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名前物語⑥ この世はパラレルワールド!水底の燕と人形姫伝説
この世がパラレルワールドだというのが、『夏目友人帳』のテーマでもある。
人間や妖怪や八百万の神々が、共に日本で暮らしているのにも関わらず、
お互いが見えないの。
けれども、妖怪や八百万の神々からは人間は見えているの。ただ人間の方からは「能力」のある人だけが「妖怪や八百万の神々」を見ることができる。
それは
「見えない普通の人間」からは不気味だし、理解できないから。「見える」人は子供時代に「嘘つき」呼ばわりされたり、友達ができなかったりする。
要するに共通概念が著しく違うから、どうしても話はかみ合わず、やがて「見える」ほうが「見えない」ふりをすることを学習しているのだ。
なんとも、悲しい話だが、人間って「違う」ことが怖い、
相互に違和感を感じるのだけれど、「見える」方は少数派。
マイノリティすぎて、黙っている方を選ばざるを得ないの。見えない方からは「イメージ」すらできない「世界観」だから。
それと、人間は見られることに苦痛を感じる。注目されたいのと監視されるのが違うように、見えない他者からの視線は、ほとんど暴力だとも感じられる。
夏目貴志は「見える」ほうの住人だけれど、メリットよりもデメリットが大きいようだ。
6話では燕の鬼が夏目に手助けを求める物語。
20年前にダムの底に沈んだ二葉村生まれの燕、巣から落ちたところを親切な
谷尾崎という男性に救われ巣に戻される。
しかし、その燕についた人間の匂いを嫌い、親はヒナを巣ごと棄ててしまうのだ。
自然の厳しい掟。
巣の外に落ちたヒナは「親が選別して放棄」したヒナだと言われている。
餌をとってくる環境や、ヒナの健康度によって親は全部のヒナを育てるとは限らないのだ。
燕は「親鳥」が巣ごと棄てたことが分かっていた。なぜなら落とされた当人だから・・・他のヒナには理解できなかったのではなかろうか?
体験していないってこういうことだと思う。
つまり、他のヒナは口をパクパクさせながら、親を待ちつつ餓死していった。燕は最後にのこったヒナだった。
燕を助けた谷尾崎は巣が全滅しても「生き物」「命」の気配を感じて、
毎日のように燕の餌を運んでいた。
燕は谷尾崎によって2度救われたわけだが、生き残れたことが幸せだったかというとそうでもない。
「悲しくて悲しくて鬼」になってしまったのだから。
燕は本来は「あたたかいものが好き」「優しさも好き」という
豊かな感受性を持っている。だからダムで村が沈んだ時も一緒に「成仏」するはずだった。
けれども「助けてくれた谷尾崎に一目会いたい」という未練が、燕を地霊として縛っていた。
願いが叶えば消滅できる・・・その願いをかなえるために、夏目は二葉村の妖怪村祭りに参加して「一晩だけ人間になれる浴衣」争奪戦に挑む。
おびただしい妖怪どもの苛烈な競争に夏目は太刀打ちできそうもなかったが、ニャンコ先生が「見ていられんわ、アホが!」と夏目を助け「浴衣」を手に入れることができた。
一晩だけの魔法を使って、谷尾崎と夏祭りでツーショット写真を撮った燕は消滅した。
夏目は谷尾崎を追って「青い浴衣の少女に会ったか」を確かめるしかなかった。
谷尾崎が見せてくれた写真を見て、夏目は不覚にも涙してしまう・・・
そう、あの世のものが一晩だけ、どうしても会いたい人に会う魔法、人と会いたいがゆえに、人の肉体をまとう一晩かぎりの魔法。
人魚姫、シンデレラの魔法使い、悲しいほど純粋な「あちら側からの」
アプローチは「叶ったら死」色々な状況で物語は今も続いている。
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