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And the livin' is easy

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他のクリエイターさんの記事で感銘を受けた記事。ブルース調。
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#心

この先もずっと きっと

 何かを見ると、何かを聞くと、それを引き金に何かが思い起こされ、気持ち悪い。  その何かは、正直に言えば、よくわからない。  どこかで見たことがあるような気もするし、見たことはないかもしれない。現実なのか、夢なのか、それさえも判別がつかない。  ここのところは特に、ひどい。  気持ち悪くなるまでいかなくても、何かが映し出されそうになり、気持ち悪くなりそうになる、そんなことが、多くなっている。  どちらが先かはわからないけれど、落ちていることも、関係があるのかもしれな

わたしは ひとり

 わたしには もう  ううん はじめから  そう きっと そう  はじめから いない  だれも そんなひと  いなかった だれも  わたしには はじめから  うぬぼれては いけない  わすれては いけない  わたしには そうなんだ  だれも いない  わたしの はなしなんて  きいてくれる ひと  どこにも だれにも  いない いない から  わらえば いいんだ  あかるく はなせば いい  それだけで いい  それだけで いい から  

「大丈夫」 その言葉に責任や根拠がなくても構わない ただ、そう言って背中をさすって欲しい時が 老若男女問わずあると思う これ以上、痛みが重ならないように 少しでも早く傷が癒えるように 絆創膏で傷を保護するように 患部に薬を塗るように 優しい声と体温の贈り物「大丈夫」

「母の日」の白い花

「母の日」が過ぎ、 花屋の店頭からカーネーションが消えた。 一週間前は、赤や黄色のリボンに飾られた鉢植えが、 ところ狭しと並べられていたのに。 私は、14歳の春に母を失くした。 家は父と兄と私の三人暮らしになり、 私は仕事を持つ父を助けて家事を分担するようになった。 母を失った悲しみは例えようもなかったけれど、 毎日、下校後に買い物をし、夕飯の下準備をする、 その役割を全うすることが、涙を忘れる手助けになっていた。 一周忌が近づいてきた頃、 仏前に供える花を買いに

昨日と違う道で帰ってみた

寒さは ほんの少しやわらいできた 昨日と違う道を帰ってみた 駅から家までの帰路は3通りある いや本当はもっともっと多くの帰路がある ものごころ付いてからの50年ほどに たくさんの選択肢があった 大きな選択肢もひとつだけではなかった 意思によるもの 意思によらぬもの なにかが異なれば違う道へ入っていったよう思う 大きな選択肢はひとつふたつではなかった 意思によるもの 意思によらぬもの 就職活動という言葉は似合わないフロムAという求人誌でのアルバイトが入り口だ

喪失と銀色、

金属製の食器を洗っているときの、銀色の匂いが苦手だ。 洗い物という作業は不思議なもので、溜まっているのを見ているときはとても手をつけたくならないくせに、いざ始めてみると鼻唄を歌いだしたくなるくらいには楽しい。 洗剤は割と躊躇なく使ってしまうので(SDGs的にはよろしくない、今風に言ってみた)たっぷりと泡に塗れた食器の一つひとつを、指先がうたうまで丁寧に磨く。そしてシンクが地道に洗われていくのを眺めていると、私の中に溜まっていた感情の残りかすも気がつけば落ちている。 淡々