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カメラ片手に、プロの写真家と散歩した話〜四ツ谷編〜 第2話

この記事は何?

・写真を撮ることが好きな素人が、プロの写真家・和田剛さんと街を歩き、撮った写真を見ながらプロからアドバイスをもらい、カメラの腕を上げてしまおうという連載。

第1話はこちらから読めます

もくじ

1)地元民の憩いの場、外濠公園(赤いエリア)
2)学生と勤め人のオアシス、しんみち通り(青のエリア)
3)都会のど真ん中にある異空間、迎賓館赤坂離宮周辺(黄のエリア)
4)高台から四ツ谷を見渡せる、上智大学横のお堀(緑のエリア)

2)学生と勤め人のオアシス、しんみち通りエリアで撮影

第1話の撮影は、四ツ谷駅東側に広がる外濠公園でしたが、そこから徒歩で移動し、四谷と言えばの飲み屋街「しんみち通り」界隈にやってきました。下の地図の左の真ん中あたり、青いエリアです。

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しんみち通りは、大学時代の僕の青春のスポットで、ほぼ毎週ここで飲んだくれていました。

洋食屋の「バンビ」とか「エリーゼ」(今は店変わりました)をはじめとする、名だたる名店揃いの、学生とサラリーマンに優しい飲み屋街です。

設楽:
さて和田さん、つぎはしんみち通りです。

和田:
おー懐かしいですね。昔、この界隈に住んでたのでよく来ました。

この入口にある「四谷 たけだ」って店は、前に「エリーゼ」って名前だったよね。このあたりの話は、僕も色々詳しいんだけど、まあそれは本題から逸れるから別の機会に話しましょう(笑)。

設楽:
そうですね。さて早速ですが、「しんみち通り」の写真を見てください。まずはこれです。

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全然イメージ通りの写真が撮れなかったんですよね……。

この写真で和田さんに聞きたいのは、このしんみち通りの主役的な看板を、インパクト出して撮るにはどうしたらいんですか? つまり、「印象的なものを、印象的に撮る」方法を教えてほしいんです。

和田:
なるほどね。僕も実は、このアーケードが気になっていくつか構図を考えてみたんですよ。でもこの日はいいアングルが得られなかったんです。

設楽さんはこういう看板みたいなものを、どうやって撮ったらいいか?ってことを聞きたいんですか?

設楽:
そうなんです。この「しんみち通り」って四谷の一つのシンボルなんですよね。そのシンボルをシンボルらしく撮る方法があったら教えてほしいんです。

和田:
確かにこの看板はシンボルの一つですよね。

ポイントは2つあります。1つはちょっとこの位置だと難しいかもしれませんが、看板を「空抜け」で撮ることですね。空をバックに撮るってことです。空抜けでいい感じの構図、角度を探してみることですね。
この写真が残念なのは、しんみち通りっぽくないところなんだよね(笑)。

設楽:
そうなんですよ!全然通りの印象が伝わってこないんです。

和田:
それはね、後ろの建物の色とラインが重なっているからなんです。多分撮っているうちに癖になってきますが、「空抜け」を意識することが大切ですね。

【ポイント】
印象的な対象を撮りたい場合は「空抜け」を意識してみよう

あともう一つは、これ、しんみち「通り」でしょ?だから通りを映さないと。

これは当たり前のことなんだけど、なかなか気づかないんですよね。だから、こういう場合は、タテ位置で真正面から撮ってみる、ことがポイントですね。

【ポイント】
撮る対象は一体何なのか?それをきちんと見極めて構図を決める

タテ位置でしんみち通りを撮ると、多分右側に人気洋食店に並んでいるお客さんが映りますよね、あと奥に向かって暗くなってくると思うんです。そうすると、手前が目立つし、パースが出て遠近感が出る写真になるんです。

設楽:
そうか、看板ばっかりに目がいってしまい、自分が本当に撮りたいものは何か、っていうことが欠落していたんですね、僕の写真は。
ところで和田さんは、このエリアではどんな写真を撮ったんですか?

和田:
そうですね。僕はこんなのを撮りました。これはしんみち通りの手前なんだけど、坂を登っている時に撮った写真ですね。

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設楽:
え?どういうことですか?あの日って日中で、冬の快晴の青空だったじゃないですか?

なんでこういう周りを暗くさせて、太陽が印象的な写真を作為的に撮れるんですか?

和田:
まずね、このこの建物がガラス張りで、光をすごく受けているんですね。つまり鏡を反射させているような状況なんです。これ通常で撮ると、ガラスの部分が真っ白く飛んで、空が青く映りますよね。

これはその日持ってたカメラの一番速いシャッタースピード、確か8000分の1で切ってたけど、この太陽の明るさを出したいから周囲を闇にする工夫をしたんです。

手前の街路樹が邪魔かなと思ったんですが、仕上がってみたら結構いい構図になってますよね。「光を撮った」ってことです。

設楽:
こういうところなんですよね。素人との技術の違いは。こういう写真が「意図して撮れる」ということが、やっぱりすごい部分なんですよね。だって、僕、このビル通り過ぎた時に、こういう絵は全く思い浮かびませんでしたから。

多分色々な景色を見て、構図とかシャッタースピードとか絞りとかを瞬時に計算して、どんな写真が撮れるかをイメージできるんだろうな。

和田:
それはあるかもしれないですね。

ところで設楽さん。しんみち通り抜けた後に、新宿通りの交差点出ましたよね。あのあたりで、僕と似たような構図で撮りませんでした?

設楽:
はい、撮りました(笑)。横断歩道の真ん中あたりから、撮影したんですがこれです。

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和田:
そうそう、この場所。僕も同じ場所で撮ったんですよ。僕が撮ったのはこれです。

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設楽:
あ、本当だ。でもなんでだろう。同じ場所で同じ構図を撮ったのに、なんか僕の方の写真は、締りがないというか、「普通」っぽいんですよね。

和田:
そうですね。設楽さんはこの写真を撮る時、どんなことを意識しましたか?

設楽:
意識ですか? う〜ん、特に何も意識してなくて、あー奥に母校が見えるな、ぐらいです。

和田:
これは、今後もし、撮影の技術をつけていきたいなら、とても大切なことなんで覚えてほしいんですが、「垂直、水平を取る」ということです。横断歩道を見ればわかるけど、設楽さんのは、斜めになってますよね。

もちろん、意図して、エモーショナルな写真を撮りたくて狙って撮るならいいんですよ。なにか、感情の高ぶりというのかな、疾走感とも言えるかもしれない。そういうのを表現したいなら、垂直水平は無視していいと思うんですけど、そういうものが無いなら、垂直水平のラインを意識したほうがいいです。

【ポイント】
垂直、水平を意識することは大切

設楽:
垂直水平を取るコツがあったら教えてください。ファインダーにグリッドみたいなの出せるじゃないですか?ああいうの使ってもいいんですか?

和田:
これはある種、訓練すれば取れるようになってきます。

あとグリッドは活用してください。僕もグリッドを入れて撮影しています。グリッドって、設定によって何分割かにできますよね。グリッドは垂直水平を取るのに大切なのと同時に、画面構成の分量比率を測るためにも使えますよね。

もちろんグリッドは、一つの目安にすぎないんだけれど、人には撮影の時に癖が出るもんなんです。左が下るとか、右が下るとかですね。僕もまだ癖が出ますし。だからそういうのは、便利なツールを使ってどんどん矯正していったほうがいいと思うんですよね。

【ポイント】
カメラのグリッド機能を活用しよう

垂直水平が取れていると、こういう写真を取る場合に、こういう四ツ谷駅へと向かうパースが、しっかり見えてくるんです。
それは言いかえると、「写真を見る側の視点が、中央に集まる」ってことです。見る人に余計なところに視線を散らさないという意味では、垂直水平を意識して撮ることはとても大切なポイントです。


今回も、やっぱりプロの技術ってすごいなと実感した回でした。

次の四谷編第3弾は、迎賓館赤坂離宮周辺あたりをお届けします。続きはこちら!


今回お世話になった写真家の和田さんは、近々この連載でやっているような、写真のオンラインスクールを開くそうなので、情報はまた追ってお知らせいたします。

あと、感想をいただけると、とても嬉しいですー!よろしくおねがいします。

【プロフィール】

和田 剛/Tsuyoshi Wada
フォトグラファー。1974年生まれ。
人物撮影と旅行が好き。
写真をまなぶ人たちの教室、
「スマートフォトオンラインスクール」を始める
http://tsuyoshiwada.com


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設楽幸生/Sachio Shitara
編集者。1975年東京生まれ。週末カメラ片手に飲み歩くのが趣味な、写真の素人。Twitterやってます。

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カメラのたのしみ方

東京都八王子市高尾山の麓出身。東京在住の編集者&ライター。ホッピー/ホルモン/マティーニ/アナログレコード/読書/DJ