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オンラインボランティア1,000名で実現した やさしい字幕プロジェクトの話

こんにちは。NPO法人eboard代表の中村 @koichi_n です。 前回につづいて、eboardの映像授業に、わかりやすい字幕をつける「やさしい字幕」プロジェクトのふりかえり記事です。前回記事はこちら ↓↓↓ から。

第1回 やさしい字幕とは?映像授業に字幕をつける意味
第2回 オンラインボランティア1,000名を集めた話 ← 本記事
第3回 20人チーム全員リモート採用・リモートワークから働き方を考える

やさしい字幕ができるまで

まずは、やさしい字幕ができるまで、その制作工程について、説明させてください。この工程は、テキストの「やさしい日本語」化や、動画の字幕づけ、翻訳作業でも役に立つのでは?と思います。

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① 自動文字起こしファイルをつくる
字幕をつくるとき、ゼロから文字起こし(音声を聞いて文字にする作業)をすることはしません。今は、音声認識でかなりの部分の音が拾えるので、それを使って文字起こしをします。

② やさしい字幕に書きかえる
ここが人力になる部分。eboard内で作ったマニュアルに沿って、①のファイルを書き換えていきます。7〜8分の動画で、4〜5時間くらいの作業。やさしい字幕プロジェクトでは、ボランティアの方が担当してくださいました。

③ やさしい字幕を仕上げる(レビュー)
②の字幕を、仕上げ工程のマニュアルや教科別の細かな記載ルールに沿ってチェックし、仕上げていきます(レビュー)。1本3時間くらいかかります。

②③の作業だけで、約10,000時間が必要ということがわかりました。2020年当時のeboardの職員全員が、この作業だけをしつづけても、1年以上かかる計算に…

そこで、団体内で検討した結果、制作されたこの字幕は、永続的にすべてインターネット上で無料公開されるものなので、これは私たちだけでなく、広くボランティアを集めようということになりました。強敵を倒すので、このオラ(やさしい字幕)に、ちょっとずつ元気をわけてくれ…!! というわけです。

「1,600本の映像授業に字幕をつける」という目標に対して、いわゆる「KPI(Key Performance Indicator)」が「参加ボランティア数」になりました。このプロジェクトがうまくいった理由の1つが、KPIを適切に切り替えて推進できたことだと考えています。

1000人のボランティアを集める

目標が決まれば、あとは数字を愚直に追うだけ。複数本やってもらえる方もいるのでは?という想定で、1,600本の映像授業に対して、1,000人を目標に集めることになりました。すでに企業・団体で取り組んでもらえるところも見つかっていたので、社員ボランティアから500人、個人で500人を目安に。ここからは、主に個人ボランティアの話とさせてください。

ちなみに、eboardはNPOながら、それまでボランティアの少ない団体でした。実績としては、断続的に事務作業を手伝ってくれる方が、これまでにのべ10名ほど。そこから、1,000名を集めようという無謀な挑戦でした。

ボランティアを集める上では、とりあえず、以下のように考えました。
ボランティア数 = ①ボラ認知人数 × ②説明会申込率 × ③ボラ申込率

「在宅 × 好きなときにできる」作業だからこそ、説明を受けずに自由申し込みにしてしまうとドロップアウト(途中棄権)してしまうと考え、説明会の参加は原則必須に。

9月の説明会は、毎回SNSの広報だけで、10名ほどの参加がありました。しかし、10月に入ると参加人数は減り、10月11月は参加人数が2,3名ということも。「これ、終わらんのでは…」という考えがチーム内にも広がりました。

そこで、②説明会申込率、③ボラ申込率(毎回約80%)は、あまり伸ばせないと思ったので、①ボラ認知人数を伸ばそうと、いろいろなところに募集を掲載してもらいました。関連しそうなfacebookのグループ、ボランティア協会などなど。その中の1つが、activoというボランティア募集に特化したサービスでした。

当初は、activo経由の応募もあまりなかったのですが、2020年12月ごろから新型コロナ感染拡大の第3波に入り、再び「ステイ・ホーム」が呼びかけれるようになりました。年末年始、在宅で時間に余裕もある中で、多くの方が「私にも、このコロナ禍で できることはないか?」と、ボランティアを探すようになったのでは?と思います。

ここで、「在宅×好きなときにできる」字幕のボランティアに、activoから大量に流入するようになりました。さらに、参加いただいた方にも、口コミやネットでの拡散をお願いし、結果、年末年始の説明会は、毎回30〜40名が参加してくださるようになりました。

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↑のようなスプレッドシート を スタッフの 小林 が作成してくれ、常に自動で各種の集計が更新されるようになっていました。2021年1月から、稼働予定人数がグッと増えているのが分かります。

最終的には、2本目の字幕にも取り組んでくださる「おかわり率」が50%を超えていたので、500名集める必要はなくなり、プロジェクトの第1期では、462名の個人ボランティアの方に、ご協力をいただくことができました。ボランティアの皆様、本当にありがとうございました。

フルリモートでのレビュー体制づくりへ

しかし、ボランティアの皆さんの稼働が年末年始に上がると、③ やさしい字幕を仕上げる(レビュー)工程の人が足りなくなる自体が発生しました。「先に考えておけよ…」と言われそうですが、運営チームも計0.5×4人くらいしかいなかったので、ボランティア集めだけで、必死でした。

ここが「1,600本の映像授業に字幕をつける」という目標に対して、KPIが「レビュー進捗数」に移り変わったタイミングでした。
レビュー進捗 = ①レビュアー人数 × ②平均勤務時間 × ③レビュー効率

とはいえ、2021年1月時点でのレビュアーは、4名程度。目標としていた2021年6月末までに終わらせようと思うと、20名ほどの体制(有給のスタッフ)をつくる必要がある、という話になりました。

最終的に一番多いときでは、20名の方にレビューを担当してもらったのですが、実はこの20名全員が、オンライン採用・リモートワークでプロジェクトを終えることができたんです。

これは、アフターコロナの働き方を考える上でも、おもしろい事例ではないかと思います。というわけで、、、第3回につづきます。

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