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ここは、子どもを診てもらえるよいメンタル・クリニックかなのか?

駅を降りれば、眼前はコンビニかメンタル・クリニックか

メンタル・クリニックが雨後の筍のように増えています。東京都内では駅から出るとそこはコンビニかメンタル・クリニックかと思うほど、増えています。

メンタル・クリニック(精神科であったり心療内科であったりしますが、実態はほとんどが精神科です)は以前のようなスティグマは感じなくなっており、堂々とオープンし、爽やかなホームページや謳い文句とともにクリニックが開業を続けています。私のような病院勤務からすると、競争相手が多すぎて共倒れにならないのか不思議に感じます。

実際に調べてみますと、以下のような内容のページを見ることが多いです。

厚生労働省の医療設備数調査によりますと、今から30年前では精神科の診療所の数は1,425施設であったのに対して、2014年では6,481施設に大幅に増加しています。これは現代の日本社会にニーズがあることが一因でもありますが、新しく医師となった人がこのニーズを考えた上で精神科を選び、精神保健指定医を取得する医師が増えたことも理由の1つとなっています。また、精神科の場合、医療機器を多く揃えなければいけない診療科と比較すると、医療機器が少なくて済む事から、比較的容易に開業しやすいことも挙げられます。開業資金としては他の診療科より安く済みますが、それでも2,000万円程度は必要となってきます。


メンタル・クリニックは1階にはない

普段はあまり気にしないことですが、メンタル・クリニックは1階にはほとんどありません。整形外科や内科などは体の悪い方も多いですから、階段やエレベーターを使わずにアクセスしやすい建物で開業されていることが多いです。しかし、メンタル・クリニックは別です。それはなぜか?

メンタル・クリニックに入るところを見られたくない

ビルなら、どの階に行ったのかはわかりません。なので、都会のメンタル・クリニックの多くはビル診療で2階より上にあることが多いです。都内に平屋のクリニックを構える予算的な問題もあるかと思いますが、伝統的に精神科はそのような理由で2階より上にあるのです。


メンタル・クリニックは開業の資金が少なくても済む

 もう一つ、若い人たちがすぎに開業するのは、開業資金が少なくて済むからです。そして手術などがなく、その訴訟リスクが低いこともあるでしょう。クリニックも手術室などは必要ないことから、診察室がいくつかあるだけで済みます。

良いメンタル・クリニックは地域の支え 

良いメンタル・クリニックは地域の支えです。入院治療を行うような精神科病院は敷居が高くて行きにくい、一方で大学病院や総合病院は混雑しているし、通院時間が合わない。駅前のクリニックなら夕方や土曜日もやっているし、地域のメンタルヘルスの問題を抱えた人たちには通いやすいでしょう。ただ、メンタル・クリニックだからといって予約が空いているわけではありません。どこもいっぱいです。初診予約をしばらく待つことがあるでしょう。

私だったら、あまり通いたくないメンタル・クリニックは?

私の個人的な感想ですが、以下のようなメンタル・クリニックには私は通いたくないですし、知人にも、通院中の患者さんにも勧めません。

クリニックや病院を選ぶのは、引き算です。日本のように均一な医療を受けられる国では、足し算は引き算した上で考えるべきでしょう。

・ 十分なエビデンスが蓄積されていない治療法を大々的にアピールしている。

・ キレート剤やサプリメントを販売している。

・ 嘘のような本当の話ですが、院長が精神科専門医を持っていない。

・ Bz系の薬剤の処方が多い。


子どもを見てもらいたい場合は以下も追加

・ 日本児童青年精神医学会の認定医を持っていない。

・ 子どものこころの専門医を持っていない。

・ Bz系、抗うつ薬の薬剤の処方が多い。

・ コンサータ、ビバンセの処方医を持っていない。

・ 子どものメンタルヘルスに関する入院治療をしたことがない。

追記1)抗うつ薬は大人では全てのうつ病に効果がありますが、子どもは数種類しか有効性のエビデンスが海外でもありません。日本では、子どものうつ病に対してその有効性と安全性が確認された抗うつ薬はないです。抗うつ薬を内服することで、アクチベーションシンドロームや中断症候群を引き起こす可能性がありますので、投与は慎重にするべきです。

追記2)入院治療をしたことがないと書きましたが、それは重症例を見たことがないということです。重症例を見たことがないと軽症との区別つかず、治療が進まないまま年月を過ぎることがあります。入院治療が必要か否かを判別しる専攻眼が求められると言えるでしょう。


どんどん増えるメンタル・クリニック。それこそ、相性が大事な世界です。開業医の先生方に支えられながら、私たちのような勤務医が成り立っています(給料が違うけど・・・)。うまく連携し、持ちつ持たれつやって行きたいです。