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『夏目友人帳』⑫内向型の静かな強さ:ひとりで立ち向かえる貴志の使命感

『夏目友人帳』⑫内向型の静かな強さ:ひとりで立ち向かえる貴志の使命感

『奪われた友人帳』は、内向型の夏目貴志が、クラスメートと離れてひとりで読書しているところから始める。イキナリ内向型の貴志のキャラを打ち出し、クラスメートとの距離感がわかる。クラスメートたちがサッカーをしていて、誰かの蹴ったボールが、塀の上でソロ読書をしている貴志の頭に当たる。クラスメートは「夏目!危ない!」とか口々に叫ぶのだが、貴志は本に集中していて気づかない。


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このなにげないイントロ部分で、クラスメートが貴志を好いている事もわかるし、貴志を心配していることもわかる。


向こう側に落ちたときには「ついでにボールを拾ってくれ!」と、貴志は、まったく孤立していないことが描かれている。お互いにちょうどよい、距離感が保たれている。


塀の向こう側に落ちた貴志は、ボールを取るときに地面から湧き出た妖怪に追いかけ回される。その時に、封じられた結界を千切ってしまう。


「前にもこんなことがあった」と貴志は感じるのだが、その妖怪に馬乗りされて、首を絞められた時には、必殺の一撃を浴びせているやる時はやる男、という一面が垣間見える!


貴志が助けを求めた時に、知らんぷりしたニャンコ先生とケンカ別れをして家に帰る。けれども家に帰ると、窓からニャンコ先生の真っ黒版の猫が2階の窓から侵入してくる。貴志は、真っ黒になったニャンコ先生だと勘違いして、ひとりで部屋で笑い転げる。貴志だって「大笑い」するのだ!当たり前だけど。こういうところは普通の高校生、ネクラではないこともわかった。


貴志はカン違いしたまま「真っ黒版ニャンコ先生」を風呂に入れたりして、甲斐甲斐しく世話をする。そこに、酔っぱらった本物のニャンコ先生がご帰還。偽物の真っ黒版ニャンコ先生は、まんまと「友人帳」を奪って逃げ去ってしまう。


貴志は、真っ黒版ニャンコ先生を必死で後を追う。「大切な妖怪たちの命を預かっているのだから!」と。名前=命。命のかたに「名前」を差し出させた「妖怪の命の手形帳」は貴志の使命が詰まったものだ。


貴志は「友人帳」に名前のある妖怪たちに「名前」を返すことを「使命」としている。それが奪われたとあっては、貴志にとっては一大事にちがいない。悪用されたら、名前を書いた妖怪たち全員が「人質」になる可能性があるからだ。


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ここでは、奪われた「友人帳」を貴志が自分の命に代えても取り戻そうとする。貴志は単身で妖怪たちの宴に「犯人捜し」に行き、妖怪たちが人間に危害を加えるということを阻止しようと奮闘する。


貴志1人対妖怪100人というバトルなのだ。貴志は何の気負いも無く、戦闘に突入する。真っ黒版ニャンコ先生になってしまった「主様」と呼ばれた「妖」に「名前」を返すために、貴志は命すら投げ出す。妖怪たちに、もみくちゃにされながら、「耳を澄ませ、誰かが主様の名前を言う」と、バトルの最中でも冷静に対応した。内向型の思慮深さが集団で暴行されている最中でも発揮されている。そして主様の名前が「リオウ」とわかると、ニャンコ先生こと「斑」が貴志を救出。静かな闘志を燃やし、単身でも乗り込む勇敢さが内向型にはある。

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リオウは人間好きな妖怪だった。それゆえ人間と親しくして、何があったかわからないが封印されるという憂き目にあった。リオウに名前を返した貴志は、1件落着する。何百年も生き続ける妖怪たちに比べ、人間の命が短く儚いことを妖怪たちは良く知っている。だからこそ、人間と交わって親しくならないようにしている。妖怪たちにも「内向型」と、リオウやニャンコ先生のような「外向型」があるということがわかる話だった。

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12話「奪われた友人帳」あらすじ

小さな頃から、妖怪といわれるものの類を見ることができ、そのため周囲から疎まれてきた夏目貴志。
用心棒の妖・ニャンコ先生と共に、祖母レイコの遺品「友人帳」に書かれた妖怪達の名前を返す日々を送るうち、少しずつ、レイコのこと、妖のことを知り始めていた…。

ある日、ニャンコ先生にそっくりの黒ニャンコ先生に「友人帳」を奪われてしまった夏目は、妖怪達の大切な名前を取り返すため、必死にその後を追う。妖怪の宴に向かったと聞いた夏目は、自分の危険も顧みず、その宴に向かうとニャンコ先生に告げる。


名前物語①『夏目友人帳』でもわかる「名前=命」
https://note.com/ebisumoji/n/nb2ea34f808ec

名前物語②『夏目友人帳』の「夏目貴志」という名前を読み解くと?
https://note.com/ebisumoji/n/n9bc95f55160e

名前物語③貴志に会いに来る妖怪たちは自殺志願者。
https://note.com/ebisumoji/n/n2a56a59fedd0

名前物語④穢された名前など要らん by 時雨
https://note.com/ebisumoji/n/nd25b8d0198ac

名前物語⑤『夏目友人帳』にみる八百万の神々の系統の名前「さんと+みくり」
https://note.com/ebisumoji/n/na4dbb55e83c4

名前物語⑥ この世はパラレルワールド!水底の燕と人形姫伝説
https://note.com/ebisumoji/n/n045d0405e5ee

名前物語⑦『夏目友人帳』の《異質》な者は孤独という宿命
https://note.com/ebisumoji/n/n6ee3494b7e69

名前物語⑧異種間交配は神の摂理のタブー!名無しの女、名を名乗れ!
https://note.com/ebisumoji/n/nf0ebd8146ba4

名前物語⑨表はスター、副業は妖祓いの「名取周一」の名前の秘密
https://note.com/ebisumoji/n/n3aa9bbfba563

名前物語⑩ 夏目友人帳「あさぎ」と「あかがね」の八百万的な神様解釈
https://note.com/ebisumoji/n/n9181b295a7e0

『夏目友人帳』⑪「内向型」夏目貴志はいつも物語をシミュレーション!
https://note.com/ebisumoji/n/n3b511d52f423


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