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まとめ:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果

こんにちは。NPO法人eboardの中村です。令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果が、昨日10/13に公開されました。

これ、なんの調査かというと、小中高生を対象に、不登校、いじめ、暴力行為や自殺について、唯一国が行っている全国調査。年に1回発表されるものなんですが、今回の調査が注目されているのは、コロナ後初めて公開された調査というところ。新型コロナの感染拡大によって、不登校や自殺の増加が取り上げられていましたが、それが初めて数字で明かになっています。

NPO法人eboardの内部では、毎年こちらの調査を内部で共有し、それを元に、各種資料の数字やグラフの更新をやるのですが、せっかくならば、皆さんにも共有しよう!ということで、まずは、小中学生の不登校のパートに限りですが、まとめてみました。

記事内の画像、データご自由にご利用ください

この調査を見て、e-Stat(政府統計)からエクセルをダウンロードして、(文科省のグラフでもいいのだけど)グラフを作って…ということを、日本全国のNPO団体や教育委員会の皆さんがされると思うと、それは、とてもよろしくない!ので、記事中の画像やデータは、ご自身の責任と判断で、ご自由に、どんどんご利用ください。

ただし、ご利用の前にFacebookやTwitter、LINEなどで記事をシェアしてください!あなたの周りにも、使いたい方がいるかも。不登校の子の状況を知ってもらいたい。(記事のリンクも貼ってくれると、なお嬉しい!)

加えて、記事中の全てのデータはe-Statからダウンロードしたものなので、こちらの利用規約もご一読いただくことをお勧めします。出典は明記しましょう。

不登校児童、小学校では「4年で2倍」に

コロナ禍、メディアで取り上げられることの多かった「不登校」。R1年と比較して、小学校ではちょうど1万人(=約18.7%)増加し、63,350人に。これは過去最大の増加で、これまで「小学校では 5年で2倍に増えている」とお話することが多かったのですが「4年で2倍」のペースで増加してきたことになります。中学校は、4,855人(=約3.7%)増加し、132,777人となりました。

図6

文部科学省 令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の
諸課題に関する調査」より、NPO法人eboardが作成

「無気力」「不安など情緒的混乱」による不登校が増加

そうなると気になるのが、増加の理由。やはり、感染を避けて登校を自粛した子もいたのかな?と思いましたが、「新型コロナウイルスの感染回避」を理由とした長期欠席は、含まれていないとのこと。

長期欠席の理由に「新型コロナウイルスの感染回避」を追加した(=「不登校」にはカウントされないということ)。「新型コロナウイルスの感染回避」により30日以上登校しなかった児童生徒数は,小学校14,238人,中学校6,667人,高等学校9,382人となっている。

そこで「不登校の要因」を整理してみました。要因の変化が見れるように、今回の調査と、10年前の平成23年度のもの、コロナの影響が見れるように令和元年度のもの を比較しています。

図4

文部科学省 平成23年度、令和元年度、令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より、NPO法人eboardが作成

(そもそも不登校の要因を「本人に係る状況」として、無気力や不安が最多であるという調査は、そもそもどうなの、というのはさておき…)

10年前のH23年と R1/R2年の比較を見ると、「いじめ」を要因とした不登校は大きく減少しているものの、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」を要因としたものは増加。これは「いじめ」の解釈の違いで差が生まれただけで、友人関係に悩むのは変わらないのでは?と思いました。その他、増加や減少はあるものの、全体の割合に大きな変化はないですね。

続いて、R1年とR2年の比較で顕著なのは、「学校に係る状況」の要因がいずれも減少していること。コロナの影響により、そもそも通学日やクラブ活動が減ったこと、接触を避ける・距離をとることを意識した影響で、そこで起こるトラブルが減ったのではないか?と思います。文科省の調査概要にも、そうした記述がありました。

生活環境が変化し児童生徒の間の物理的な距離が広がったこと,日常の授業におけるグループ活動や,学校行事,部活動など様々な活動が制限され,子供たちが直接対面してやり取りをする機会やきっかけが減少したこと,年度当初に地域一斉休業があり夏季休業の短縮等が行われたものの例年より年間授業日数が少ない学校もあったこと,新型コロナウイルス感染症拡大の影響による偏見や差別が起きないよう学校において正しい知識や理解を促したこと,これまで以上に児童生徒に目を配り指導・支援したこと等により,いじめの認知件数が減少したと考えられる。

一方で、「生活リズムの乱れ・あそび・非行」、「無気力」「不安などの情緒的混乱」の要因が増加しており、こちらもコロナの影響がうかがえます。大人でも在宅勤務で生活リズムがつくりづらくなったり、長引く自粛・ステイホームでストレスを抱える人が増えました。それは子ども達も例外ではなく、さらに、まわりの大人や社会の変化を敏感に感じ取ってしまう子もいたのではないか?と思います。

数は少ないものの、低学年での不登校増加が顕著に

この調査、不登校数や原因については、これくらいしかデータがないのですが、ここはもう少し踏み込んで、増加の傾向を把握したいところ。今度は、学年別の不登校児童・生徒数を、経年比較してみました。これは全ての年度のデータを落としてこないと、作れないので、少し時間がかかりました。

実数だと、不登校の子の数が学年によって大きく違っていて、比較しづらいので(例えば、R2年度 小1:3,395人、小6:19,881人)、H23年の各学年の人数を100として、比べています。

図3

ご覧の通り、中学より小学校の方が増加率が高いのですが、さらに小学校の中でも、学年が下がるほど増加率が高い傾向に。H23年からの10年間で、小6は2.64倍ですが、小1では3.25倍に増えています。

「低学年からの不登校が増えている」という話は、聞くことが多かったのですが、こうして数字にも現れています。ただし、絶対数は学年が上がるごとに多くなるので、小1はやはり全学年で1番少ないです。

不登校児童生徒への指導・相談等の状況

では、不登校になった子は、どうなるんでしょう。この調査では、「指導・相談等を受けた不登校児童生徒数」というものが、調査されています。何を持って「指導・相談等を受けた」かは、ちょっとわからないですが、、、学校や自治体によって、認識にばらつきはありそう。

図7

ご覧の通り、「学校内」「教育支援センター(適応指導教室)」「民間団体、民間施設」で相談・指導を受けた機関が分類されていますが、どれもこの5年でしっかりと増加しています。

まだまだ不十分とはいえ、SSWやカウンセラーの配置増、学校内での学習相談室等への対応が身を結んでいるのでは、と思います。教員定数がギリギリor 割っている学校も多い中、特別支援学級の先生が掛け持ちで、学習相談室を対応されているようなお話、たくさん伺います。

個人的には先生の意識は、「教室に頑張って入ろう」ではなく「不登校の子を別の場所や別の学び方で、サポートしよう」に変化してきていると、感じることも多いです。

そして、「民間団体、民間施設」の伸びも大きい。ここには、病院や児童相談所なども含まれますが、最も割合が大きいのは、いわゆるフリースクール、オルタナティブ・スクール。その他NPO等が運営されている、不登校の子の居場所も増えてきました。

「教育支援センターがあまり伸びてない、むしろR2はへっているではないか!」という声が聞こえてきそうですが、感覚過敏な子などもいる中で、センター1教室当たりの受け入れ数を増やすのは、難しいのでは、と思います。特に、R2年度以降は、感染防止対策も必要です。

「教育支援センター」での受け入れを増やすには、教室数を増やすしかないのですが、コロナ禍で先行きが見えない中、教育委員会としても新設・増設の動きを見送ることが多かったのでは、と思います。利用を自粛されたご家庭も多そうです。

ICT等を活用した学習活動の出席扱いが1年で4.3倍に

不登校の子の学習について、今年特筆すべきなのは「自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数」でしょう。

図8

R1年には、小学生174人、中学生434人だったのが、R2年では、小学生では820人、中学生1806と急増しています。これは、1人1台端末が整備されたGIGAスクール構想の影響もあると思いますが、それ以上にコロナや一斉休校の影響が大きいのでは、と思います。

R2年の3月時点で、持ち帰り環境まで整備されていた自治体は、そこまで多くないためです。R2(2020)年の3-5月の全国一斉休校や、それに伴う家庭でのオンライン学習の認知が進んだことの影響の方が、より大きいのではないでしょうか。

おまけ : NPO法人eboardの取り組み

おまけとして、私たちNPO法人eboardの不登校に対する取り組みのご紹介です!

私たちeboardが開発・運営する ICT教材eboardは、映像授業やデジタルドリリで、自分のペースで学習ができるオンライン教材です。個人でのご利用や公立学校・非営利活動では、無償でご利用頂くことができます
※ 有料のフリースクールや学習塾等の収益事業では(同種の教材の1/5〜1/10)、費用の負担をお願いしています。

本調査にも出てきた、教育委員会の教育支援センター(適応指導教室)や学校内の学習相談室。民間では、不登校の居場所支援をされているNPOやフリースクールでも、たくさん使ってもらっています。

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