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執着か、探求か。小脇の文化人類学

noteでは何度か書いていますが。大学時代は文化人類学という分野を専攻していた。
いよいよ卒業が見えてきた時。早く社会人として収入を得て1人暮らしをしたかったし、これ以上親に経済的負担を掛けることに遠慮する気持ちがあったので、大学院には進学しなかった。
しかし就職してからもずっと「もっと学生時代に色々やれたんじゃないか」「まだ文化人類学に触れていたい」という気持ちを持っていて卒業生と在学生が協力して自主的に行う調査チームにも参加したこともあり、細くではあるけれど今日まで文化人類学に関わっている。

最近だと、同期や後輩たちと日常の中で人類学を軸に面白そうなことをやっていこう、とお誘いいただき "井戸端人類学F2キッチン”というコミュニティに参加している。

twitterはこちら~ https://twitter.com/idobata_a_f2

それにしても。
学生時代は勉強熱心でもなかったし、現在何らかの研究を続けているわけでもない、仕事として関わっているわけでもないわたしが、なぜ大学を卒業して20年超にも渡り、文化人類学というものに関わり続けようとしているのか。

それは執着なのか、探求なのか。

執着だとしたら、何に執着しているのか。

思い当たることとして、すぐ思い浮かぶのはこの2つ。
① 学生時代の研究は納得がいくまでやりきっていない、という気持ちを成仏させるまで心残りとして持ち続ける気持ち
② あわよくば、そちら側への道が開かれて踏み込んでみたら面白いのではないかという気持ち

どちらも当てはまるけれども、ドンピシャでは無い。

①はどこまでが「納得いく」なのか、未だにわからない。納得のいくまでやるとしても卒業してから早20年以上経っているうちにテーマにしていた事象も時間を経て変化している。何よりも自分自身の興味関心が時間を経て変化している。きっといつまで経っても成仏しないことだろう。むしろこの心残りが今のわたしを動かすちょっとした原動力なのかもしれない。

②は大学院に進学もしていないのに、何を言っているのだと思われるかもしれないが。学生の頃から「日常のなかにテーマがたくさんある」と感じてきて、社会で働くようになってから「大学時代に学んだ眼差しの多様さやフィールドワークの手法は働いてからも活かせるし、学生時代よりも重要だ」と感じる機会に遭遇してきた。

研究やフィールドワークをテーマを変えつつそのままも悪くないけれど、学んだエッセンスを使いながら仕事のなかで活かしていけないだろうかという気持ちがある。今やっている仕事の中でもほんのりエッセンスを活用しているようなところはある。それを手掛かりに関わる世界や領域を広げたり深めたりできないかと考えている。今の自分が手の届く範囲ではない活用のしかたも考えたいところである。

探求ははてしなく

探求といっても、関連文献を山ほど読んで、自主調査をして・・・ なんて行動はできていない。
本を読むのがとても遅いし、自主調査に取り組む前に確固たるテーマがあるわけでない上に自分自身が日常のやることに埋没していて、後回しになっている。

なんとかやっているのは、人との関わりのなかでこぼれ垣間見える背景を感じ取り、対話のなかで相互に確認するくらいだろうか。相手も無意識に発した言動であることが多いので、一緒に探索するような感覚でコミュニケーションをしている気がする。

先日。
糸の絡まる束を解きながら「世界もこんな風で、日常生活の中でこうやって解いていく作業がフィールドワークや探求なのかもしれない」とふと思った。
複雑に絡みあう、時々そこに埋没する。解けば一本の糸。

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それぞれ別の事象のようで、実は繋がっているのかもしれない。
この面倒くさいやり取りを面白がれるのは、今では大学時代のおかげかなと思う。(当時は思えなかったけど)
いつでも相手を尊重できるほど人間性が完成されていないけれども、尊重できない自分にどんなベースがあるのかを知ろうとすることができるのもしつこく、細く続けてきたからかもしれない。

いつも小脇に携える感覚

文化人類学はあらゆる分野をカバーするのでその時々で取り扱うテーマは大小有りつつ「人ととは?」「文化とは?」と哲学のような問いかけも自分に向けながら関わっている。
取り扱う事象は大きいような、身近なような。
日々わたしのまなざしを通して見えていることを、さまざまな表現で発し続けることでしかないけれども、それをどこかで受け取ってもらえるやり取りを時にはしんどいなと思いながら続けている。
この世界の歩き方として文化人類学を小脇に抱え、これからも続けていく、ということが執着と隣り合わせになりながら探求している、ということなのかもしれない。

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