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瀬戸内国際芸術祭2019 女木島「家船」

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家船・女木島漂着に関連した記事をまとめています。(出典が記載されている記事は、月刊美術批評WEBマガジン「レビューとレポート」掲載記事)
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記事一覧

KOURYOU「家船」制作インタビュー

(聞き手=平間貴大) 瀬戸内国際芸術祭2019(以下瀬戸芸)(1)会場の一つである女木島は、高松港から北北東約4キロメートルに位置する瀬戸内海の島であり、おとぎ話「桃太郎」に登場する鬼ヶ島としても知られている。この女木島でKOURYOUが発表した作品が「家船」だ。 瀬戸内国際芸術祭2019「家船」外観 撮影:齋藤葵 家族で船に住み、東アジア一帯で漁業をしながら移動生活をしていた漂海民は、瀬戸内海で「家船」と呼ばれていた。既に消滅したと言われている彼らの歴史は古く、古代か

レビューとレポート 「家船」特集 / 第10号(2020年3月)

今月号のレビューとレポートはKOURYOU「家船」の特集号となります。 _____________ [1]家船、出航します!  KOURYOU https://note.com/misonikomi_oden/n/n095b9b4efe8e _____________ 【連載】家船参加作家 [2]CLIP.1 荒木佑介インタビュー 聞き手=KOURYOU https://note.com/misonikomi_oden/n/n99325e19b693 [3]C

レビューとレポート「家船特集」  資料に見る家船の進捗状況 ~船大工編~

構成=平間貴大 瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)2019に出展されたKOURYOUの作品「家船」は様々な作家・協力者によって共同制作された。参加人数が多く、作品構造もかなり複雑な為、一言でどのような作品かを説明するのは難しい。このテキストでは「家船」がどのように制作されたのかを時系列順に見ていきたい。 KOURYOUは各作家の役割を細かく把握していたが、一人で全てを管理するのは難しく「春会期前はシゲル・マツモトさん、夏会期前は伊藤允彦さんが管理してくれました。」という。その

レビューとレポート「家船特集」  資料に見る「家船」の進捗状況 ~家船LINE編~

構成=平間貴大 作品「家船」は様々な作家・協力者によって共同制作されている。参加人数が多く、作品構造もかなり複雑な為、一言でどのような作品かを説明するのは難しい。このテキストでは「家船」がどのように制作されているのか時系列順に見ていきたい。 先月配信した【レビューとレポート「家船特集」資料に見る家船の進捗状況~船大工編~(https://note.com/qqwertyupoiu/n/n67ad85bdc3c2)】では、「家船」の主に外観の船体部分を集団制作した作家たちが

レビューとレポート「家船特集」  資料に見る「家船」の進捗状況 ~リサーチ組LINE編~

構成=平間貴大 瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)2019に出展された作品「家船」は様々な作家・協力者によって共同制作された。この作品は参加人数が多く、作品構造もかなり複雑だ。作家たちは会議や制作の日程をLINEを通して情報共有していた。 これまで「レビューとレポート「家船特集」  資料に見る家船の進捗状況 ~船大工編~」(https://note.com/qqwertyupoiu/n/n67ad85bdc3c2)、レビューとレポート「家船特集」  資料に見る「家船」の進捗状況

高松の古本屋から 藤井佳之(なタ書)×齋藤祐平(YOMS)インタビュー | 家船特集

瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)2019で発表された「家船」の会場である女木島は、高松港からフェリーでわずか20分の場所に位置する。高松港から南へ数分歩くと、日本最長と呼ばれるアーケード高松中央商店街があり、様々な店や人で賑わっている。このアーケード商店街は8つの商店街の総称で、瓦町駅付近にある南新町商店街を一筋路地に入ると、藤井佳之が店主を務める完全予約制の古本屋「なタ書」(図1)があり、田町商店街から路地に入ると齋藤祐平が妻・末度加と共に経営する古本屋「YOMS」(図2)が

調査報告書4「板子一枚、下は地獄」-瀬戸内海島嶼調査報告 | 家船特集

荒木佑介+伊藤允彦+柳生忠平 漁師は夜漁が多く、仕事の場も「板子一枚、下は地獄」といわれた海の上である。時間的にも空間的にも、農民や町人とは生活様式が異なり、この浮き世で縋って生きる神々も違っていた。 『瀬戸内の被差別部落』沖浦和光、解放出版社、2003 「調査依頼」荒木 瀬戸内国際芸術祭2019の開催にあたり、参加作家であるKOURYOUさんから調査の依頼があった。依頼内容は多岐に渡り、打ち合わせの際に渡されたメモは以下のようなものだった。 荒木さん(家船のお父さん→

対談/黒瀬陽平×岸井大輔 | 家船特集

2020年2月3日、東京・代々木にて 黒瀬:瀬戸内国際芸術祭(以下瀬戸芸)2019の会場、女木島でKOURYOUさんが「家船」を作られたわけですが、あの場所は僕やカオス*ラウンジにも思い出深い場所で、以前自分達も同じ場所で展示をしました。 瀬戸芸はスケールの大きな芸術祭で、広いだけでなく島々に別れており、個々の島が独自の文化圏やコミュニティをもっていて、それらを巡ること自体が芸術祭の体験だという所に重きがある。ですが、瀬戸内の島々を観光として巡り歩く人たちの体験に対し、出品