マガジンのカバー画像

医者の後悔

16
医者は後悔しても口に出すことは少ない。でも後悔の連続だ。
運営しているクリエイター

#患者さま

遅すぎるのは承知だが謝りたい

遅すぎるのは承知だが謝りたい

≪看護師さん、ごめんなさい≫

その看護師さんは、研修医時代からの知り合いで、若いころの写真はアイドルのようにポーズをとって笑っていた。機知に富み仕事もできた。同世代であり話も合った。40代で彼女は主任となり、ゆくゆくは師長となるはずだった。
自然気胸の患者さんに胸腔ドレーンを挿入することになり、彼女が介助についた。患者さんの脇にメスを入れるが、介助が一向にすすまない。彼女はうろうろ、おどおどする

もっとみる
患者さんの立場になって、と言うけれど

患者さんの立場になって、と言うけれど

肺がんの患者さんが入院していた。その患者さんは第4病期もすすんでおり、あと1か月程度であろうと家族には説明していた。その後、2週間が経過していた。家族は患者さんと話をし、患者さんも穏やかであったが、家族が帰宅した、その夜急変した。
亡くなってから家族に責められた。「最期に、手を握って、お父さんありがとう」と言いたかったと。家族の悲しみは、怒りとなって私に向けられた。病院の投書箱に不平を並べた手紙を

もっとみる