うしろすがた

下りのエスカレーターに乗っているとき、私の前に立っている20代くらいの女性がいた。

彼女は、首をかったるそうにだらんと下に曲げている。
おそらく携帯をいじっているのだろう。

私は思った。
なんて姿勢がわるいのだろうと。

服のデザインのせいか、首ラインの丸い形が彼女の猫背をより一層際立てている。

いや、姿勢がわるいなんて思っておきながら、これはもしかしたら、若さへの嫉妬だったのかもしれない。

若い子の猫背は、あどけなく、若いことの象徴のように見えてくるのだ。

アニメで登場する女の子たちは、大抵みんな姿勢がいい。
いちいち言わないだけで、バレエダンスを習っている背景があるにちがいない。

私は、30代である。

気が緩むと簡単になってしまう猫背。
このうしろ姿をみた人は、「若さの象徴」なんて思いはしないだろう。

その日の仕事の疲れや、はたまた無気力人間として見られたリ、はたまた
人生で背負っているもの(いまのところない)感じてしまう人もいるやもしれない。

それらを回避すべく、今日も私はエッセイを書きながら丸くなっていく背中を12回伸ばした。


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