脳の作りと創作(「シン・仮面ライダー」撮影ドキュメンタリーを拝見して)

「エネルギー面では脳に軍配が上がるが、脳はその分正確性や再現性を犠牲にしている。」
そこで人類は正確性や再現性を補助することを考えて、科学という知識の体系化やコンピューター生み出したと言って良いのでしょう。AIを生み出すのも必然とも言えるのかもしれません。

たぶん脳は予測と偶然性に特化しているのだと思います。
邪推だけれど、ゆらぎは偶然性を生み出すために必要なのです。 
今の所のAIは倫理制限もあって、正義の向こう側や既存の知識の組み合わせ以上の創作が苦手のように思えます。

さて、ここで話を先日拝見した「シン・仮面ライダー」の撮影ドキュメンタリーの話に変えます。
一言で壮絶な撮影現場でした。
庵野監督の手法は、打ち合わせにそって合理的にスケジュールをこなす撮り方ではなく、偶然性を生み出すために、自分もスタッフも追い込む状況を作る撮り方です。

つまりスタッフから脳の偶然性(そしてのそのシナジー)を引き出そうとしているのです。

この手法は昔からありました。
それをエンターテインメントにしたのが、杉谷庄吾さんの「映画大好きポンポさん」です。

杉谷庄吾さん「映画大好きポンポさん」3巻より

でも、その手法はコストがかかるので資本家や配給会社からは好まれません。今はほとんどないでしょう。

それでも庵野監督がこの手法を取るのは、合理的制作手法では得られないものがあるからだと思います。

おそらく脳の偶然性を発揮するためには、条件が必要なのだと考えています。
追い込まれた状況というのはその手段のひとつなのでしょう。
そうすると、芸術家や修行者が自分を追い込む理由が理解できます。

庵野監督は「エヴェンゲリオン」でも「ふしぎの海のナディア」でも制作途中で倒れていますが、庵野監督をはじめとする、有名で実力のある芸術家たちが死ぬほど自分を追い込んでいるのを見ると、楽しいだけで良いものができるのは天才だけだと思います。

なので天才を除き、芸術とはたぶん栄光の影でどれだけ地獄の道を進むか、だと、私は思います。


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