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Vol.3 被災を糧に:オーガニックコットンから循環型社会を目指す起業家が語るキャリア選択

「一般社団法人やNPO法人を立ち上げた人はどんな思いで活動しているのだろう?」という疑問にお答えすべく、今回は一般社団法人 ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの代表理事兼NPO法人(特定非営利活動法人)ザ・ピープル前理事長である吉田恵美子さんのインタビューをお届けします。

〈プロフィール〉
吉田 恵美子(よしだ えみこ)
福島県いわき市出身。震災後の耕作放棄された農地を未来へつなぐため、在来種である茶綿を有機栽培する活動を始動、2021年「一般社団法人ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」として法人化する。古着を再利用するNPO法人と並行し、繊維製品の循環型社会を目指す活動を通して、脱炭素・サステナブルな社会の在り方に向けてメッセージを発信する。また、学校でワークショップを行うことを通し、産業教育・環境教育・震災の継承教育として、子どもたちと共に未来を考える活動を積極的に行っている。

「茶色のコットンは、福島で作られたという証。福島から、地産地消の重要性や新しい暮らし方の提案、一緒に未来を創っていきましょうというメッセージを伝えていきたいです。」

「ふくしまと関わるRoom!」 2023-10-23


学生時代について

ー学生時代のときから現在のキャリアに進みたいと考えておられましたか?

学生時代は文学部史学科で日本の近現代史を専攻していて、思想的な部分には偏りがあったかもしれませんが(笑)

環境問題に特に関心を持っていたわけではありませんでした。

大学卒業後に教員を経て専業主婦になったのですが、そのときにいわき市が派遣した海外視察団に参加したことをきっかけに、環境分野の活動に入っていったことが私自身のキャリアのスタートです。なので、学生時代は環境問題に特化した関心をもっていたわけではないというのが正直なところです。

現在のキャリア選択をしたきっかけ

ー具体的に環境に携わるキャリア選択に興味をもったきっかけなどあれば教えていただきたいです。

先ほど申し上げた、いわき市の派遣する海外視察団に参加したことがきっかけです。

2週間くらいの旅程で、ヨーロッパ4か国の女性の社会参画の問題について勉強するという視察団のメンバーに加えていただいたんですね。
20人のメンバーで行ったのですが、視察に行った先では、自転車に乗ってきたおじいちゃんやおばあちゃんがドイツの街中のリサイクルボックスに、ワインの瓶や新聞紙を投げ入れていました。

このような日常の中にリサイクルが当たり前にある暮らしは、当時の日本では考えられないことでしたが、ドイツの街中では普通に行われていたんです。

また、当時日本では、東京でのゴミ問題が非常に話題になっていて、夢の島というゴミの埋め立て地がゴミでいっぱいになってしまうので、その後どうするんだ、というのがかなりメディアで放送されていたんですね。
そのような背景もあって、東京では夢の島が大変なんだと言われているけれど、いわき市はどうなのか、自分の住んでいる町はどうなのかということについては全然関心をもったことがなかったよね、という会話を同じ視察団の仲間たちとしました。

私たちが自分たちの町のごみのことについて全然関心が無くて、知らないでいるのは変じゃない?ということと、ドイツの街中にあった暮らしのようなものが何で日本ではないんだろうね、という気づきがきっかけになって、その後の活動に繋がりました。

実際に、視察団に一緒に行ったメンバーには主婦が多かったので、主婦として毎週ゴミ出しをしていても、その行方について考えたことがなかったことに気づき、パッカー車の後をついて回る体験をさせていただきました。


それがきっかけで今まで思っていたゴミの現状が間違っていたことに気づいて、そのことを皆にも知ってもらわないといけないと感じました。
このように、小さな行動が新たな発見、さらには次の行動への一歩に繋がりました。

ーヨーロッパに視察に行かれて、そこから学んだことをもとに工夫を加えて今の形になったということなんですね。

そうですね。

やりがいについて

ー活動をしていく上でどのようなときにやりがいを感じますか?

色々な場面でやりがいは感じています。
例えば32年に渡って活動をしてきた中で、古着の仕分け体験をした子が、今は学校の先生として子供たちに教える立場になっていること。
そして、震災の後小学校3年生の時にコットンを育てていた子が、大学生になって今度はコットン栽培を手伝ってくれることなど、自分たちの活動を応援してくれる若者が育ってくれていることがわかるときです。

自分たちがやっていることが世代を超えて広がっているということを実感できるとやりがいを感じられます。

他にも、ある人は古着を燃やさない社会づくりはいわきの立派な地域文化だとおっしゃってくださって、それを自分たちのちっちゃな活動の積み重ねが成し遂げてきたのかなと思うと、それはすごく嬉しいことだと思います。

ー活動をするときに大事にしている価値観があれば教えていただけると嬉しいです。

大切にしているのは想いの部分です。

今の時代だと、環境に対して企業が行うべきことが明確になっているので、環境に関わることにきちんと金銭的なメリットが介在できるようになりつつあるじゃないですか。

でも、私たちが活動をスタートさせた頃は、環境に関してはお金が出ないということが当たり前だったんですね。例えば障害者福祉、高齢者福祉のために動いて、そこにお金がつくということは当たり前でも、環境に対して動いたからといって、それはあなたたちが好きでやってるんでしょ、という風にあしらわれてしまうことがほとんどだったんですよ。

そういう社会状況の中で萎えさせずに活動を継続していくことは、ものすごくメンタルの部分の強さがないとできないことでした。だからそういう活動に共感してくれる仲間を作っていくことが大事で、そのためには自分たちの想いを共有することが重要だと思ってきました。

おわりに

ー最後に、環境課題に関連するキャリアを目指している学生に向けたメッセージをお願いします!

私が歩んできた道が環境系を目指す学生さんたちのこれからのキャリアとどうつながるのか、重なる部分があるのかを考えていたのですが、おそらく私が歩んできた30年と、皆さんがこれから歩む道は全然違ったものになるだろうなと思います。

環境に関してこれだけ課題が目に見える形になってきている時期じゃないですか。

ここから10年、20年、30年の間にこの地球をどうするのか、この地球環境をどうするのか、のど元にナイフをつきつけられている状況だと思うんですよ。だからこそ、皆さんのように環境に対してきちんと意識をもってくださっている方たちの存在にすごく期待が高まっていると思うし、皆さんが背負うものはすごく大きいと思います。

ある意味私たちの動いてきた時期に比べたら動きやすい部分はあると思いますが、同時に本質が色々な形で見えにくくなる可能性もあると思っていて、情報がこれほど多い世の中で、皆さんが自分自身の中に芯を持っていないとぶれてしまう危険性もあると思っています。

だから、本質を見抜く力は必要だと感じています。


環境ロドリゲスの「えこねくすと」メンバー,吉田様を私たちに紹介してくださった長谷川様と
ふくしまオーガニックコットンプロジェクト代表理事の吉田様

編集後記

今回のインタビューを通して、世の中が今のように環境に対する意識があまり強くなかった頃から、積極的に環境活動を行う吉田さんの姿にとても感動致しました。世間からの風当たりが良くない中でこのような活動を続けるためには相応の強い意志が必要で、そのような強い意志を持った吉田さんの姿を見習いたいと思いました。

吉田さんがヨーロッパ視察での「気づき」をもとに活動を始めたように、私も日々の生活の中での「気づき」を大切にし、みんなのために役立てるような人になりたいと感じました。

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