見出し画像

前回の記事では日刊木材新聞という業界でもニッチな新聞記事を取り上げたが、5月11日には日本経済新聞に掲載されていた。まぁ一般家庭での購読新聞は「毎日」「読売」「朝日」だろうが、お目当ては番組表だったりスーパーなどの折込チラシが大半ではあるものの、ビジネス的な内容は余り掲載されていない。

そういう意味で、経済新聞に掲載されるということは、株価にも影響は出るだろうし、他の産業まで影響があることにも関連することから、楽観視できない事である。

記事の内容としては、
・米国の木材価格が、約一年余りで6倍に跳ね上がっている。
・新築を建てる需要が多く、概ね400万円以上も高騰化している。
・新築アパートメントにも影響、家賃が約120ドル(日本円14,000-~15,000-前後)

では、ヨーロッパではどうなっているのかということだが、アメリカ向けに商品を流しているらしい。ただ、中国の方が割高で買い取ってくれるので、それ以外のところまでは周って来ないのである。

ただ、主材となる「ホワイトウッド」が6倍も高騰しているとなると穏やかではない。日本へ資材が流れて来ても、高騰化は避けられず仕様等の変更をせざるを得ない影響もあると思われる。

この時期は少し休息ムードになっているとか、つまりスエズ運河で事故が起きて流通が止まっていた分が供給されているので、大半が6月~7月くらいまでは通常流通の確保が出来ているようだ。

国も動き始めた。国土交通省からは調達に係わる資金への補助金、その他、経済産業省や林野庁では日本産木の国内需要を喚起できるよう流通のしくみを整理しているとか。地産地消うあウッドマイレージ等を考慮すると、いくらコスト面の負担が少ないとはいえ、ホワイトウッドなどの外材を多く利用するということは、害虫に弱く大量の薬剤を塗布した材木となるわけで、住まう人への健康負荷は避けられない。そういう意味合いでは、国産木の需要を喚起できるチャンスでもある。

そうは言っても目の前の新規受注に対する着工等の遅れや仕様の変更などは容易ではない。価格高騰と言えど数百万円単位である。年間数百棟販売しているビルダーと、年に数棟しか販売していないビルダーでは、取引上における信用力ということが大事になる。

現に我々でも同様のことが起きており、やっとこさこぎつけた1本の需要を生み出した新規の取引先となるビルダーは、どこも相手をしてくれない。普段の取引先での信用力というのが、日本の商流の「仁義」であるのだろう。

幸いにも日本の森林資源が豊富なので、国産木の新たな供給体制と同時に、今一度原点回帰に戻って、資源の大切さ、地産地消への考え方、単に見栄えだけのローコスト住宅ではなく長寿命化住宅への転換等、住宅だけでなく衣食住そのものが自国内で賄える政策に期待したいものである。

20210530