、設楽さんは「本当に撮りたかったもの」ってなんですか?

設楽:
あーー確かに。そうですね、なんでこんな都会のど真ん中、しかも品川というOLやビジネスマンが働いていたり、タワマンが乱立している場所に、こんな情緒あふれるこんな風景があるんだろう?ということを写真で言いたかったんですよね。でもそれが全然表現できてなくて……。

ちなみに、和田さんもここで撮影してましたが、どんな写真を撮ったか見せてください。

和田:
私もあの場所は印象的で、何枚か撮ったんですが、これが気に入ってます。

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ここで私が気になったのは、電線?ケーブル?がカオスのように張り巡らされてたんですよね。あと、今にも崩れそうな右側の茶色の建物。この2つが伝わるように撮ったのがこの一枚です。

あともう一枚がこれですね。

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このエリアって、北品川から歩いてきて、ようやく水や川や海が入り込む景色になりましたよね。だから本当はもっと開放感のある写真を撮りたかったのですが、私のレンズは50mmなので狭いから、ちょっと開放的な写真は撮れないだろうなと考えていて、どうしようかなと考えていました。

この写真で意識したのは、まず左側の灰色の防波堤のパースのラインが右奥に抜けていくことです。つまり対角線ですね。対角線を考えて構図を作るというのは、写真を撮る上でとても大切なことの一つです。

まっすぐなものをまっすぐ撮れば、ヌケの気持ちよさを出せるのですが、こういう風に対角線を意識して画面構成を考えていました。あと、空の青さを表現したかったんですが、同時に入れるのが無理だったんで、水面に映っている空の色でそれを取り入れた、というのがこの写真のポイントです。

今回のエリアで、設楽さんの写真を見てアドバイスをするとすれば、「情報を圧縮する」ということを意識して写真を撮ってみる、という点ですね。

設楽:
情報を圧縮する?ですか?

和田:
確かに、東京の新旧を同時に構図に入れるという発想は素晴らしいのですが、あまりそこに意識がいきすぎると、伝えたいことがぼやけるんですよ。

幾つものテーマを撮ろうとしてしまうと、多くの場合結局何を伝えたい写真だかわからなくなってしまうんですね。
これは僕もよくやります(笑)。あれ、何が主題だったんだろう?とわからなくなる時がある。

【ポイント】
構図に入れる情報を圧縮することを意識する。

だから、欲張ってあまり色々なものを入れすぎようとしない、というポイントを意識してみるといいと思います。

設楽:
次回もよろしくお願いします!
続きはこちら!

第一回の四ツ谷編はこちらです!


【プロフィール】

和田 剛/Tsuyoshi Wada
フォトグラファー。1974年生まれ。
人物撮影と旅行が好き。
写真をまなぶ人のオンラインフォトスクール「good! Studio」を主催。
近日オープン。

http://tsuyoshiwada.com

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設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ