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ふるさと納税は本当に地方を救うのか?
短期的には地方を救い、長期的には国を滅ぼすというのが今のところの結論となります。
理由1:寄付額が希釈する
寄付先の自治体に届くまで寄付額が希釈し、ポータルサイト運営や発送代行、ワンストップ特例申請受理業務代行等を引き受けるふるさと納税事業者に流れ、税収の再分配を実現するために大きな代償を支払う構図となっているためです。
理由2:国の負担(借金)が増える
特別区以外の自治体が減収した場合、減収額の75%を国が補填する制度が存在します。この制度は、将来的に消費税の増加を引き起こす可能性があると考えられています。
また、消費税以外にもふるさと納税の財源を確保するために増税が検討される可能性もあります。
理由3:地方自治体がふるさと納税漬けとなり弱体化する
地方自治体にとって、ふるさと納税による税収が増えても地方交付税は減少しません。しかし、産業振興や企業誘致など直接税収を向上させる健全な施策に関しては、成果が上がるほど地方交付税が減少してしまうのです。
この結果、各自治体はふるさと納税の優先度を高め、表面的なマーケティングに集中することで、地域の骨となる重要な取り組みを軽視する問題が生じています。
「寄付額が希釈する」について
泉佐野市は以下のグラフで経費は全体の60%程度がかかると訴えています。
![](https://assets.st-note.com/img/1682868476419-Ach80d8woT.png?width=1200)
以下の記事からも返礼品経費率が60%と言うのは妥当なのでしょう。
60%はあくまで返礼品の調達やポータルサイトの掲載、送料、広告費までしか含んでおらず、実際はワンストップ特例の受理業務代行など返礼品経費以外にも多くの経費がかかっています。
朝日新聞が自治体や総務省に確認したところ、報告の対象になっている経費以外にも、多額の経費がかかっている例があることが分かった。多くが寄付の受領証明書を発行する際の送料やワンストップ制度の手続きにかかる事務費など、寄付を受けた後にかかる経費だった。
さらに、しばしば見過ごされがちな点として、ふるさと納税制度には自治体内部での人件費も含まれています。これは言うまでもなく明白な隠れ経費です。
これらを踏まえて阿賀野市に住む私が三条市に7万円のふるさと納税をして返礼品をメルカリで売った場合のお金の流れを雑に図解しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1682873260805-SWvYMXn24x.png?width=1200)
阿賀野市の減収分(25%)より三条市の増収分(20%)が少ないのは皮肉です。
※経費の数字は仮置きですが大きく外れてはいないはずです
ふるさと納税事業者が急増している理由がまざまざと分かります。 これはつまり国が借金してふるさと納税事業者を増殖させているようなものです。
そしてさらに、ふるさと納税事業者は自治体からファンミーティングなどの企画や実施を受託することで無事に観光予算にも浸食しています。
自治体がの人が「関係人口」と言いだしたら要注意です。
関係人口なんて人口は存在しないんですが、何度行っても理解されませんねw
— 木下斉 / 「日本の構造問題」を斬り、解決する! (@shoutengai) January 17, 2023
人口ってのはそれ自体に意味はなく、消費力と労働力と納税力としての役割なんですから、新しい関係人口なんてことを謳うこと自体が詐欺と同じなんですが、詐欺に乗っかるのが大好きな人は多いですね。 https://t.co/6uRi1eISmg
「国の負担(借金)が増える」について
前掲の図の通り、阿賀野市のふるさと納税収支がプラスマイナスゼロかマイナスの場合、7万円の寄付に対して国が阿賀野市に5万2,500円を補填しますので登場人物のうち、最も負担が大きいのは国となります。
地方交付税の不交付団体以外は減収分の補填が必要なため、ふるさと納税が増えれば増えるほど国の負担が増える可能性が高くなり、消費税の増税など将来的に自分たちや自分たちの子どもに跳ね返ってくるかも知れません。
まさにふるさと増税ですね。。
参考:
「地方自治体がふるさと納税漬けとなり弱体化する」について
税収がアップするので地方自治体としては魅力的な制度です。さらにふるさと納税で税収がアップしたとしても地方交付税交付金は削減されません。
ふるさと納税以外の施策で税収を上げた場合は地方交付税交付金が削減されますので、地方自治体がふるさと納税による税収アップを最優先で取り組むことについては極めて自然な判断となります。
しかし、その結果、地場産業振興や成長性の高い企業の誘致など自治体の基礎体力を高める施策よりもふるさと納税を優先する危機的状態を招き、自治体の実力低下とふるさと納税への依存という悪循環から抜け出せなくなる可能性が高まります。
ではどうすれば?
ふるさと納税を行わないことがベストな選択です。特に地方に住んでいる人にとっては自分の街の税収を下げて、他の街に目減りした納税をすることを意味します。
次点はふるさと納税をしたとしても返礼品を放棄することとなります。
しかし、どちらも利用者にとっては損をしているような気分になるため、この権利を放棄するのは難しいでしょう。
案1:ふるさと納税ポータルサイトをつかわずに直営サイトを利用する
ホテルを予約するときに旅行サイトを利用せずにホテルのサイトで直接予約するように、ふるさと納税も今後は直営サイトが返礼率が最高(ベストレート)となるよう今後は各自治体がポータルサイトでの返礼率を下げるかも知れません。
新潟県では燕市が直営サイト運用に取り組んでいます。
STUDIO AIやCanva Copilotのようなノーコードツールの登場により、燕市以外の多くの地域においても高額な委託費を投じることなく、自らの直営サイトを効果的に運用できる環境が整ってきました。
https://www.ebisumart.com/solution/furusato.html
案2:民間設置型のふるさと納税自販機を利用する
みやま市が記載している通り、自販機の費用対効果については十分な検討が必要ですが、その検討のために実施する調査やマーケティングにもコストがかかってしまいます。
短絡的に鉄道駅や道の駅に設置すれば良いというものではありません。
寄附の申し込み方法は、インターネットや郵送、来庁により寄附を受け付けており、約98%がインターネットからの申し込みとなっています。
さて、ご意見をいただいております「販売機などを設置してふるさと納税を道の駅みやまで買えるようにしたらどうか」についてですが、「道の駅みやま」は年間約60万人の集客があり、地元の方や観光客でにぎわっております。「ふるさと納税自販機」は令和3年12月に全国初導入され、現在では全国で7市町村がデパートやカフェ、ゴルフ場などに設置されている先進的な取り組みとなっています。山梨県小菅村では道の駅に設置されていて、物産館、ホテル等で使える商品券を発行されているそうです。しかし、この自動販売機の価格は1台500万円程度で、リースでも月10万円の経費が必要となり、本市で取り扱うには費用対効果などの検証が必要です。
藤枝市と静鉄リテイリングは、この問題の解決策として、ふるさと納税専用自動販売機を民間企業(静鉄リテイリング)が購入し設置することで、自治体(藤枝市)の負担を軽減しています。
案3:ワンストップ特例を利用せず、e-Taxで確定申告をする
余計な委託費や人件費をかけないためにもワンストップ特例は極力利用しない方が良さそうです。
また、国が負担すべきはずの所得税控除分を自治体の個人住民税控除で負担する点も無視できません。
![](https://assets.st-note.com/img/1682955519352-na9f6kMllI.png?width=1200)
案4:送料がかからないか、かかっても安いものを選ぶ
言うまでもなく、重量物の送料は大きな負担になります。例えば、30kgのお米を発送する場合、その送料は2,500円から3,000円程度になり、これは発送元の自治体にとって非常に重い負担となります。
ですのでお墓の掃除や体験型の返礼品など、送料がかからないものを選ぶと良いでしょう。
まとめ
ふるさと納税の基本的な思想は素晴らしいものですが、現状では無理が生じたり、不公平が発生したり、中抜きが問題となっている点については、疑問と懐疑を持たざるを得ません。寄付者として利用する場合や事業者として参加する場合には、特に注意が必要です。
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