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父母の記録

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父母の覚悟を見届けた。記録しておかなければ。
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#満蒙開拓団青少年義勇軍

記憶を失っていく、それでいい

記憶を失っていく、それでいい

≪失っていく過程≫

施設に何年もいることになった母は自宅に帰りたがった。父は「帰ってどうするだ」といさめていたが、父だって帰りたかった。母は「おじゃんぼん(葬式の方言)で帰れる」と言って諦めていった。その後、父に言われたのか帰りたいと言わなくなったのが却って哀れであった。
遠方で働いていた私は医師を辞めて帰ることも考えたが、地元にいた兄が亡くなったばかりであり、兄の妻もがんで入退院を繰り返してい

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父はシベリアに4年間抑留された

父はシベリアに4年間抑留された

≪満蒙開拓団青少年義勇軍≫

1940年父は14歳で満蒙開拓団青少年義勇軍となった。農家の三男であり、夢の大陸で開拓をという教師にそそのかされてひとり渡満した。当時の身長は142㎝、体重40㎏との記録がある。子供ではないか。
17歳の時、父の父親が死亡するが、関東軍の指示で帰国できない、兵隊に行ったと思って諦めてくれという故郷に宛てた手紙が残っている。
1945年5月、19歳でいわゆる根こそぎ動員

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