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自分の演奏を聞きに来てくれた人に、あげられるもの。

先月の終わりに、大先輩ピアニストの先生主催(プラス私の生徒さんたちちょこっと)のクラスコンサートがあった。
クラスコンサートでは、生徒さんが全員弾き終えた後、先生が講師演奏で締めるのが定番だ。つまり、緊張でガタガタの生徒さんたちを励まし、景気付け、舞台に送り出しながら自分自身も出番に備えてひそかに気持ちを整えておくのである。
そんなクラスコンサートの講師演奏を、娘の幼稚園で仲の良いママ友2人が聴きに来てくれた。
この二人、前回のクラスコンサートも聴きに来てくれて、一人は単身だったがもう一人はお嬢さんも連れてきた。そして私のところは夫と子供も来ていた。
だが今回はママ友2人とも『落ち着いて聴きたい』と単身で、私のところも夫が体調不良で子供達ごと義母のところへ静養に行ってしまったので皆身一つであった。
終演後の懇親会でいい感じにワインを引っかけて、美味しいものをちょっとつまんで、でももうちょっとハラの足しになるもの食べて帰りたいね、ということになり、私たちは懇親会がお開きになったあと渋谷の街に繰り出した。

歩き始めてしばらくたった時、ママ友の一人が

「ねえ、今、私たち、こんな時間にこんな場所を、一人だけで歩いてるよ・・・?!」

と、唐突につぶやいた。
それを聞いたもう一人のママ友と私も

「本当だ・・・」
「みんな、子供、連れてない・・・」
「自分ひとりだけで、歩いてる・・・」


と、『今ここにある自由』に気づき動揺し始める。

「うろうろさんがクラスコンサートに誘ってくれたおかげだよ!!」
「そーだよ、そんなんでもなきゃ旦那に子守り頼めないし!
『これ、絶対聴きにいくからっ!子供よろしくっ!』って前々から言い聞かせて、出てきたんだよ!」
「うちもだよ!!・・・私たちに、自由な夜を、ありがとう!!!」

ママ友たち、大盛り上がり。

私はずっと
『自分がコンサートやリサイタルなんて開いたって意味がない、私みたいなのの演奏にお金払わせるのも悪いし、もっと上手い人の演奏会なんてくさるほどあるし』と思ってきた面があり、『私の演奏を聴きに来てください』なんておいそれと言えなかった。

正直、今回だって直前に夫がダウンして最後の追い込みができず、クラスコンサートだからお客さんは無料とはいえ、わざわざ聴きに来てもらうのも悪いような、詰めの甘い演奏しかできない気がしてきてかなりナーバスになっていたのだ。

でも、私が『演奏するから聴きに来て』と誘うことで、思わぬものを提供できるんだ。そりゃ私の演奏自体も上手いに越したことはないけど、でも来てもらった人にあげられるのは、それだけじゃないってことなんだ。

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