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六、私が今日ピアノを弾くのは、父の影響。

 電子ピアノが我が家に来て、今年で十年になる。我が子がピアノを習うために購入した電子ピアノだが、今は私が弾いている。

 最近よく弾いているのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第二楽章。ベートーヴェン生誕二百年だった昨年、ベートーヴェンの曲を何か一曲弾けるようになりたいと思って練習したのが、悲愴ソナタの第二楽章だ。傷口に軟膏を塗り、患部を擦るように、そばに寄り添ってくれる曲だ。この曲を弾くと、優しい気持ちになり、心が軽くなるのを感じる。

 どのように私は音楽と関ってきたのか?記憶は幼少期までさかのぼる。ポール・モーリアが流れる日曜日の朝。演歌が流れる午後。休日になると決まって、父がオーディオ再生していた。ウラディミール・ホロヴィッツ来日公演のときは、テレビにラジカセを近づけて録音したほど、父は音楽が好きだった。

 私は小学生になると、電子オルガンを習い始めた。音感やリズム感はよかったが、指のタッチが悪く、とにかく練習が嫌いだった。だが、中学校で部活動を始めると、否応なく練習する環境に置かれ、練習に耐えられるようになった。

 中学は吹奏楽部で打楽器を、高校はオーケストラ部でビオラを演奏した。リズム楽器の奥深さを知り、高音や低音の影に隠れがちの中音を聴く力が付いた。これにより音楽性が高まり、より深く音楽を味わえるようになった。

 だが大学進学を期に、楽器からから離れていった。練習に当てていた時間を、ほかに使いたいと思ったのだ。その結果、楽器を続けていたらできなかったであろう体験をし、現在につながる友人とも出会った。その中の一人こそ連れ合いだ。

 人生の苦境に立ったとき、私は救いを何かに求めた。私を拾い上げたのは、小さな頃から慣れ親しんだ音楽だった。見渡すと電子ピアノがあった。付属品の楽譜に目を遣ると、音を出さずにはいられなかったのだ。

 父が好きだった音楽を、私も好きになった。父の好んだものを受け継いだことが嬉しい。当面の目標は、ショパンのエチュードを弾けるようになること。私にとっては高い目標だ。

 夢はオルガンを弾くこと。欧米で単にオルガンと言ったら、パイプオルガンを指す。そう。私の夢は、パイプオルガンを弾くことだ。

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読者の皆様にとって良き一日となりますよう願っています。私サカタニミホは、 皆様により良い記事を提供できるよう、日々精進してまいります。